前方の景色がよく見えるよう「前面展望」を重視した鉄道車両があります。有名なのは小田急電鉄の「ロマンスカー」や名古屋鉄道の「パノラマスーパー」ですが、座席位置も重要なポイントに。
流れゆく車窓の景色は鉄道の大きな魅力です。特に進行方向の景色である前面展望は、座りながら見られることが少ないこともあり、人気があります。
運転席を2階に上げて、列車の先端まで展望席を設けた小田急電鉄の特急ロマンスカー「GSE」などは、きっぷの販売開始と同時に指定券が売り切れることも珍しくありません。ここでは、関東の大手私鉄有料列車に限定して、「前面展望が見られる座席」について紹介していきます。
小田急電鉄70000形ロマンスカー「GSE」(安藤昌季撮影)。
まずは、通勤ライナーに使われる車両です。
■京急電鉄2100形「モーニング・ウィング」「イブニング・ウィング」
日中は快特として無料座席で走りますが、早朝・深夜は座席指定列車「モーニング・ウィング」「イブニング・ウィング」として走ります。「モーニング・ウィング1号/5号」なら8号車16番(特にAB席)が、「3号」なら12号車16番が、それぞれ良好な展望です。しかし金沢文庫駅での乗車なら、運がよければ座れるという感じです。「イブニング・ウィング2~12号」は1号車1番が展望席となります。なお、座席指定はありませんが、泉岳寺発の快特で2100形は運用されますので、先頭車両の位置で並べば乗車可能です。
■京王電鉄5000系「京王ライナー」
京王八王子・高尾山口方面なら、1号車4番AB席から前面展望を楽しめます。新宿方面の場合、10号車12番CD席であれば運転席後ろの窓から少しだけ前が見えますが、座席上で正座するくらい座高を上げないと、前を見るのは難しいでしょう。
■西武鉄道40000系「S-TRAIN」「拝島ライナー」など
座席から前を見ることは難しいですが、フリースペースである「パートナーゾーン」の座席からは、座高が高くなる分、若干前が見えます。
では、有料特急に移ります。
■京成電鉄新AE形「新型スカイライナー」
客室から窓を通しての前面展望はできませんが、デッキ部分の扉上にモニターがあり、160km/h運転が行われている際などに映像が流されます。
■東武鉄道N100系「スペーシアX」
東武日光・鬼怒川温泉方面なら、6号車「コックピットラウンジ」1番・2番の席から、浅草方面なら1号車「コックピットスイート」から前面展望が楽しめます。
ただ、どちらも座席に座った状態ではほとんど前が見えませんので、立つ必要があります。どちらの設備もソファが備わり解放的な空間ですから、前面展望ではなく居心地に期待して購入する方がよいでしょう。

西武鉄道001系「ラビュー」(安藤昌季撮影)。
■西武鉄道001系「ラビュー」
下り列車では1号車1番CD席、あるいは8号車12番AB席なら、おおむね座って前が見られます。「あるいは」としたのは、飯能駅で進行方向が逆になるからです。
筆者(安藤昌季:乗りものライター)は、山間部区間で景色がよい8号車をオススメします。
なお「ラビュー」は側窓がとても広いので、どの席でも展望性は高いです。
小田急電鉄30000形ロマンスカー「EXEα」箱根湯本・藤沢方面なら、1号車1番CD席から少し前が見えますが、座席で正座るなど座高を上げなければ、よく見えるとはいいにくいです。新宿方面なら、10号車14番ABが展望席ですが、同じ理由であまり前は見えません。
■小田急電鉄60000形ロマンスカー「MSE」
箱根湯本・藤沢・御殿場方面なら、1号車1番C席「のみ」、北千住・新宿方面なら10号車14番B席「のみ」で前面展望を楽しめます。その隣席だと、前頭部扉横の黒い部分が窓ではなく壁なので、ほとんど前は見えません。
なお座席は限定されますが、「メトロはこね」など地下鉄線直通運用時は、地下鉄トンネル内の景色という、ほかでは見られない前面展望を座って楽しめます。

小田急電鉄60000形ロマンスカー「MSE」(安藤昌季撮影)。
■小田急電鉄70000形ロマンスカー「GSE」
筆者が最もオススメするのが「GSE」です。
新宿方面なら、7号車14番の列と12・13番のBC席は前がよく見えます。なお、最前列を予約できたとして最も景色がよいのは、通路側のBC席です。窓側のAD席は支柱が目の前に入るので、少し斜めに座らなければなりません。
ただ側窓が大きいので、どの席でも展望性があります。
前面展望ランキング、いかがでしたでしょうか。現代の車両はバリアフリー法の制限もあるためか、実は前が見やすい車両はそれほどありません。かつての小田急ロマンスカー「LSE/Hise」や、改装前の伊豆急「アルファリゾート21」(現役の「リゾート21」も)は視界がよく考えられていて、展望度はSランクともいうべき車両でした。今後も工夫を重ねて、魅力ある展望車両を実現してもらいたいものです。