日頃は立ち入りできない飛行機の整備工場を、小学生の子ども連れで見学。知る機会が少ない飛行機に関するお仕事が、たくさんそこにありました。
「飛行機の整備工場ってどんなところ?」
「あんなに大きな乗りものをどうやって整備するの?」
大人も子どもも興味津々、でも日頃なかなか立ち入ることのできない飛行機の整備工場をのぞいてみよう……ということで、小学生の息子を2人連れて、JAL(日本航空)が一般向けに無料で実施している工場見学プログラム「SKY MUSEUM(スカイミュージアム)」へ参加してきました。
羽田空港のすぐそば、東京モノレールの新整備場駅から徒歩2分の場所にそびえ立つ「JALメインテナンスセンター」。工場見学プログラム「SKY MUSEUM」は、この建物内にある“展示エリア”と“格納庫”の見学、そして“航空教室”の3要素からなり、所要時間は約100分。パイロットや整備士さん、客室乗務員さんのOB・OGたちが、経験を活かして案内をしてくれます。
ちなみに「SKY MUSEUM」は無料で参加可能(安全確保の観点から小学生以上のみ)。基本的に1日4回の実施で、インターネットから予約が可能です。
まるでゲームのよう?まず最初は“展示エリア”を訪問。そこでは、飛行機に関わる5つの職種「運航乗務員(パイロット)」「客室乗務員」「整備士」「空港スタッフ」「グランドハンドリング&貨物スタッフ」のお仕事内容が、それぞれブースに分かれて細かく紹介されていました。
例えば、着陸して駐機場に入る飛行機を誘導するのは、グランドハンドリングスタッフのうち、マーシャラーのお仕事。このお仕事をモニターに向かって疑似体験できるコーナーは子どもたちにも大人気です。うまく誘導できるとモニター上に「VERY GOOD!」の文字が出るので、ゲーム感覚で楽しそう。
ちなみに、飛行機は停止場所より前に行き過ぎてしまうと、自力ではバックできないとのこと。
また、パイロットのお仕事紹介ブースでは、DC-9のコクピットに座ることができます。DC-9は、かつて日本エアシステムが運航していた小型ジェット旅客機で、主に国内地方路線で活躍をしていました。
ここで興味深かったのは、タイヤを操作するレバーの先端はタイヤの形に、フラップと呼ばれる動翼を操作するレバーは翼の形になっている、ということ。操作を誤ることのないようにという理由からで、人間工学に基づいた設計なのだそう。
制服体験エリアでは、息子たち2人がパイロットの制服を着用。袖口には4本のラインが光っています。パイロット訓練生にはラインがなく、3本ラインになるまでに4年から5年、そこから4本ラインになるにはさらに15年ほどかかるのだとか。ベテランパイロットの方は、気が遠くなるような時間をかけて経験を積んでいるのですね。
思わず見回してしまう? 大迫力の格納庫展示エリアをひとまわりして、“航空教室”で飛行機が飛ぶ仕組みや羽田空港の概要などを学ぶと、いよいよ格納庫の見学へ。元整備士の石森裕規さんが案内を担当してくださいました。
「ひらけ、ゴマ!」のかけ声で格納庫の扉がゆっくり開くと、子どもたちから「わあ、広い!」という歓声が。
ここで行われる整備は2種類。まずは、約1年ごとに行われ、7日から10日をかけて機体構造の点検を含む整備を行う「C整備」。そして、4年から5年に1回行われる大規模な整備「M整備」です。
この日は、ボーイング777と767が整備中でした。ピカピカと光る大きな機体は、可動式の足場にがっちりと囲われています。整備場ならではの圧巻の光景に、思わず見とれてしまいました。
工具に付けられた“あるもの”の意味次は、メインテナンスセンター2、「M2」と通称される整備工場へ。ここで非常に興味深かったのは、整備に必要な工具類を管理する工具室でした。
飛行機整備のなかで、絶対に起きてはならないことのひとつが工具の紛失。もし工具をエンジンの内部に置き忘れてしまっていたら……、もし工具が操縦かんなどに挟まって操縦不能になってしまったら……。
なので、工具は徹底的に管理。ひとつひとつにバーコードが付いていて、使用の前後で数や種類がそろっているかチェックします。工具がひとつでも見当たらなければ、お客さんを乗せる予定の飛行機でも格納庫から出さずに見つかるまで探す、という徹底ぶりなのだそう。
ここで働く方々は、ひとりひとりが「安全」を追求する職人さんなのだと痛感しました。
緊迫感の漂う工具室をあとにしたところで、トーイングカーが飛行機を引っぱってきました。このトーイングカーは、クワガタ虫のように飛行機のタイヤを挟み込んで飛行機を引っぱってくるのだとか。「あんなに小さいクルマなのに、あんなに大きな飛行機を引っぱれるなんて!」と子どもたちはこのトーイングカーが気に入った様子。
最後は、格納庫の目の前にある滑走路をみんなで眺め、色とりどりの飛行機の離着陸を見守りました。「そろそろウチのが来るか?」「次がウチのか?」と、我が子を探すように“赤い鶴丸”を探すJAL職員の方々。そこには自分たちの飛行機への愛情があふれていて、私はちょっと胸が熱くなってしまいました。
見学が終わって心に残ったのは、黙々と働く方々の顔が飛行機と同じくらいカッコよかったこと。
知っているつもりで知らなかったことをたくさん発見できた、貴重な整備工場見学でした。