地方の高速道路では「暫定2車線」がよく見られます。しかし東九州道には「確定2車線」で建設された区間があり、「暫定」より大きな効果を発揮していました。

セカンドベストな東九州道

 2015年3月21日、東九州道の佐伯~蒲江間(20.4km)が開通し、大分市と宮崎市が高速道路で直結されました。

 表日本・裏日本問題は九州でも深刻で、北九州市から鹿児島市へのルートは、圧倒的に西側(熊本経由)が優勢。大分・宮崎県は常に裏九州ルートに甘んじてきただけに、この開通は両県にとっての悲願でもありました。

 私(清水草一)としても、特別な感慨がありました。15年前、拙著『この高速はいらない』の取材のため現地を訪れ、北九州~宮崎間を何度か実走。一般道の状況を確認していたからです。

 当時、私が出した結論は「佐伯~北川間59kmは、国道10号線の改修で十分」というものでした。この間に信号はたった4つしかなく、流れは非常にスムーズ。そこへ制限速度70km/hの片側1車線高速を造っても、バカ高い料金を払ってまで利用する人は滅多におらず、建設費の無駄。そういうことでした。

 あれから15年。問題の佐伯~北川間は、10年前の道路公団民営化の際、「採算性が極めて低い」という理由で全額税金で造る料金無料の“新直轄区間”に衣替えされ、今年ついにそれが全線開通しました。

 かつての私の結論とは違う形になりましたが、料金無料なら利用台数は断然増えますから、セカンドベストではあります。「高速道路で直結された」という事実は、観光の促進に関して気分的な意味が大きいのも事実です。

 今回、その東九州道を、全線走ることができました。

確定2車線が暫定2車線より効果的なワケ

 大分市から東九州道を南下すると、大分宮河内ICから暫定2車線(片側1車線)となり、制限速度は70km/hです。ところが佐伯ICから新直轄区間に入ると、片側1車線は変わりませんが、制限速度が80km/hに上がりました。

 実はこの区間は暫定2車線ではなく、当初から「2車線」確定で設計・建設されたのです。

「暫定2車線」というのは、「将来交通量が増えたら4車線に拡幅する」という意味ですが、実際にはこういった過疎路線は、並行する一般道に渋滞が皆無なため時間短縮効果は微々たるもの。料金ばかりバカ高くて利用は増えず、永遠に暫定2車線のままだろうと予想される路線が多数を占めています。この区間が2車線確定で建設されたのは、極めて合理的な判断でした。

 2車線確定のため、上下線のあいだには暫定2車線区間のような簡素なポールなどではなく、しっかりしたコンクリートウォールが設置されていて、反対車線への飛び出しによる正面衝突事故が起こりづらくなっています。おかげでほかの片側1車線区間より10km/h高い制限速度が実現できたうえ、安全面でも大きなアドバンテージです。

 国交省は、ほかの暫定2車線区間についても抜本的な見直しを行い、新たに2車線確定区間を決め、同様のコンクリートウォールを設置すべきです。

これによって反対車線への飛び出し事故を大幅に減らせますし、制限速度を引き上げて利用価値を高めることもできます。

 ただこの佐伯~北川間59kmには、追い越し区間も皆無でした。つまり、前に遅いクルマが1台いると、どうにもなりません。私の走行時にも、明らかに高速道路に慣れていない乗用車が異常にゆっくり走っていて、時間を大幅にロスし、一般国道より速いのかどうかすら微妙になりました。せめて2~3か所は追い越し区間を設置してもらいたいところです。

150kmPAなしが“合理的”な東九州道

 もうひとつ、東九州道で驚くべきは、PAの少なさでした。新直轄区間にはもちろん皆無で、前後の東九州道や延岡道路にも極めて少なく、結果、なんと150km(大分松岡PA~川南PA間)ものPA空白区間ができてしまったのです。

 新直轄区間は料金無料のため、ひと休みしたい場合はインターを降りて道の駅などに立ち寄ってもらえばいいという、これまた驚くほど合理的な手法が採られているのですが、降りてまで休憩するという文化は日本人にはなく、結局私は別府湾SAから川南PAまで、180kmをノンストップで走ることになりました。

 地方の高速道路では長区間ガソリンスタンドがないことが話題になりますが、東九州道の場合、ガソリンスタンドどころかPA自体が150kmないのです。ガソリンスタンドについては、別府湾SAから宮崎道の霧島SAまで280km空白なので、真剣に注意が必要です。

 鉄道と違って高速道路は、極めて画一的なのが普通ですが、東九州道はある意味非常にユニークな、停車駅も駅弁?もない「超ローカル特急」なのでした。

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