例年、東海道・山陽新幹線の列車が大阪の指令所から制御されることが、1日だけあります。そう聞くと珍しいことに思えますが、その現場では意識が異なるようです。
きょう2016年12月3日(土)、東海道・山陽新幹線は、始発から通常通り運行されていますが、普段とは大きく異なる点があります。この日に限って、列車の運行が大阪から制御されているのです。
普段、東海道・山陽新幹線の運行制御は、東京にある「新幹線総合指令所」から行われており、山陽新幹線と直通運転している九州新幹線についても、東京の「新幹線総合指令所」とJR九州「博多総合指令センター」の連携で、運行が制御されています。
大阪の「東海道・山陽新幹線第2総合指令所」。壁面の「総合表示板」には駅名や運行状況などが表示されている(2016年12月3日、恵 知仁撮影)。
しかし年に1日、東京の指令所にかわって大阪の「東海道・山陽新幹線第2総合指令所」から列車の運行が制御される日があり、それが今年2016年はきょう、12月3日(土)なのです。JR東海とJR西日本、JR九州の担当者が、大阪から列車の運行状況を見つめます。
こうした列車の指令所は運行状況の監視、管理のほか、車内で急病人発生といった非常事態が起きた場合、乗務員や駅と連絡を取り合って列車を通過駅へ臨時停車させるなどの手配を実施。いわば「新幹線の頭脳」といえる存在です。
年に1日でも、電源は常時「ON」年に1日しか使われない、大阪の「東海道・山陽新幹線第2総合指令所」。それが設けられた理由は、東京にある「新幹線総合指令所」のバックアップです。万が一、地震などで東京の指令所が使えなくなった場合でも新幹線の運行を確保するため、1999(平成11)年から大阪でも指令所の運用が開始されました。
「輸送(列車)指令」「輸送(旅客)指令」「電力指令」といった「指令」が、指令所で新幹線の運行を制御する(2016年12月3日、恵 知仁撮影)。
この大阪の指令所は「有事の備え」であるため、普段、ここから列車の制御は行われません。しかし年に1日だけ始発から最終まで、そこからの列車制御が実施されており、2016年はきょう12月3日(土)がその日。台風の影響を受けた2004(平成16)年を除いて行われ、今年で17回目になります。
ただ大阪の指令所は「有事の備え」であるため、何事もなくとも常に電源が入った「待機状態」になっているほか、訓練にも使用されるとのこと。また、“本来の目的”で大阪の指令所が使われたことは、これまでないそうです。
「年に一度」は、珍しいことでも、変わったことでもない?年に1日だけである、大阪からの新幹線制御。珍しいことですが、JRの担当者から出てくるのは逆の言葉でした。
「通常と違ったことは行っておりません。安全、安定輸送のため、普段通りやっております」(JR東海 新幹線鉄道事業本部 輸送指令長 北村清文さん)
JR西日本、JR九州の指令長も同様に、年に一度である大阪からの列車制御について「普段通り」「変わりなく」と話します。「鉄道」というインフラの使命は、安全に、変わりなく走っていることであり、場所が違っても、いかに「普段通り」であるかが重要なわけです。
きょう12月3日(土)は、合計180人の指令員が、473本におよぶ東海道・山陽新幹線の営業列車を大阪から制御する予定です。
【写真】東京から鹿児島まで見渡せる指令所
「東海道・山陽新幹線第2総合指令所」の壁面には大きな表示板が設置されており(写真奥)、東京駅から鹿児島中央駅までの運行状況を確認できる(2016年12月3日、恵 知仁撮影)。

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