名だたる日本のバイクメーカーの中でも、スズキは自社製バイクに数々の「和名」をつけてきたことで知られています。いずれも個性的なモデル名ばかりですが、なかでも特徴的なものを8つピックアップしてみました。

スズキが誇る和名バイクの数々

 バイクメーカー4社の中で最も「和名モデル」が存在するスズキ。1954(昭和29)年に登場した自社初の二輪モデルが和名だった影響からか、以降もたびたび、日本語名のモデルをリリースしてきました。ここでは、それらのうち特に象徴的なモデルを8つ紹介します。

刀に隼、蘭に薔薇!? スズキの「和名バイク」8選 やっぱり独...の画像はこちら >>

スズキは昔から「和名のバイク」が多いことで知られている(画像:スズキ)。

●コレダCO(1954年)…記念すべきスズキのバイク第一号
 スズキの二輪完成車として、1954(昭和29)年に発売されたのがコレダCOです。90ccのモデルで、「コレダ!」をモジったと思われるネーミングが昭和的でなんともかわいらしいですが、点火時期が自動的に変えられる自動進角装置付フライホイールマグネット搭載、日本初のスピードメーター装備、トランスミッションは二輪初の前進3段ロータリーチェンジを採用など、当時としては真新しい機能も満載のバイクでした。

「コレダ」の名を冠したバイクは1960年代前半まで、様々な排気量でリリースされましたが、スズキの二輪の黎明期の慣習が、後のスズキのバイクに「和名モデル」が多く存在する理由の一つかもしれません。

●GSX1100S KATANA(1981年)…独創的なスタイルと和名で世界中に衝撃を与えたマシン
 スズキのバイクの「和名モデル」の代表として、「まさにコレダ!」と言えるのは1981(昭和56)年に発売されたGSX1100S KATANAでしょう。GSX100Eをベースに開発された輸出向けモデルで、市販化される前年の1980(昭和55)年、ドイツで開催されたケルンモーターショーでの発表では、その独創的なスタイルと和名によって世界中のバイク関係者からの脚光を浴び、「ケルンの衝撃」と呼ばれる事態に至ったそうです。

 その全体のデザインはまさに「刀」をイメージしたもの。独創的なデザインと和名は実にコンセプチュアルで、結果的に機能性以上にその認知が広まることにもなりました。結果、2000(平成12)年まで生産されるロングセラーシリーズとなり、様々な排気量のモデルをリリースしました。

●蘭(1983年)…女性や初心者ユーザーを意識したバイク入門スクーター
 1980年代前半の空前のスクーターブームの中で登場したのが、1983(昭和58)年にリリースされた蘭です。各社から毎週のようにリリースされた有象無象の新モデルの中で、蘭が抜きん出たインパクトを残した理由はこの和名にあったように思います。

 女性や初心者ユーザーを意識した仕様で、大型で低いシート、左側ブレーキのレバーを握らないとエンジンが始動できない独自開発の「あんしんスタート機構」などを搭載していました。

●薔薇(1983年)…蘭よりほんの少しパワーアップさせたお姉さん的スクーター
 蘭と同年に登場した薔薇は、蘭のお姉さん的スクーター。エンジンの最高出力を蘭より0.2PSほど高い3.8PSとし、よりスムーズな加速感を実現しました。蘭同様、スズキ独自のメンテフリー、安全機構を搭載させることで、こちらもまた女性ユーザーに支持された1台です。

 蘭よりもどことなくボディがシャープに映る薔薇ですが、その和名の響きもあってか、筆者の周辺の当時のヤンキー姉さんたちはこちらを好んで乗っていた記憶があります。

究極のスポーツバイクといえば…

●Hayabusa(GSX1300R)(1999年)…鎧兜をモチーフとした究極のスポーツバイク
KATANAシリーズと入れ替わるかのように、1999(平成11)年に輸出車として登場したのがHayabusa(GSX1300R)です。鎧兜をモチーフにしたデザインで、高い空力特性とライダーへの防風効果を徹底的に追求しました。

刀に隼、蘭に薔薇!? スズキの「和名バイク」8選 やっぱり独特すぎる!
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鎧兜をモチーフにデザインされたHayabusa(GSX1300R)、1999年。KATANAシリーズと入れ替わる格好で登場。(画像:スズキ)

 ヘッド位置を低くし、空力特性に優れたフレームを採用したコンパクトボディに、サイドカムチェーン式の直列4気筒1300ccDOHCエンジンを搭載。

優れた放熱性と耐摩耗性を持つSCEMシリンダー、2ステージインジェクション、SRADラムエアーシステムなどの最新技術を投入し「究極のスポーツバイク」を目指したと言われています。

 2008(平成20)年にフルモデルチェンジし、2014(平成26)年には国内モデルであえる隼(ハヤブサ)もリリース。ここで完全なる和名となり、人々の記憶にインパクト与えました。

●イナズマ1200(1998年)…稲妻のようなインパクトある乗り味を実現
 見た目的には普通の4気筒バイクですが、400ccモデルとほぼ同等のサイズ感でありながら1200ccエンジンを搭載したのが、1998(平成10)年に登場したイナズマ1200です。

 100PSの最大出力にして4500rpmという低回転で10.0kg-mの最大トルクを出す、スズキ独自のDOHCエンジンを搭載。まさに稲妻のような乗り味を感じられるビッグネイキッドで、この和名に相応しい1台でした。

●チョイノリ(2003年)…カジュアルな和名で登場した破格の低価格スクーター
 2003(平成15)年に登場したスクーター、チョイノリもカジュアルな和名が命名されたモデルです。国内生産にして「5万9800円」という破格値で登場し、基本設計の段階から「ボルト・ナット類約5割削減」など際限までコストカットを行い話題になった1台です。この名の通り、ライトユーザー向けの1台で、「チョイとだけ乗る」マシンとして相応のヒットに至りました。

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 ここまでの通り、スズキでは二輪黎明期からすでに「和名モデル」をリリースしてきたわけですが、排気量の大小を問わず「このモデルこそ世に強く広めたい!」といった場合にこそ、和名を名付けてきたように思います。

 和名をつけたバイクはスズキの他にカワサキなどにも存在しますが、やはり刀や隼などの強い存在感から「和名モデルといえばスズキ」的な印象もあります。「横文字=カッコ良い」というきらいは、バイクユーザーのみならず、今日もなお多くの日本人が潜在的に持ち得ている感性だと思いますが、それを飛び越えて独自路線を貫くスズキの独創性が、コアなファンを生み出す理由の一つのようにも思います。

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