かつては自衛隊で最大の艦船だったことも

 長崎県にある海上自衛隊佐世保地方総監部で9月20日(土)と21日(日)の2日間にわたって一般公開イベント「佐世保地方隊 オータムフェスタ2025」が開催され、21日(日)には事前抽選による当選者限定の体験航海が佐世保西方海域で開催されました。

【写真】これが補給艦「おうみ」の水で流さないトイレです

 このイベントで筆者(神 徹也:艦船カメラマン)は補給艦「おうみ」に乗艦する機会を得ました。

「おうみ」はましゅう型補給艦の2番艦として2005年3月3日に就役しており、海上自衛隊が5隻保有する補給艦のなかで最も新しい艦です。なお、2015年3月にヘリコプター搭載護衛艦のいずも型が登場するまで海上自衛隊で最大の自衛艦でもありました。

「おうみ」が属するましゅう型補給艦の大きさは全長221m、全幅27m、基準排水量は1万3500トンです。いっぽう、いずも型護衛艦の大きさは全長248m、全幅38m、基準排水量は1万9500トンあります。なお、ましゅう型は補給艦のため、貨油や物資などを最大限積んだ場合の満載排水量は2万5000トンにもなり、この場合はいずも型の満載排水量2万6000トンと1000トンしか変わらなくなります。

 こうしたことから、ましゅう型はナンバー1の座こそいずも型に譲ったもの、いまでもナンバー2の大きさの自衛艦として海上自衛隊を支えています。

 海上自衛隊の補給艦含め、これまで様々な艦船に乗ってきた筆者ですが、「おうみ」に乗艦してみると、改めてその大きさを思い知らされます。ともかく長い、そして広いです。艦橋前面など壁のごとく甲板上にそびえ立っています。

 ただ、艦橋がこれだけ高いのは意味があります。それは艦橋の前に「ステーション」と呼ばれる塔型の補給装置が林立しているからです。合わせて艦首から艦橋までの距離が長いため、視界を確保する意味でも艦橋を高くしていると言えるでしょう。

 補給艦ならではの部屋といえるのが「補給管制室」です。外から見ると艦橋前面に少し突き出した小窓のある場所がそこで、ここでは給油の開始や停止、ポンプの圧力や流量などを管理します。

え、なぜ艦内にレールが!?

 ほかにも補給艦にしかない装備として挙げられるのが、艦内を縦断する「線路」(軌条)です。これは船体各所に設けられた倉庫と荷扱い所を結んでおり、フォークリフトが貨車のように走るために設置されています。なお、このフォークリフトはバッテリー駆動で排気ガスを出さない仕様となっています。また同車がスムーズに行き来するために通路は広く採られており、その点でも護衛艦などとは異なります。

海上自衛隊で「2番目に大きい船」に乗ってみた “洋上のガソリ...の画像はこちら >>

補給艦「おうみ」の病室(神 徹也撮影)。

 また、各種補給物資を運ぶという点で艦内には巨大な冷凍冷蔵庫が3つ備わっているのも補給艦ならではといえるでしょう。内部は天井から吊り下げられたケージに生鮮食品や冷凍食品が収納される仕組みです。必要に応じてケージを動かして扉の前まで持ってくる方式であり、さながら立体駐車場といった感じです。

 医療機能が優れているのも「おうみ」を含む、ましゅう型補給艦の特徴のひとつです。大規模災害時には病院船としても使えるよう、手術室や集中治療室、X線撮影室、歯科治療室を備え、さらには重症者用の第1病室(8床)、軽傷者用の第2病室(30床:2段ベッド)、隔離室としても使える第3病室(7床)まで用意されています。

 こうした点は、船体が大きいからこそ、海自の継戦能力を支える自衛艦ならでの特徴といえるでしょう。

 また、比較的新しい艦ならではといえるのが、トイレです。真水や海水で流すのではなく圧縮空気で吸い取るタイプで、旅客機が備えるモノと同じ仕様でした。

 防衛省・海上自衛隊では、新型補給艦の建造を計画しており、2024(令和6)年度予算に1隻分、830億円の調達費用を盛り込んでいます。

 新型には、「おうみ」をはじめとした既存艦の運用実績などがフィードバックされるので、艦内構造も今回紹介した「おうみ」を基にさらなる拡充が図られたものとなるでしょう。

 なお、船体サイズは基準排水量1万4500トンでさらに大型化する見込みのため、ひょとしたらいずも型護衛艦を抜いて日本最大の自衛艦になるかもしれません。

 新型の補給艦は今後5年以内に登場するのは確実なため、どのような仕様になるのか、興味は尽きません。

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