近年のクルマにはしばしば、小さな突起がついています。デザイン上のものかなと思うかもしれませんが、実はこの小さな突起、燃費向上などに効果を発揮しています。

変化している「空力」の目的

「空力」というと、風洞実験を繰り返して煮詰められたダウンフォース、といったイメージがあるかもしれません。実際にF1はエンジン、シャーシに加えて、ボディの空力が勝敗に大きく影響するとされています。市販車でも以前は、カタログに空力のCd値(空気抵抗係数)が載っていたりしました。

 もちろん現代のクルマも空力を重視していますが、以前のような走行安定性や最高速度のためではなく、燃費を良くすることに目的がスライドしてきています。実際にクルマというのは100km/hを超えると、走行抵抗のうち空気抵抗が一番大きくなるとされ、スピードを上げるに従って、“空気の壁”を突き破りながら走っている、と言っても大げさではありません。

 燃費に注目が集まっている現在、空気抵抗をいかに低減させるかは大きな課題です。そこで我々が思いつくのがボディを流線型にすることで、新幹線の先端形状はいい例でしょう。

 ただし、クルマであのような長いボディ形状にすることは、実用性からすると不可能です。そこで、フロア下に板状のパーツを付けて平らにしたり、リヤに羽根状のいわゆるエアロを装着したりしています。

 ここでのポイントは、レース車両のようにダウンフォースが発生し、空気の力でタイヤが路面へ押しつけられる状態になってしまうと、燃費には悪影響になること。車体が上に持ち上がったり、下へ押しつけられたりしない、いわゆる「ゼロリフト」が最近の理想とされています。

意味が無さそうで意味があるクルマの突起

 こうした空力への配慮は以前から行われていましたが、2011年にトヨタが「アクア」で採用した「エアロスタビライジングフィン」は画期的な存在でした。

 見た目はただの突起で、デザインとして入っているとしか思えないものでしたが、実は空気を整流しつつ、わずかに渦を発生させる機能があります。「整流」はもちろん燃費に効果があり、「渦」には車両のブレを抑えて走行時の安定化を促進するという効果があります。トヨタによれば、F1のテクノロジーを流用したとのことですが、実際はシミュレーション技術の向上が大きいようです。

 実際に2000年代へ入ると、開発用の解析ソフトが数十万円という低価格で発売され、各自動車メーカーがそれを購入。「飛躍的に解析が進むようになった」と複数の開発者から聞きました。正確には「解析の評価能力が高まった」と言うべきでしょうか。それまでは解析できても、その結果を評価するのに多大なノウハウが必要でした。それが一気にデジタル化され、小さな突起が大きな効果を生むことが分かるようになったのです。

 トヨタは「アクア」を皮切りに、「エアロスタビライジングフィン」を様々な車種へ装着。いまではレクサスにも広げられています。また他社でも日産「ノート」のテールランプや、軽ではダイハツ「ウェイク」にも採用は拡大しており、この先、増えていくのは間違いないでしょう。「こんなものが効くのか!」と不思議に思うような細かいエアロパーツが今後、登場する可能性も大いにあります。

編集部おすすめ