JR北海道の宗谷本線で、風速が運転中止の規制値に達していたにもかかわらず列車を運行してしまうというトラブルが発生。その直接の原因は「アリス」が喋れなかったことでした。
2014年11月3日、北海道の宗谷本線抜海(ばっかい)駅にある風速計が運転中止となる毎秒30m以上を記録しながら、列車を運行してしまうというトラブルがありました。
JR北海道では、区間にもよりますが基本的に毎秒30m以上の風速を記録した場合、運転中止になります。にもかかわらず、なぜ運転が中止されなかったのでしょうか。
1994(平成6)年2月にJR北海道の根室本線で、特急「おおぞら」が強風で脱線するという事故が発生。これを教訓にJR北海道は風速計や雨量計など各路線の観測情報を集約、ネットワーク化し、全道の気象状況を24時間体勢で監視する「総合防災情報システム アリス(ARISS)」を構築しました。「ARISS」とは「Advanced all-Round Information System for Safety」の略です。
各地に設置された風速計、雨量計が規制値を超えたとき、この「アリス」の警報が自動的に鳴動。列車の運行管理を行う指令員が運転規制などの対応をする仕組みです。今回のトラブルでも、この「アリス」が風速の規制値到達に反応しているのですが、それに指令員が対応できませんでした。
警報は発せられたものの、口が動かずなぜ指令員が対応できなかったのでしょうか。その直接の原因は「アリス」の口にありました。
風速が規制値に達したことで、「アリス」は運転中止の警報を出しました。
JR北海道によると、代替のスピーカーを設置したため現在は正常に警報が鳴るとのこと。またスピーカーに不具合が発生した理由については「現在調査中」といいます。
ちなみに、鉄道会社のこうしたシステムには「アリス」のような愛称が付けられていることも多く、JR東日本の新幹線運行管理システムは「コスモス(COSMOS)」、JR東海の在来線運行管理システムは「ノア(NOA)」、JR九州の在来線運行管理システムは「ジャクロス(JACROS)」という名前を持っています。由来は順に「COmputerized Safety Maintenance and Operation systems of Shinkansen」「New Operational Automation system」「Jr kyushu Advanced and Concentrated Railway Operating Systems」です。