首都圏では新路線の開通や対策で、深刻な渋滞ポイントが消滅しつつありますが、東名高速の大和トンネルについては今後も「渋滞の名所」であり続けそうです。はたしてどうしたら良いのでしょうか。
1年以内に圏央道が東名から東関東道まで開通し、3年後には外環道千葉区間が、10年以内には首都高横浜環状北西線や外環道東京区間も完成。日本の高速道路からは、深刻な渋滞ポイントがほとんど消滅していきます。
しかし、それでも渋滞が残ると予想されるのが、中央道の小仏トンネル付近と、東名高速の大和トンネル付近です。
小仏トンネルについては、上り線のみとはいえ、対策がようやく明確になりましたが、大和トンネルはどうなっているのでしょう。
国交省が主導する「首都圏渋滞ボトルネック対策協議会」では、大和トンネルの渋滞対策についても検討を進める予定になっていますが、その進捗状況については「回答できない」とのこと。国交省関東地方整備局のウェブサイトを見る限り、具体的な対策案はまだ挙がっていません。
がしかし、私(清水草一)が考えるに、取るべき対策ははっきりしています。中央道でも採用が決まった、路肩を転用した付加車線の設置です。
渋滞緩和を妨げている東名の「蓋」現在、東名高速上り線には、海老名JCTから綾瀬バス停付近まで付加車線が建設済みで、それなりの渋滞緩和効果がありましたが、そこから先、大和トンネルの少し先まで約4キロ付加車線を延ばせば、いわゆる「大和トンネル上り渋滞」はほぼ解消するはずです。
下り線も、大和バス停や綾瀬バス停付近を先頭に渋滞が発生しますが、こちらも横浜町田インターから綾瀬バス停まで約9キロ付加車線を設ければ、渋滞が大幅に緩和されることは間違いないでしょう。
しかし、路肩を車線に転用するにあたっては、大和トンネルの存在が障害になります。
大和トンネルは、実は「トンネル」ではありません。厚木基地の滑走路北側飛行経路直下にあり、航空機が高速道路に墜落して惨事が起きるのを防ぐために設けられた蓋、掩体壕のようなものです。
この大和トンネル内は路肩が狭いので、ほかの場所のように1車線分のスペースをひねり出すことが困難なのです。
大和トンネルは「単なる蓋」。ならばそれを撤去してスペースを作り、渋滞緩和につなげることはできないのでしょうか。
ところで大和トンネルの上は、どうなっているのでしょう。ラジオの交通情報などで「大和トンネルを先頭に渋滞○○キロ」というセリフは飽きるほど聞きましたが、私はまだ、大和トンネルの上をこの目で見たことがなかったので、行ってみることにしました。
外から見た「東名の蓋」大和トンネルの上は、東名高速から眺めると、ジャングルのようになっています。この付近では、厚木基地の米軍機が何度か事故を起こしています。
なかでも1964(昭和39)年9月8日に起きた事故は、現在の大和トンネルのすぐ北側200メートルほどの地点にF-8Cクルセーダーが墜落。
慰霊碑から南へ進んで行くと、こんもりした堤防のようなものが見えてきます。延長280メートル、高さは3~4メートル。フェンスに囲まれており、内側は木が繁茂しています。これが大和トンネルで、東名高速に鉄筋コンクリート製の蓋をかぶせ、その上に土を盛った構造になっています。
大和トンネル上には、3本の横断道(うち1本は歩道)が付いていますが、坂を上って横断してみると、管理者であるNEXCO中日本による、「不法投棄禁止」の看板が目立ちます。何にも使用されていないので、ゴミを捨てられやすいようです。
この大和トンネルを撤去するか、あるいは必要とあらば幅を4メートルほど広げた上で再建するかしないと、付加車線の設置は困難です。
厚木基地では、1977(昭和52)年の横浜市緑区へのRF4ファントム偵察機墜落以来、悲惨な墜落事故は起きていませんが、飛行場がある限り事故のリスクはあり、「蓋」は「もういらない」と断言することはできません。
ただ、墜落のリスクは周辺一帯にあるので、東名だけをトンネルで守ってどれほど意味があるのかは微妙です。