京葉道路の上り線で必ずと言っていいほど渋滞するのが「花輪IC」です。流出車も流入車も非常に多いのは、大型商業施設の最寄りであるだけでなく、「このICを目指すクルマで周辺まで渋滞する」という皮肉な構造が影響しています。

出口で詰まる/入口からめっちゃ乗ってくる それが「花輪IC」

「京葉道路」を千葉から東京方面に向かって走っているとき、平日、休日を問わず、どうしても避けられないのが、花輪IC(千葉県船橋・習志野市境)付近での渋滞です。このICは一般道から本線まで車列が伸びることが日常茶飯事で、ここから流入するクルマもドッと増えます。

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花輪IC上り線出入口(画像:PIXTA)

 京葉道路はこれまで、複数回にわたる改修工事で、その交通容量を増やしてきました。上り線では、幕張ICの合流部から花輪ICを経て船橋料金所まで、中央部や路肩を削ってスペースを稼ぎ、従来の「走行車線+追越車線(車線幅各3.5m)」の2車線から「付加車線+走行車線+追越車線(同3.25m)」の3車線とする工事を行い、2020年3月から運用を開始しました。

 その結果、幕張ICから花輪IC間での「動かなくなるような渋滞」の頻度は以前に比べ少なくなりました。とくに新たに設置された「付加車線」は、事実上“幕張ICから流入してきたクルマのファストトラック”と化していて、花輪IC手前までは比較的スムーズに流れます。

 しかしそれでも、花輪ICでは多くのクルマが流入してきて、その先、船橋料金所までは超ノロノロという場合も多々あります。ではなぜ、花輪ICから多くのクルマが流入してくるのでしょうか。

とにかく京葉道路に入れば“救われる?”

 花輪ICは、京葉道路が千葉県道8号船橋我孫子線(以下、船橋我孫子線)と交わる場所に設置されています。「ららぽーとTOKYO-BAY」や「イケアTokyo-Bay」といった大型商業施設の最寄りICでもあります。

 京葉道路の北側には国道14号、南側には東関東道の側道でもある国道357号という、千葉県市川市~船橋市~習志野市~千葉市を結ぶ東西軸が走っています。

 しかし国道14号は地域内交通も混在する片側1車線の道路、国道357号は工業集積地帯を走る産業道路で、花輪IC付近では東京方向、千葉方向のいずれも平均車速が10km/h程度まで落ち込むこともあるほど渋滞が恒常化しています。

 そのため「お金を払ってでもいいから、この渋滞を逃れたい」と考えるドライバーは、国道14号、国道357号から船橋我孫子線に入り、花輪ICから京葉道路への流入を目指します。

花輪ICが人気すぎて国道が渋滞!?

 一方、京葉道路上り方向は船橋料金所に向かって緩やかな上り坂になっています。ここに花輪ICから多数の流入車両が加わることで流速が一気に落ち、渋滞が発生してしまうのです。

いつも混んでる…京葉道路「花輪IC」なぜ“みんな使いたがる”のか? 人気すぎて“皮肉な渋滞構造”
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京葉道路上り線。花輪IC出口から車列がズラリ(乗りものニュース編集部撮影)

 そして皮肉なことに、国道14号、国道357号から花輪ICを目指すクルマがいることが、これらふたつの国道の渋滞を激化させているという側面も否めません。

 船橋我孫子線は、ふたつの国道から花輪ICへのアプローチとなるだけでなく、このエリアで3本の鉄道(JR総武線、京成本線、JR京葉線)を越えて南北をつなぐ唯一の幹線道路であり、非常に多くのクルマが行き交います。

 そのため、ふたつの国道から船橋我孫子線へ向かう右左折車がそもそも多く、それが国道を直進するクルマの流れに影響します。

 とくに国道357号西行きから船橋我孫子線への右折は、時間帯によっては200m以上の車列となり、右折レーンから直進車線にはみ出して流れを停滞させる大きな要因ともなっています。ある意味、花輪ICを目指すクルマがいることでふたつの国道が渋滞し、その渋滞を避けるために花輪ICを目指すクルマが増えるという皮肉な状況なのです。

 ところで、なぜ国道357号西行きを走るクルマは、すぐ上を高架で走る東関東道や、東関東道から続く首都高に流入せず、京葉道路を目指すのでしょうか。その理由の一つとして考えられるのが、京葉道路と東関東道・首都高との“料金格差”です。

 花輪ICから東京都区部の外縁を走る環七通りに出るには、都内に入ってすぐの篠崎ICが最寄りで、その通行料金は250円(ETC普通車、以下同)と、距離の割には割安です。

これは京葉道路が国道14号のバイパスとなる一般有料道路であることによるものです。

東関東道を使いたくないのも無理はない?

 一方、花輪IC付近の国道357号から東関東道、首都高を使い東京方面を目指す場合は、東関東道の谷津船橋ICもしくは首都高の千鳥町入口が最寄りとなります。

いつも混んでる…京葉道路「花輪IC」なぜ“みんな使いたがる”のか? 人気すぎて“皮肉な渋滞構造”
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国道357号東行きと東関東道。奥の若松交差点に向かって恒常的に混雑する(画像:PIXTA)

 このうち千鳥町入口の利用は、混雑する国道357号を延々走る必要があります。しかも環七通りにつながる葛西出口までの通行料金は400円と京葉道路より割高です。

 谷津船橋ICの利用はより手前から国道357号の渋滞を回避することができますが、同じく葛西出口までの通行料金は820円と、花輪ICから京葉道路を利用する場合に比べ、3倍以上の通行料金となってしまうのです。

 また線形としても、東関東道・首都高ルートは市川市以西で京葉道路から離れて湾岸部へ迂回するため、首都高で東京都心部を、また外環道で埼玉方面を目指す場合は距離が延びます。もっとも、目的地がこれらの沿線となる場合は京葉道路ルートとの料金格差は200円程度まで縮小しますが、それでも京葉道路の“割安感”は揺るぎません。

 では、花輪ICから船橋料金所までの渋滞問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。

 やはり根本的な対策は、国道357号の渋滞を緩和させ、「とにかく京葉道路に逃げたい」というクルマを少なくすることでしょう。

 ただそのためにもっとも効果的だと思われる、国道357号と船橋我孫子線が交わる「若松」交差点の立体化は、西行きが東関東道の低い高架とJR京葉線に挟まれた窮屈なところを走っていることもあり、計画そのものがありません。

 次善の策としては、東関東道に並行する「新湾岸道路」の建設を急ぎ、国道357号の負担を軽減することになりそうですが、これも海側の干潟「三番瀬」の環境保護問題もからみ、早期の整備は望み薄です。

 国土交通省千葉国道事務所では、「千葉県移動性向上プロジェクト」と題した検討会で、若松交差点の信号機の時間を調整するなどのソフト的な対策を打ち出し、県警と協力して一定の効果を上げています。

 今後とりうる手段としては、AIを活用したシミュレーションなどで、同交差点、そして京葉道路を挟み船橋我孫子線にふたつある信号の同期をどうとるかなどを検証するといった、地道な努力を続けていくしかないのかもしれません。

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