山手線が環状運転であることはよく知られていますが、「環状線」といえない場合もあります。「山手線」という名前をどう解釈するかがカギのようです。

東京の「環状線」として有名な山手線、しかし…

「山手線」というと、東京の都心部をぐるぐる回る鉄道路線であることはよく知られているでしょう。しかしだからといって実は、「山手線は環状線である」とは言い切れません。

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2015年にデビューした山手線の新型車両、E235系電車(2015年9月、恵 知仁撮影)。

 日本国内の鉄道事業者や路線などについてまとめた国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』(平成28年度版)によると、「山手線」という鉄道路線は、品川駅(東京都港区)から渋谷、高田馬場、巣鴨駅を経由し田端駅(同・北区)に至る20.6kmとされています。これが「山手線」という「路線」の正式な区間で、それ以外の田端~東京間は「東北線」、東京~品川間は「東海道線」という路線です。

山手線は環状線ではない? ややこしい「路線名」と「運転系統名」

「路線」と「運転系統」で異なる「山手線」の概略図(国土地理院の地図を加工、『鉄道要覧』の記載内容による)。

 しかし、「路線」としての正式な区間はそうでも、実際は環状運転。そのため「山手線」という言葉は、品川~渋谷~高田馬場~巣鴨~田端間の路線名であるとともに、環状の「運転系統名」としても使われています。この「運転系統」名が、一般的には「山手線」と認識されているといえるでしょう。

 こういった例は、ほかにも存在しています。大宮~東京~横浜間を結び、根岸線(横浜~大船)と直通運転している「京浜東北線」は、東北本線(大宮~東京)と東海道本線(東京~横浜)を走る運転系統名です。

昔は「の」だった山手線

 路線としての山手線は、1885(明治18)年3月1日に品川~新宿~板橋~赤羽間で開業した日本鉄道品川線がルーツ。

次いで1903(明治36)年4月1日に池袋~巣鴨~田端間が誕生し、現在の全線が開業しました。「山手線」という路線名は1901(明治34)年に、正式に付けられています。

 1919(大正8)年、東京駅で東海道本線と中央本線がつながったことにより、中野~新宿~四ッ谷~東京~品川~渋谷~巣鴨~上野間で「の」の字運転が開始されます。そして、現在と同じ環状運転になったのは、東北本線の神田~上野間が開業した1925(大正14)年です。

 また、日本鉄道は1906(明治39)年に国有化され、その後の国鉄、JRへつながります。

 ちなみに大阪市内をグルッと1周して運行される大阪環状線も、『鉄道要覧』では天王寺~大阪~新今宮間20.7kmで、実は「路線」としては環状ではありません。残りの新今宮~天王寺間1.0kmは「関西線」です。

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