「モーダルシフト」で荷物輸送をトラックから貨物列車へ切り替える例はしばしば見られますが、トラックから路面電車へ切り替えるという珍しい試みが京都で行われています。そしてこのたび、その試みが環境保全活動に功績があったとして国土交通大臣から表彰されました。
2014年12月18日、京福電鉄とヤマト運輸は「平成26年交通関係環境保全優良事業者等大臣表彰」を受賞しました。環境保全への取り組みを促進することを目的に国土交通大臣がそれに功績のあった事業者などを表彰する制度で、京福電鉄とヤマト運輸は路面電車で荷物を輸送する取り組みが評価されました。
京都市嵐山方面を走る路面電車の京福電鉄嵐山線「嵐電」では2011年5月から、ヤマト運輸と共同で貸切電車を使った荷物の輸送を行っています。
従来、ヤマト運輸は京都市の嵐山地域を担当する営業所まで、京都府久御山町にある物流ターミナルから大型トラックで荷物を輸送。そこから2tトラックなどに積み替えて、配達を行っていました。
この物流ターミナルと営業所間の輸送に、京都で唯一の路面電車である嵐電を活用。西院車庫から電車へヤマト運輸の集配用コンテナを台車ごと積み込み、到着駅からはリアカー付き電動自転車や電気自動車などで集配を行います。
ヤマト運輸によると、同社は鉄道輸送を以前から物流ターミナル間では行っていたものの、このように物流ターミナルと荷物を集配する営業所とのあいだで「モーダルシフト」を行うのは初めてとのこと。これによってヤマト運輸の、嵐電沿線における集配に伴うCO2排出量は30%削減できたそうです。また路面電車を使った荷物輸送によって、環境保全のほか渋滞緩和も図られます。
※「モーダルシフト」:貨物輸送をトラックから大量輸送機関である鉄道、海運に転換すること。
「京都議定書」の地元企業としてこうした取り組みの背景には、地球温暖化の防止を目的として1997年12月に採択された「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」、いわゆる「京都議定書」があります。
京福電鉄はこの「京都議定書」を採択した土地に本社を置く企業として、また環境負荷の低い鉄道の事業者として環境保全活動を推進。「歩くまち・京都」を掲げる環境モデル都市、京都でヤマト運輸と連携し、低炭素社会を目指すとしています。
このヤマト運輸による貸切路面電車は2014年12月現在、平日は朝夕の合計2便の運行。1日およそ400個の荷物集配に活用されています。また荷物は西院車庫で路面電車へ積み込まれ、嵐電天神川、蚕ノ社、帷子ノ辻、有栖川、嵐電嵯峨、そして終点の嵐山駅で降ろされます。
京福電鉄とヤマト運輸は、公共交通で多くの人々が集まる「歩くまち・京都」の実現に貢献するため、連携をより一層強化。環境保全に取り組むほか、嵐山駅に観光案内所機能を備えるヤマト運輸営業所を開設し手荷物の一時預かりを実施するなど、観光客の利便性向上にも取り組んでいくとしています。