東京と埼玉を結ぶ大幹線のひとつ、国道254号「川越街道」は多くの道路と立体交差していますが、中には、今の常識からすると“ありえない”構造のものも存在。知らずに通ると危険なケースもあります。

天下の大幹線「川越街道」こと国道254号

 国道254号は、東京から長野県松本市まで、旧来の川越街道、児玉街道、富岡街道、信州街道に沿って結ぶ歴史ある道路で、現在も東京都内~北関東~東信および中信地域を連絡する重要な役割を果たしています。

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英インター南側にあるアンダーパス。国道254号の低い高架に対し、天地方向のスペースを稼ぐため、路盤を掘り下げている(植村祐介撮影)

 東京から川越に至る「川越街道」区間では、交通量の多さから渋滞が頻発しており、その対策のため現在でも「和光富士見バイパス」「和光バイパス」などの整備が進められています。これらは十分な車線幅、独立した歩道、必要に応じた立体交差など、現代に求められる道路の規格にのっとり供用される予定です。

 しかしこの区間で過去に行われた道路整備では、現在では“ありえない”形状の立体交差が、そのまま残されています。ここではそのいくつかをピックアップし、ご紹介しましょう。

「英インター」南側の“エグい立体交差”

 英(はなぶさ)インター交差点(埼玉県新座市)は、国道254号と国道463号が、2つのループ状ランプを有するハーフクローバー型のインターチェンジで接続し、この地域の交通の要衝となっています。1970年代の建設当時としては革新的な設計だったと思われますが、じつはこの英インターのすぐ南には、建設当時としてもちょっと“規格外”に近いと思われる立体交差が存在するのです。

 その立体交差は、国道254号上り線を東京方面に進み、柳瀬川を英橋で渡り、埼玉県道109号(旧川越街道)を分岐した先、埼玉県道109号から西に分岐した道が国道254号をくぐる部分にあります。

 立体交差部分の天井はアーチ状で、路盤が掘り下げられて高さを稼いでいるものの、高さ制限は2.0mをなんとか確保しているレベルです。

 また入口の形状から幅員はそこそこありそうに見えますが、最大幅は1.8mと、最近の3ナンバー車ではギリギリとなっています。その理由は、立体交差内に設置された、車道と歩道を区切るガードパイプによるものです。

そしてそのガードパイプには、“見た目”の道路幅をそのまま信じて入ってきたクルマによるものか、衝突のキズが多数残っています。

 この立体交差は、旧川越街道(埼玉県道109号)とは別に現在の国道254号をつくるときに生まれたと考えられます。古い航空写真を見ると、国道が存在する以前からある道で、立体交差は分断を防ぐ機能補償の一環でしょう。現在であれば立体交差の位置をずらすなどで、ここまで窮屈な設計にはしないでしょうから、時代の流れが感じられるところです。

右折待ち「2回連続」で後続車ブロック! 榎木ガード交差点

 国道254号は朝霞市内で黒目川の作った谷筋を擁壁でまたいで東西に走り、その谷筋を走る埼玉県道36号と立体交差します。その交差点が「榎ガード」で、国道254号が上、埼玉県道36号が下を通ります。

ちょっと、エグい立体交差…「川越街道の“罠”構造」 天下の大幹線の下に潜む「まさか!」
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国道254号川越街道の新座市内(画像:PIXTA)

 上の国道と下の県道は、擁壁の左右に沿う側道(スロープ状のランプ)で行き来します。ただここは、国道の川越側が急峻な坂になっているためか用地の関係か、側道が東京側にしか設けられていません。

 この交差点の特異ポイントは、国道254号下の開口部が狭いこと、そして国道254号の側道が一方通行ではなく対面交通だということです。

 開口部は対向2車線の幅しかなく、右折レーンを設ける余裕がないことから、交通量の増える7~9時、17時~19時は、埼玉県道36号北行からの右折は禁止となります。それ以外の時間帯は右折可ですが、注意しなければならないのが、国道254号の側道が対面交通のため、右折ポイントがガードの南北の設けられた2か所の信号、それぞれにあることです。

 先行車が右のウインカーを出したとき、つい一般的な立体交差のつもりで「ガードをくぐってから右折するだろう」などと思っていると、あわや追突という事態につながりかねません。

もちろん2か所の右折を待つクルマで、県道はしばしば詰まります。

 なおこの交差点は、埼玉県道36号に沿って整備が計画されている都市計画道路「保谷朝霞線」の開通時には大幅に改良され、国道254号上下線双方に設けた立体交差構造となる予定です。

曲がった先は「国道」じゃない 小仙波(中)交差点

 国道254号は、1981年にバイパスとなる「富士見川越有料道路」が供用され、新座市から川越市の区間の混雑緩和が図られました。2009年に無料開放され、現在は「富士見川越バイパス」として、引き続き国道254号現道とともに、地域および通過交通の大動脈として機能しています。

 さて、この富士見川越バイパスは、国道16号(国道254号現道との重複区間)と、川越市の「小仙波(中)」交差点で立体交差しますが、じつはこの交差点では国道16号外回りから富士見川越バイパス上りへ右折しようとして、とまどうドライバーが少なくありません。

 国道16号を入間方面から走ってくると、正面に国道16号をまたぐ富士見川越バイパスの高架が見え、交差点手前には右折レーンが設けられています。一般的な交差点であれば、この右折レーンを曲がった先は富士見川越バイパスの側道となり、そのまま本線に合流するはずです。

 しかしこの交差点では、右折レーンの進む先が富士見川越バイパスの上りではなく、北で並行する埼玉県道113号なのです。

 交差点手前の青看板には埼玉県道113号の表示がありますが、それ以上に目立つ「富士見」という地名から、地元のドライバー以外は「富士見川越バイパスに入る」と勘違いしても無理はないところです。

 なお国道16号外回りから富士見川越バイパス上りに進む“正解”は、ひとつ手前の「川越警察署前」交差点での右折ですが、こちらには青看板などでの案内は皆無です。

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 ここまで紹介した3つの立体交差箇所とも、地図上ではその構造が分かりづらく、実際に遭遇して「まさか!」となることも考えられます。通行の際はご注意ください。

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