信号のない円形の交差点「ラウンドアバウト」が、2014年9月の導入以来、全国に増加しています。いくつものメリットがある一方で、課題も見えてきています。

信号なし 直進でも「回って」

 信号のない円形の交差点「ラウンドアバウト」は、ヨーロッパを発祥とする交差点形式のひとつで、信号で制御される通常の交差点とは違った通行ルールが存在します。

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長野県飯田市内の「東和町ラウンドアバウト」。交差点の中央に「島」があり、その外周の「環道」を通行する(2016年11月、恵 知仁撮影)。

 ラウンドアバウトは、交差点の中心に「中央島」と呼ばれるスペース(基本的に乗り入れ不可)、その外周を取り囲むドーナツ型の通行路「環道」があり、そこから放射状に道路が伸びる構造です。その通行ルールをかんたんにまとめると、以下のとおりです。

・環道へは左折で進入、環道からは左折で流出
・環道内は時計回り(右回り)で進む
・環道内を走行している車が優先
・環道へは徐行で進入(原則、一時停止不要)

 たとえばラウンドアバウトが置かれた十字路の場合、左折方向に進む際は環道に入って4分の1周、直進方向に進む際は半周、右折方向に進む際は4分の3周するような形で通行します。

 この通行ルールは、2014年9月の道路交通法改正によって「環状交差点」の名で適用され、8都府県34か所においてラウンドアバウトの運用が開始されました。2016年3月末時点では17都府県55か所に増え、その後も増加しています。ただし、環道進入時に一時停止をともなうところもあります。

 法整備前に実道を使用して社会実験を行った長野県飯田市の担当者によると、「交差点進入時の速度抑制、信号待ちの解消、いくつもの道路が複雑に交わる交差点も円滑に制御できる点などがメリットです。信号が撤去されることで、たとえば停電時に警察官が交差点内に立って手信号で交通誘導をする必要などがなくなります。維持管理の面でも経済的です」といいます。

 地元を走る飯田タクシーのドライバーは「(ラウンドアバウト化で)一時停止がなくなり、最初は事故が起こるかと心配しましたが、ドライバーどうしの“ゆずり合い”ができていて安全に通行できます」と話します。直進する場合でもいったん環道に入らなければなりませんが、その点についても「特に気になりません」とのことです。

安全面だけではない効果 しかし課題も

 2016年4月、岡山県は浅口市寄島町にある交差点を中四国地方初のラウンドアバウトに改築し、約7か月後の12月にその整備効果を発表しました。これによると、導入前の3年間で12件発生していた事故は、約7か月のあいだでは0件。また、ラウンドアバウトの近隣2地区に実施したアンケートでは、回答した89人中91%にあたる75人が、実際に自動車で走行したところ「走行速度が抑制され、重大事故の危険性が低いと感じる」と答えています。

 また、飯田市の担当者は「ラウンドアバウトは中央島を緑化したり、そこにシンボルのようなものをつくることもできます。飯田市では中央島を地元のボランティアに管理していただくことで交流が生まれるなど、街づくりにも寄与しています」と、交通以外のメリットも指摘しています。

「ラウンドアバウト」2年 導入効果と見えてきた課題

岡山県浅口市に整備されたラウンドアバウトのイメージ。案内標識や規制標識にも、その通行方式が反映されている(画像出典:岡山県)。

 一方で、岡山県の調査では視覚障がい者から「車が接近してくる方向が分かりにくい」といった意見があったそうです。このため岡山県では、視覚障がい者が触ってラウンドアバウトの構造などを理解するための模型を作り、希望者に無料で貸し出しています。飯田市の担当者も、「障がい者への影響は課題のひとつと考えられます。

横断歩道の前後を走行音が出やすい舗装にするなどの対策法があるかもしれません」といいます。

 国土交通省は、ラウンドアバウト導入の目安として、1日の交通量が1万台未満であることとしており、交通量の多い交差点では、むしろ混雑する可能性もあるそうです。都道府県警察では「その効果が発揮できる適切な箇所への導入を推進する」としています。

【写真】「中央島」に謎のオブジェ?

「ラウンドアバウト」2年 導入効果と見えてきた課題

スイスにあるラウンドアバウト。「中央島」に馬をかたどったオブジェが設置されている(2016年8月、恵 知仁撮影)。

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