30分で5人違反、3人が無免許運転で任意同行

 ペダル付電動バイク(いわゆるモペット)などを運転する悪質違反者への対応がさらに強まっています。

【コワ…】これが「ペダル付電動バイク取締り」の一部始終です(写真)

 2025年9月24日、豊島区西池袋の西口五差路交差点で行われた警視庁の指導取締りでは、約30分で違反者5人が摘発され、そのうち3人は無免許運転でした。

現場はJR池袋駅西口に近く、歩行者の通行も多い場所です。

 車両はいずれも無届でナンバープレートが未装着でした。自転車のように見せていたため、摘発では歩道通行、ヘルメット装着義務違反、ナンバープレート非表示などのほか、サイドミラーなどを取り付けていない整備不良に問われました。

 指導取り締まりは、警視庁交通執行課と交差点周辺に位置する池袋署、巣鴨署、目白署が合同で行う大がかりなものでした。取締りには白バイ、パトカー、そのほかペダル付電動バイクを移送するワンボックスが、交差点のポイントごとに配置されました。

 今回のケースで逮捕者はいませんでしたが、悪質性が高いとされる交通違反では、否認し続けると逮捕されることがあります。無免許違反に問われたケースでは、ペダル付バイクが警察車両に積み込まれ任意同行を求められる場合もあり、今回も複数の違反者が、警察署に場所を移して、取り調べを受けることになりました。

 自転車のようなものだから、ナンバープレートの装着も、自賠責保険の加入も省略できるだろうと軽く考えた代償は、決して小さくありません。

アクセルレバーの有無は問題にされない

 道路交通法令の改正を受けて、警視庁は自転車のようにペダルが付きモーターなどで自走する車両を、ペダル付電動バイクと呼ぶようになりました。「原動機付自転車」が車両区分上の呼称ですが、自走する車両は自転車ではないという認識を徹底するためです。

 摘発を受けた多くの違反者は、免許が必要な乗り物だとは知らなかったことを訴えます。

 原動機付自転車の区分が細分化された中に免許不要の「特定小型原付」が創設(2023年7月~)された当時は、特にこうした認識の有無を訴える利用者が目立ちました。

この誤解を解き、車両区分を明確にするため、ペダル付き車両であっても、自走する車両は自転車とはみなされないことを強調する改正が行われました。

運転者の“訴え”は考慮せず 変化した取締り

 ペダル付電動バイクとアシスト自転車との大きな違いは、ペダルを踏むことをやめても、自走し続けることです。アシスト自転車は踏力をアシストするだけなので、軽く踏むだけでは車輪は止まってしまいます。今回の違反で「原付以上」とされた車両は1台を除き、マウンテンバイク風でほぼ外見が自転車でした。

「これ“自転車”です」→「あれ、車輪が止まらないね。署まで」...の画像はこちら >>

違反を問われた車両には、パワフルそうなインホイールモーターに、制動力が問われるディスクブレーキが装着されていた(中島みなみ撮影)

 スピード調節のためのアクセルレバーやスロットルがわかりにくい車両もありましたが、それはあまり重要ではありません。指導取締りでは、警察官が持ち主の同意を得て車体を持ち上げて、ペダルを回し、車輪が回り続けるかどうかを確かめます。自走する構造が確認できた時点で「原動機付自転車以上の車両」であることが認定されます。

 法改正当初は、車両の型番などでアシスト自転車か否かを現場で確認することもあったほか、運転者の認識も考慮されました。しかし、現行の指導取締りでは、運転者の思いより、公道走行中の車両が自走できるかどうかが最も重要なポイントになっています。

 今回のケースではありませんが、運転者の関係者が、アシスト自転車として購入した書類があると主張したものの現場では判断されず、任意同行を求められたケースもありました。

「こうした違反車両が事故を起こしても、補償能力がありません。被害者保護の観点から、悪質な違反をなくすことが求められています」(警視庁交通執行課)

 自転車に該当しない車両は、少なくとも市区町村に届出をしてナンバープレートを取得し、車両に取り付けた上で、自賠責保険に加入する義務があります。

免許の必要性は運転者の問題ですが、その前に公道走行に必要な要件を車両が備えているかどうかが、利用者に問われています。

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