大阪~札幌間の豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の運転経路が突如、当日になって変更されました。はたして何があったのでしょうか。

実際にその運転経路が変更された「トワイライト」に乗車してきました。

湖西経由が湖東経由に

 大阪駅と札幌駅を結ぶ豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」。2014年10月27日(月)に運転された大阪発札幌行きの同列車で、その運行経路が当日に突如、変更されました。

 この列車は通常、以下のルートで運転されます。

大阪《東海道本線》山科《湖西線》近江塩津《北陸本線》直江津《信越本線》新津《羽越本線》秋田《奥羽本線》青森《津軽線》中小国《海峡線》木古内《江差線》五稜郭《函館本線》長万部《室蘭本線》沼ノ端《千歳線》白石《函館本線》札幌

 しかし10月27日の札幌行き「トワイライトエクスプレス」は、次のルートで運転されました。

大阪《東海道本線》米原《北陸本線》近江塩津(以後同一)

 つまり京都駅の隣にある山科駅から、琵琶湖の西岸を行く湖西線ではなく、米原駅を経由し琵琶湖の東岸を迂回する形で北陸へ向かったのです。

 突然行われた「トワイライト」のルート変更。湖西線で何か事故でもあったのだろうか、と思うかもしれませんが、実はそう珍しいことではなかったりします。

近畿に「木枯らし1号」が吹いたその日

 冬型の気圧配置になると、琵琶湖の北西側にそびえる比良山地から琵琶湖へ向け「比良おろし」と呼ばれる突風がしばしば発生。琵琶湖の北西側を走る湖西線は、この影響を受けて徐行運転や運転見合わせになることが珍しくありません。2013年には17回、強風のため運転見合わせになっています。

 そこで20kmほど遠回りになりますが、京阪神と北陸方面を結ぶ特急列車を、湖西線を避けて米原駅経由で運転することがあるのです。

その迂回ダイヤもあらかじめ考えられています。

 2014年10月27日の札幌行き「トワイライト」の経路変更も、風の影響でした。当日は西高東低、冬型の気圧配置。近畿地方では「木枯らし1号」が吹いています。そうした気象状況を考慮しJR西日本は「湖西線では本日強風が見込まれる」として、「トワイライト」を米原駅経由で運転したのです。同様に当日は、通常なら湖西線経由で近畿と北陸を結んでいる特急「サンダーバード」も米原駅経由で運転されています。

 このようにしばしば「比良おろし」の影響を受ける湖西線では近年、防風柵の設置といった対策が進行中です。現在は志賀~比良間でその整備が行われており、JR西日本によるとそれが完成した場合、同区間における運転見合わせ時間がおおむね3分の1以下になると見込んでいるそうです。

貨物列車に道を譲った豪華寝台特急

 迂回運転を行った10月27日の「トワイライト」は、次の時刻で走りました。

京都 12時31分発
河瀬 13時11分着/24分発
米原 13時36分着/39分発
近江塩津 14時05分通過
敦賀 14時19分着

 京都駅を、本来の湖西線経由のダイヤから6分遅れて発車。13分停車した東海道本線(琵琶湖線)の河瀬駅(滋賀県彦根市)では長浜行き新快速、名古屋貨物ターミナル行き貨物列車、和倉温泉行き特急「サンダーバード」19号に追い抜かれています。そして近江塩津駅で湖西線と合流して本来の経路に戻り、敦賀駅には33分遅れで到着しました。

 筆者はこの日の「トワイライト」に乗車しており、河瀬駅で列車の通過待ちをしていた際、レストランカーにいました。すると周囲から聞こえてきた「特急(トワイライト)が新快速に抜かれた!」「貨物にまで抜かれた!」と笑いながら話す女性たちの陽気な関西弁。約1500kmという日本一長い距離を22時間かけて走行し、1分1秒を急ぐ旅ではない豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」らしい風景かもしれません。

 さて実は、この10月27日の札幌行き「トワイライト」と風の関係は、これで終わりではなかったりします。日付が変わって午前0時過ぎの秋田県内、日本海のすぐ近くを走る羽越本線羽後亀田~道川間で強風のため徐行運転。終点の札幌駅に到着したのは、定刻より56分遅れの10時48分でした。

 また札幌駅に到着したのち、「トワイライト」のきっぷを持って同駅の改札口を通ったとき、JR北海道の駅員さんは言いました。

「列車が遅れまして大変申し訳ございませんでした」

 自然現象なので誰が悪いわけでもないですし、JR北海道管内に遅れの原因があったわけでもありませんが、北海道の旅が気持ちよく始まりました。

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