東京の晴海運河には、かつて貨物列車が走った貴重な鉄道橋が残されています。運用終了から36年、間もなくリニューアル工事が完了し、遊歩道としての新しい姿を現します。

鮮やかなライトグリーンのアーチが復活

 東京都中央区と江東区の境界に位置する晴海運河。そこにアーチ構造の鉄道橋が架かっています。かつて貨物列車が往来していた晴海橋梁です。1989(平成元)年2月10日に列車の運行が廃止されてから今年で36年、遊歩道として甦るための工事がまもなく完了します。

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1957年に完成した当時と同じライトグリーンになったローゼ橋。背後の都道(春海橋)との色合いもマッチ(2025年6月、和田 稔撮影)

 2025年7月現在、現地を訪れると、特徴であるアーチ部の鮮やかなライトグリーンが目をひきます。この色は建設当時の様子を再現したものです。

 線路が敷かれていた部分はウッドデッキ化され、工事はほぼ完了しているようです。工事にあたり、もともとあったレール・枕木・バラストはいったん撤去されたのち、軌間1067mmのレール、そして内側のガードレールが復元されています。やはりレールがあるとないとでは雰囲気が全く違います。

 アーチの前後に連なる部分にはバルコニーが新設されます。橋桁の側面にしっかりと取り付けられたそれは、色をアーチと同じライトグリーンでそろえています。

橋梁の全体図を見ると、バルコニーは豊洲側・晴海側それぞれに新設されるようで、アーチを違った角度から見ることのできる“映えスポット”として注目です。

 遊歩道の一部やバルコニー部にはガラス床を採用し、枕木やバラスト、橋脚などを上から観察できるようになる予定です。

 もちろん、こうした外観的な部分だけではなく、耐震補強工事も行われています。例えば橋脚部分には「落橋防止システム」として真新しい灰色の部材が取り付けられています。晴海橋梁の完成は1957(昭和32)年11月、それから68年を迎えようとするこの橋を、長く未来へ残そうという意思が感じられます。

国鉄時代に貨物専用線としてスタート

 そもそも晴海橋梁は、晴海線と呼ばれる貨物専用線の一部でした。国鉄の越中島駅(東京都江東区。現・越中島貨物駅)から豊洲・晴海地区に線路を敷設し、1957年12月から貨物輸送が行われていたのです。

 晴海橋梁は、日本の鉄道橋として初となるローゼ橋という種類のアーチ橋と前後に連続PC桁を採用した珍しい構造です。鉄道遺構としても貴重な存在といえます。

 この橋は1989年2月の供用停止以降、撤去されることもなく長らくこの地に残されていました。近隣では開発が進み、タワーマンションや大規模商業施設「ららぽーと豊洲」が開業するなど姿を変えていく中、ポツンとたたずむ赤錆びたアーチやPC桁上の草むした線路が、独特な雰囲気を醸し出していました。

 一時は撤去案もあったようですが、歴史的にも貴重な遺構であることから遊歩道として活用することが決定。もうすぐその工事を終える予定です。一般開放の具体的な日付は公開されていないものの、そう遠くないものと予想されます。

 今年の夏は潮風に吹かれながら、かつての鉄路に思いを馳せるのも良いかもしれません。

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