新京成電鉄が京成電鉄に吸収合併されて「京成松戸線」が誕生してから早2か月……現地はどのような変化があったのでしょうか。現地に名残を訪ねました。
2025年4月1日、新京成電鉄が京成電鉄に吸収合併され、それまでの新京成線は京成松戸線に変わりました。あれから2か月、どのような変化があったのか、京成松戸線に新京成の名残はあるのか、現地を観察してみました。
京成松戸線を走る電車はピンクやリバイバルカラーのままだが、京成カラーに変更された車両も目撃されている(和田稔撮影)
まずは駅から。駅名標や路線図などは、京成電鉄仕様に変更されています。この辺りは駅の「顔」とも言えるアイテムなので当然と言えます。駅のナンバリングも、事前の周知があったように新津田沼~松戸間でKS66~KS88を導入。京成電鉄の一員となったことを教えてくれます。
一方、「合併に伴う運賃・料金の変更はない」と事前に公表されていたとおり、運賃は新京成電鉄時代のものを引き継いでいます。券売機上に設置される運賃表には「京成津田沼より先へのきっぷを購入する際は京成津田沼のりかえのボタンを選択」という旨の表記があり、運賃形態が異なることを物語っています。これは新京成の名残と言えるでしょう。
京成松戸線を走行する電車は、5月中旬現在も新京成時代のピンクとリバイバルカラーをまとっており、かつての雰囲気を残します。車内でも、ドア上の液晶案内表示や車内放送は京成仕様に変わっていますが、座席に配色されたピンクや鏡は残っており、新京成時代を味わえます。
その反面、くぬぎ山の車両基地では8800形の8807編成が新京成時代のピンクから、赤と青の帯を配した京成の塗装に変更されたことも話題になっています。車内がどう変化するのかは分かっていませんが、新京成の名残と京成の仕様が混在するのも、もしかしたら過渡期の今だけになるかもしれません。
ところで、京成松戸線の誕生とともに気になっていたことがあります。それは、ホーム上の自動販売機。新京成の電車を模した自販機は名物でもありましたが、合併を控えそれらは徐々に取り止められていったのです。前回の訪問時には残存していた北習志野駅の自販機も、その後電車のデザインが撤去されたとの報せを受けていました。
ホームに残っていた「新京成の生き証人」京成松戸線となった北習志野駅を改めて訪れてみると……確かにありました、白くなった自販機が。京成津田沼寄りにあった「しんちゃん電車(8000形8502編成)」版はパネルを撤去するだけで済んだのか、どこでも見かけるシンプルな自販機群となっていました。
一方、松戸寄りの8800形版は、2台の自販機を真っ白な箱が囲うような状況になっています。よく見るとわずかな凹凸が……。これは行先表示器が描かれていた部分の模様。どうやら8800形のデザイン上に白くラッピングした様子で、この下にはかつてのピンク電車が眠っていそうです。
もう一つ確認したかったのは、鎌ヶ谷大仏駅の自販機です。前回訪問時には8900形のパネルやパンタグラフは撤去されており、角部と2番線側に残るペイントを見るに終わっていました。果たして、あれも消去されてしまったのでしょうか。覚悟を決めながら鎌ヶ谷大仏駅のホームに降り立ちます。
当該の自販機を見てみると……なんと、当時のペイントはそのまま残っていました! 北習志野駅から電車形の自販機が消えた今、最も「新京成らしさ」を残すポイントの一つかもしれません。さらに、ここに残るのは8900形の旧塗装。まさに「新京成の生き証人」とも言えるでしょう。
前述の通り、いよいよ京成カラーに変更された車両も登場しそうなので、これらがどう変化していくかも見守っていきたいところです。
ちなみに、京成津田沼駅の新津田沼寄りにある踏切は進行方向指示器が二つあり、「京成」と「新京成」の文字が貼られていましたが、現在は「本線」と「松戸線」に変わっていました。ただ、システム自体は変わっていないようで、今も複数の方向が表示された際に一つの方向が表示を終了すると、警報音が倍速になります。慣れた人には騒がしいだけかもしれませんが、ちょっとおもしろいこの光景。機会があったら見てみてください。