盲腸のようになっている、首都高10号晴海線。実はC1都心環状線へ接続し、「脱盲腸」の計画があります。
去る2015年4月22日、首都高10号晴海線の晴海運河を渡る橋げた工事が公開され、話題になりました。現在工事が進んでいるのは、豊洲ランプから晴海ランプまで1.2kmの区間で、2017年度の開通が予定されています。
ただ、豊洲ランプ~晴海ランプ間の一般街路(晴海通り)には、途中、晴海大橋南詰信号があるのみ。首都高晴海線が1.2km延伸されてどれくらい便利になるかというと、「信号を1個飛ばせるだけ」です。
たいして利便性がアップしないということは、利用台数の増加もあまり望めないわけで、首都高の料金収入も増えません。建設予算は98億5600万円ですが、すでに株式会社化されている首都高にすれば、これは回収のあてのない投資です。実際首都高は、高速道路保有機構との協定では、この区間を2013年3月末までに完成させる予定でしたから、5年遅れで渋々造ったともいえます。
首都高はこのほか、川崎線の延伸部(大師JCT~富士見)の建設も事実上棚上げしていますが、ここも料金収入増がほとんど見込めない盲腸線。経営的には造らないほうが明らかにプラスです。大した渋滞緩和効果も期待できないので、公共性も低いといえます。
それでも晴海線の延伸部を建設中なのは、2020年の東京オリンピック開催という重要イベントがあるからです。
が、この晴海線には、C1都心環状線までの延伸計画があり、都市計画決定もされています。
計画によれば、晴海ランプの先で首都高は地下へ潜って、勝鬨橋の手前で晴海通りからやや南西側へずれて隅田川をくぐり、築地市場のすぐ横で上り線と下り線が分かれ、下り方向は現在盲腸のように突き出でいる新富町ランプを利用する予定になっています。
この計画が決定されたのは1993(平成5)年。しかし新富町ランプから先、晴海通りまでの約700メートルの区間(旧築地川の川床)には、はるか以前から蓋をかぶせられたトンネル構造(カルバート)があります。
トンネルの上は築地川公園で、川床のままの部分はガランとした運動場。バスケットボールのゴールやドッグランが設置されています。入口に金網が張られ未使用のままのトンネルは、まるで都会のミステリーゾーンです。
ただこのトンネル構造は、見るからに建設年代が古く、1993年の都市計画決定の時期と合いません。
15年ほど前、この件に関して首都高速道路公団(当時)に尋ねたところ、この部分は「以前東京都が建設したものと聞いています」という回答で、首都高側は関わっていないとのことでした。
これについて今回、東京都中央区から解答を得ることができました。
一般道が首都高に「月島方面から中央区役所に向かう道路の支線として、現在の明石1丁目付近から築地の市場の方までつなげる道路を計画しておりました。
驚いたことに、このトンネル構造はもともと一般道として計画され、一部建設した部分を、首都高に転用する構想なのです。
1993年に決定された晴海線の都心環状線までの延伸計画は、都市計画としてはいまも生きていますが、事業化されないまま22年間放置されています。
また、ここから「都心新宿線」、さらには「多摩新宿線」と続いて圏央道まで延伸する構想もありましたが、実現の見通しはありません。
現状、C2中央環状線の全線開通で首都高の渋滞は大幅に減少しています。もはや晴海線を都心環状線に接続する意義すら、それほど大きくありません。
ただ、旧築地川沿いには、出入口のようなスロープを始め、計画の跡が今も随所に残っています。これら都会の“トマソン物件”、兵どもが夢の跡を探訪するのも悪くありません。