2025年9月19日、東京の晴海運河に架かる旧晴海鉄道橋が、「春海橋公園遊歩道」として開放されました。かつて都の専用線としてディーゼル機関車や貨物列車が走行していた190.3mの鉄路は、どのように生まれ変わったのでしょうか。
供用開始初日午後の現地は、遊歩道に生まれ変わった鉄道橋を楽しむ人々でにぎわっていました。これを目的に訪問した様子の人もいれば、散歩中に人が渡っている光景をたまたま見かけて、興味深そうに眺め、渡る近隣住民らしき姿も。いずれにせよ、新たに渡れるようになったかつての鉄道橋は、大いに注目を集めているようです。
まず目に飛び込んでくるのは、ライトグリーンの大きなアーチ部です。これは建設当時をイメージして塗装されたもので、6月に訪問した時点でもほぼ完成していました。豊洲側には銘板が取り付けられており、「東京都 港湾局 1957」や「設計 国鉄施設局特殊設計室」の文字を見ることができます。国鉄が設計したことは知られた話ですが、まさかこの銘板を間近にみられる日が来るとは。鉄道用に供用開始されてから68年目にしての新しいアングルです。
工事中は体験できず気になっていたポイントの一つが、海側へ張り出したバルコニー部分です。豊洲側のものは、足元がガラス床になっています。橋脚の様子をガラス越しに観察できることはもちろん、下を見ればそこは晴海運河。ちょっとしたスリルも味わえます。
対岸の晴海側のバルコニーは少し長く、こちらの足元は鉄格子タイプ。もちろん、隙間は狭く安全には十分配慮されていますが、より身近に川面を感じられるかもしれません。
どちらのバルコニーも、海側へ張り出したところからアーチ部を観察できます。遊歩道化されたからこその、贅沢な景観です。
予想外だった「鉄分濃いめ」の案内板ウッドデッキ仕様となった歩道部分は、線路との段差もなく安心して歩けます。こちらもアナウンスされていた通り、一部がガラス床に。
豊洲側のバルコニー部。足元はガラス床(和田 稔撮影)
晴海側は、ガラスの下に枕木やバラスト(砕石)が見えます。アーチ部分にもガラス床の場所があり、トラスの梁や枕木が見えます。こうした構造は普段なかなか見る機会がなく、新鮮です。歩きやすい遊歩道ですが、鉄道らしい視覚的な情報が入ってくると「線路の上を歩いている」という気持ちが一層強くなります。
予想外だったのは、豊洲側・晴海側の両側ともに設置された案内板。
そしてふと裏面を見てみると……そこには機関車に取り付けられていたナンバープレートや東京都の紋章のレプリカが。車両愛好家にとっても嬉しい仕掛け、見つけた人は興味津々にスマートフォンのカメラを向けていました。
ちなみに豊洲側はD25-3、晴海側はD60-4のレプリカが設置されています。
さて、今回の供用開始により24時間通行が可能となった春海橋公園遊歩道。もう一つ気になっていたポイントが、夜間のライトアップでした。暗くなってから訪れてみると、アーチ部を筆頭にPC桁橋まできれいに照らされた姿が。これは新たな「映えスポット」になりそうです。仕事を終えた人や犬の散歩をする人など、穏やかな時間が流れていたのが印象的でした。
ちなみに、春海橋公園遊歩道からは東京タワー、レインボーブリッジ、東京スカイツリーが見えます。東京の有名どころをまとめて眺められるとは、なかなかおもしろいスポットですね。大型ショッピングモール「アーバンドック ららぽーと豊洲」からも歩けるので買い物ついでで来る人も少なくなさそうです。
長らく錆びたまま佇んでいた旧晴海橋梁は、遊歩道として見事に生まれ変わりました。ここにかつて鉄道があったことを示す生き証人、その新たな人生が幕を開けたのです。