年の瀬が近づき、メディアから風物詩のように聞こえだした「乗車率」という単語。この「乗車率」が100%の状態について、一般的な通勤列車と新幹線では見た目が大きく違っていたりします。

またそもそもなぜ鉄道は、当たり前のように定員オーバーで走っているのでしょうか。鉄道の「定員」に迫ってみました。

立ち客がいる乗車率100%と立ち客がいない100%

 2014年も残りわずかとなった12月28日(日)、帰省客らで東海道新幹線などでは乗車率100%を超える列車も見られました。

 この「乗車率」(「混雑率」も同義)という言葉、こうした帰省ラッシュ時等における新幹線などの混雑を示す指標として、また日常の通勤通学時間帯における列車の混雑を表す指標として使われることが多く見られますが、実は同じ「乗車率100%」でも、その見た目は大きく違っていることがあります。

 国土交通省によると、「混雑率(乗車率)」の目安は以下のようになっています。

「100%」定員乗車(座席につくか、吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる)。
「150%」広げて楽に新聞を読める。
「180%」折り畳むなど無理をすれば新聞を読める。
「200%」体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度ならなんとか読める。
「250%」電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない。

 しかしこれらは一般的な通勤・通学列車についての目安で、「吊革につかまる」とあるように、乗車率100%の時点で立ち客が出ています。これに対し新幹線やJR特急の場合、乗車率100%では立ち客が存在しません。

なぜこうした違いがでるのでしょうか。

鉄道が定員オーバーでも安全な理由

「乗車率100%」の状況が新幹線と通勤・通学列車で違う理由、それは「定員」の定義が異なるためです。新幹線やJR特急など着席乗車を前提にした車両の場合、「その車両の座席数」=「その車両の定員」です。よって乗車率100%は、座席がすべて埋まった状態を意味します。

 これに対し通勤・通学向けの車両は座席数と合わせて、つり革などを使う立ち客の数も定員に含まれているため、乗車率100%では立ち客が存在することになるのです。

 さて鉄道は帰省ラッシュ時のみならず、毎日の通勤通学時に、当たり前のように定員オーバーで運行されています。この点について問題はないのか、気になった人がいるかもしれません。船や航空機では定員厳守ですし、自家用車も「定員外乗車違反」は1点減点、6000円の罰金です(普通車の場合)。

 結論から言えば、基本的に問題ありません。日本民営鉄道協会によると、鉄道の定員は通常運行に支障がない定員数を示した「サービス定員」であり、それ以上乗っては危険だという「保安定員」ではないからです。これに対し船や飛行機の「定員」は「保安定員」であるため、厳密に守られていることになります。

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