札幌の丘珠空港と佐賀空港で、滑走路をそれぞれ1500mから1800m、2000mから2500mへ延長する機運が高まっています。両空港はそれぞれ国内の大空港の“隣”にあるものの、滑走路延伸には、両者で異なる狙いがあります。

丘珠は1800m、佐賀は2500mへ

 北海道・札幌の丘珠空港と、佐賀県の佐賀空港で、滑走路をそれぞれ1500mから1800m、2000mから2500mへ延長する機運が高まっています。両空港はそれぞれ国内の大空港である新千歳空港福岡空港の“隣”にありますが、滑走路の延伸には、両者で違った狙いがあります。

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佐賀空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 丘珠空港は新千歳空港から有料道路で約45分、佐賀空港は福岡空港から高速道路で1時間半といわれています。その一方、大空港の近くにあるにも関わらず、2021年時点における丘珠空港と佐賀空港の1日あたり着陸回数は21~8回です。新千歳と福岡の1日あたり148~121回に比べると、わずかな数値に留まります。

 なお、現在佐賀空港では、陸上自衛隊がV-22「オスプレイ」を配備する計画も持ち上がっており、こうなると、両空港は自衛隊と一緒に滑走路を使う共用空港となります。

 滑走路延伸への動きは、丘珠空港では2023年7月末、札幌市が延伸を正式に表明し、国へ要望していくこととなりました。一方、佐賀空港も2022年6月に佐賀県の山口祥義知事が国土交通相と面会して要望し、2023年7月28日の開港25周年を祝う式典でも、山口知事は延伸へ意欲を示しました。

 似たような境遇をもつ2空港ですが、滑走路延伸の狙いの差は明確です。

丘珠・佐賀の滑走路延伸、それぞれの理由とは?

 丘珠空港の滑走路延伸におけるメインの狙いは、現在は夏季のみの運航にとどまっているリージョナル・ジェット機を冬季にも道外から就航させ、通年での航空ネットワークを充実させること。同じように、道都札幌市にある空港として、医療支援のため遠方へ医師を派遣するといった、道民の生活充実も目指しています。

 一方、佐賀空港は延伸によって、アジアの航空会社にも滑走路の長さを気にせず就航してもらうことができる、という考えがあります。アジア地域との路線網を充実させて佐賀県の経済活性化を目指しつつ、混雑する福岡空港を補完し、“受け皿”となる狙いも視野に入れています。この補完は長期的に見ると、福岡空港から佐賀空港へ就航便をシフトさせる戦略も秘めていると伝えられてもいます。

「丘珠」「佐賀」の2空港が滑走路延伸へ…なぜ? ともに「大空港の隣の小空港」も異なる狙い
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丘珠空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 地方空港は1990年代から2000年代に全国で整備が相次ぎましたが、1998年に開港した佐賀空港も、このうちのひとつです。それから四半世紀、滑走路延伸の要望は、地方空港が機能をいっそう充実させようと、再び動き出そうとしていることを想像させます。

 丘珠空港については、延伸実現の目標を2030年と定めています。道内医療の貢献を考えれば、関係者の願いは理解でき、ほかの地方空港の整備へ参考になる可能性もあります。

 一方、延伸で便数が増えれば、騒音も増えるため、地域の理解が必要です。佐賀空港の方は、通常のヘリコプターと異なる特性を持つオスプレイが配備されるだけに、陸自と民間機の双方に支障のない発展が望まれます。