地下鉄有楽町線を千葉県野田市まで延伸する構想がありますが、そのルートは決まっているわけではありません。しかし、「地下鉄の延伸を!」と猛アピールしている地域が、東京都足立区内にあります。
「地下鉄8号線の延伸を!」
東京メトロ有楽町線の車両(大藤碩哉撮影)
東京都足立区内、区立郷土博物館の近くで、このようなのぼり旗がはためいていました。このエリアでは「地下鉄延伸」に向けたアピールを活発化させているようです。
足立区東部、環七通りから真っすぐ北へ延びる「葛西用水桜通り」には2025年5月現在、のぼり旗のほか「地下鉄8号線(有楽町線) 葛西用水路に」と書かれた横断幕が至るところで掲げられています。
「横断幕自体は以前から張っていたのですが、最近増やしました」と、足立区の鉄道立体推進室の担当者は話します。
ここでいう地下鉄8号線は、有楽町線(和光市-新木場)の豊洲から分岐して北へ延びる構想路線です。すでに半蔵門線へとつなぐ豊洲―住吉間については事業化され、東武鉄道が東武スカイツリーラインからの乗り入れを表明するなど具体的になっていますが、この路線はさらに東京23区東部、埼玉県東部を北上し、千葉県野田市まで延伸する構想があります。
そのルートは、住吉から押上、四ツ木、亀有(ここまで東京都)、八潮、草加、越谷レイクタウン、吉川、松伏(ここまで埼玉県)を経由し野田市に至る“イメージ”はあるものの、決まっているわけではありません。なお、外環道以北は国道4号バイパス「東埼玉道路」に併設する構想で調査が進められています。
そうしたなか、かなりピンポイントな場所でアピールを強めているのが、足立区なのです。
途中2駅はどこにできる?足立区は2012年から13年という早い段階で、葛西用水路沿いルートを想定して、亀有―八潮間の概算建設費や需要の調査を行っています。このときには、環七通り北側の大谷田と、区の最北東部の六木(むつぎ)に中間2駅を設置する想定でした。

葛西用水路沿いの横断幕(乗りものニュース編集部撮影撮影)
「区東部の鉄道不便地域に駅を設けて、利便性を向上させたい」と区の担当者は話します。
葛西用水桜通りは一般的な狭い2車線道路ですが、その横を流れる用水路と側道まで一つの道路空間と捉えれば、幅20m以上はありそうです。これなら地下に鉄道を通せるだけのスぺースも確保できるか……とも思いましたが、区によると、実際に鉄道を通せるかなど、詳細な調査はまだ行っていないとのこと。
そもそも、前後の葛飾区内も八潮市内も、地下鉄のルートはまだ具体的に定まっていないといいます。
区が横断幕などのアピールを強化しているのは、次回の運輸交通政策審議会の答申を見据えているそうです。鉄道の新線整備は、この答申に基づいて行われてきました。「前回の答申が平成28年(2016)年で、おおむね15年おきと考えると、次の答申は令和12年(2030)度になるとみられます。それに向けて機運を醸成すべくアピールしています」とのこと。
実際に葛西用水路沿いへ地下鉄を通せるかはさておき、いち早くルートを“決め打ち”してアピールを続けてきた足立区。その悲願は実現するのでしょうか。