日本初の「原付のアメリカンモデル」として登場したスズキ・マメタン。これがきっかけとなり、その後各社から同様のコンセプトのモデルが登場します。

ここでは、「小さくても本格的なアメリカンモデル」の系譜をたどります。

細部に感じるマメタン開発にかけた「スズキの本気ぶり」

 50ccモデルにして、かなり低めのシート高76mmにチョッパー風ハンドルを採用して1977年に登場したスズキ・マメタン。「原付のアメリカンモデル」としては日本初のモデルで、当時アメリカのバイク文化に多くのノウハウを持っていたホンダやカワサキでさえ思いつかなかった1台でした。

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前例がなかった「アメリカンタイプの原付」として1977年に登場したスズキ・マメタン(画像:スズキ)

 結果として、1979年にはホンダからダックスのアメリカンバージョンが、1980年にはヤマハから原付にしてはかなり大きめのアメリカンモデルRX50SPが、そして1983年にはカワサキから小型ながらも本格的なアメリカンモデル「AV50」が登場しますが、そのきっかけがマメタンといえます。

 マメタンが“アメリカン”たるゆえんは、低いシートとチョッパーだけにとどまりません。まず、原付としては大きめの5.5Lという燃料タンクを装備しており、地味ながらも「アメリカンツアラー」を意識していることがわかります。

 また、新開発となったパワーリード方式の2サイクル単気筒エンジンは5.5馬力。5速ミッションを組み合わせることで、「本格的な走りを実現させるのだ」というスズキの真剣な開発姿勢が感じられる仕上がりとなっていました。

ケツのカウルのせいで「族車っぽく見える」問題も

 他方、筆者が少し気になるのがケツ周辺。

 チョッパースタイルのアメリカンバイクであれば、「ケツを低めに見せてこそナンボ」という先入観が筆者にはあるのですが、マメタンはややケツ上がりのフォルムで、どちらかといえばロードスポーツモデルのようなテールカウル仕様になっています。

 このテールカウルは小物入りを兼ねた便利な装備ではあるのですが、そのおかげで、せっかくの原付アメリカンなのに「なんとなく族車っぽく見える」というのも正直なところ。とはいえ、これもまたマメタンの個性の一部です。

原付アメリカンでありながら、ただ定番スタイルをサイズダウンしただけではない「マメタンならではの特徴」として捉えることもできます。

他社の原付アメリカン登場の影響も受け、後に生産終了に

 前述のような凝った仕様でもあり、マメタンは一躍人気モデルとなりました。発売翌年の1978年には、フロントにディスクブレーキを採用し、当時としてはかなり真新しかったであろうフレアー(炎)パターンのデカールをあしらったモデルが登場しました。

 さらに、1979年にはディスクブレーキとキャストホイールを搭載した「マメタンE」へとマイナーチェンジを果たします。カタログの「ソウルフルバイク」というキャッチコピーの通り、当時の原付ユーザーの心を掴もうとする意気込みでしたが、その後は各社から相次いで原付アメリカンモデルが登場し、次第にマメタンの存在感は薄れ、やがて生産終了となります。

 現在でも、レジャーバイクファンやコアな原付ファンの間では評価が高い一方、原付市場に新風を巻き起こした重要モデルにあるにもかかわらず、意外と知名度は高くありません。

 とはいえ、「前例がないからこそ、独自のバイクを開発するのだ」といったスズキの独創性が込められた1台であることに変わりはなく、今あらめて評価されるべき「小さな名車」だと思います。

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