2025年6月、JRの客車が相次いで営業運転から引退しました。寝台特急「カシオペア」などで活躍したJR東日本のE26系と、JR西日本の欧風客車14系700番代「サロンカーなにわ」です。
しかし、中には列車の廃止が発表されながらも、運行期間が延長されたものもあります。JR北海道の「くしろ湿原ノロッコ号」と「富良野・美瑛ノロッコ号」です。
この二つの「ノロッコ号」は、2025年度をもって運行を終了する予定でした。代わって、新たな観光列車となる「赤い星」「青い星」が2026年4月下旬から運行を開始し、「ノロッコ号」の車両は老朽化もあって引退すると発表されていました。
ところが2025年3月19日、JR北海道の発表により事態は急転します。「赤い星」「青い星」の改造元となるキハ143形気動車について、内装材の内側に想定以上の腐食・歪みがあることが分かったのです。そして、整備に時間を要することから運行の開始時期が繰り下がりました。
同時にJR北海道は「くしろ湿原ノロッコ号」と「富良野・美瑛ノロッコ号」に対して必要な措置を施し、2026年度に限り運行を継続することも発表。各地で客車が姿を消し続ける中、こちらは運行終了の延期が宣言されたのです。これは大きな話題となりました。
牽引する機関車は、製造から約50年が経過2025年7月初旬、「くしろ湿原ノロッコ号」の車内は国内の観光客とインバウンドの観光客でにぎわいを見せていました。
そもそも、北海道の観光列車として人気の高い「ノロッコ号」とはどんな列車なのでしょうか。
「ノロッコ号」はJR北海道が運行する観光列車です。ゆっくりの「ノロノロ」と「トロッコ」を組み合わせて名付けられました。1989年6月に「くしろ湿原ノロッコ号」、1998年7月に「富良野・美瑛ノロッコ号」が運転を開始しています(富良野線では1997年6月に「くしろ湿原ノロッコ号」の編成を使用した運転がされています)。
当初から、改造した客車や貨車をDE10・DE15形ディーゼル機関車が牽引(けんいん)する形態で運転されています。「くしろ湿原ノロッコ号」「富良野・美瑛ノロッコ号」ともに、510系客車が投入されてからは編成端部のオクハテ510-1・2でディーゼル機関車を制御できるようになり、機関車に押される乗り心地を味わうこともできます。
DE10・DE15形は国鉄時代に製造されたディーゼル機関車で、510系客車は「レッドトレイン」と呼ばれた50系および北海道向けの50系51形を改造した車両です。DE10・DE15形の力強いエンジン音や汽笛、響き渡る客車のジョイント音は昔の汽車旅を連想させてくれます。
「ノロッコ号」はこうした懐かしさも感じられる反面、車両の老朽化も進んでいます。JR北海道の発表によれば、「ノロッコ号」は運行を継続するものの、老朽化や使用部品の調達が困難であることから、2026年度で運行を終了するとのこと。来年度こそは本当に最後の1年となってしまうようです。
製造年を見ると、「くしろ湿原ノロッコ号」を牽引するDE10形1660・1661号機はともに1974(昭和49)年1月で、製造から51年が経過しています。
日本国内での客車の旅は、少しずつ過去のものになりつつあります。願わくば「赤い星」「青い星」と「ノロッコ号」の共演を目にしたいところですが、老朽化には敵わないようです。それでも思わぬ形で延命となった「ノロッコ号」は、強運の持ち主といえるのではないでしょうか。