交通事故の負傷者は減っているのに、死亡者だけが増えている――東京でそんな異変が起こっています。中でも、四輪車乗車中に亡くなるという重大事故が増加。

犠牲になる年齢層にも特徴があります。

四輪車乗車中の事故死者急増 増加数では全国トップ 新入学児童に注意

 東京の交通事故事情に異変が起きています。2023年比較で交通事故死者数の増加数が全国ワースト、中でも四輪車運転中の死亡が群を抜いて多くなっています。2024年4月7日には新入学児童を対象にした警視総監による横断歩行訓練が開催されましたが、例年、新入学児童の事故も多いです。

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東京ではドライバーが死亡する重大事故が増えている。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 新年度が始まった4月1日、東京都内では交通事故で3人が亡くなりました。その後も2日、3日と連続し、都内の事故死者数は39人(4月11日現在)です。前年同日比で10人の増加。この増加数は全国で最多です。総数でも全国ワーストクラスです。

 不可解なのは、この傾向が交通事故の増加に比例したものではないことです。

警視庁交通部総務課の交通安全担当管理官の川嶋泰雄氏は話します。

「負傷者数は前年比でマイナス。死者数だけが非常に多くなっている」

 事故にあった状態別に、死亡事故を分類すると、今年の都内における事故の異変が浮き彫りになります。その主な状態別を抜き出します。

●死亡事故39人の内訳(4月12日現在)
・歩行中20人(65歳以上の高齢者12人)
・四輪車乗車中7人

 日本では歩行中の死亡事故が常にいちばん大きな割合を占めるのですが、その中でも今年は高齢者の被害が前年比で8人増えています。今年は高齢者の事故が多いのです。

 四輪車乗車中の死亡は昨年1年間で5人でした。しかし、今年は4月の段階で7人。人口が多いのだから、という楽観はできません。

歩行中の事故は全年齢で“7歳”が最多 警視総監が小学校で横断歩行訓練

 こうした異変の都内で、4月7日には警視総監による横断歩行訓練が、文京区の根津小学校で行われました。1年生2クラス52人の新入学児童に警察関係者50人が参加して、7歳児の交通事故から守るシンボル的な活動です。

 訓練に先立ち、緒方禎己警視総監は子供たちに、こう呼びかけました。

「みなさんが交通事故にあわないために道路を渡る練習をしますが、その前にみなさんに守っていただきたい3つの約束があります」

・横断歩道の上を渡る
・信号をしっかり見る
・信号が青になっても、すぐに飛び出さない

 信号が青になった直後に通過しようとする車両もあるため、新入学児童には「青になってもすぐに飛び出さず、右と左をしっかりみて、クルマが来ないことを確かめてから大きく手を挙げて渡る」ということが教えられているのですが、実は年齢を問わず歩行中の事故は、横断歩道外や信号無視などでも起きています。

 また、緒方氏は保護者に対しても、こう呼びかけました。

「保護者にもお願いしたいことがあります。まずは、お子様といっしょに通学路を歩いて危険な箇所を子供目線で確認し、安全な登下校の方法について具体的に教えてほしいと思います」

 東京都内の2019~2023年の5年間に発生した人身事故の中で、歩行中の被害に限定して年齢別に細かく区切ると、子どもの事故が突出していると、警視庁は分析します。

●歩行中の人身事故総数…2万4541人
・7歳児446人
・8歳児434人
・6歳児326人
・9歳児299人

 上記は歩行中の事故に限定したデータですが、子どもの年齢が上がると自転車乗車中に遭遇するケースが多くなると言います。緒方氏は保護者にこう訴えます。

「保護者のみなさんが自らヘルメットを着用され、その姿を子どもたちが見て真似をすることで、ご家族全員の交通安全が確保されることを強く願っています」

「死者数だけが非常に多い」東京の交通事故“異常事態”なぜ? “ヤバイ事故”増加か
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歩行者事故は小学校1年生で迎える7歳が最も多い(中島みなみ撮影)。

 小学生の事故は、自宅から500m以内の場所で起こりやすい傾向があります。身近な場所の危険なポイントでの安全確認の重要性を子どもに伝える続けることが必要です。

 また、一方で車両の運転者はスクールゾーンでの制限速度や、登下校時に設定された時間帯通行規制を守ることが必要なのは言うまでもありません。