小田急「ロマンスカー」のひとつ30000形「EXE」が「EXEα」にリニューアルされ、2017年3月1日に運転開始。小田急線を使った通勤、観光に変化が起きます。
小田急電鉄の特急「ロマンスカー」車両30000形「EXEα(エクセ アルファ)」が、2017年3月1日(水)より運転を開始します。
新たに登場する小田急「ロマンスカー」、30000形「EXEα」(2016年12月、恵 知仁撮影)。1996(平成8)年にデビューした30000形電車「EXE(エクセ)」をリニューアルしたもので、小田急電鉄 運転車両部の野中俊昭課長によるとこの車両が登場した当時、自動ホロやコンプレッサーなどの新しい機器にトラブルが多く、徹夜での対応もしたそうです。そして、それから20年。このたび実施されるリニューアルについて「感慨深いです。かわいい息子のよう」と目を細めます。
小田急30000形「EXE」は、箱根などへの観光利用のほか、通勤やショッピングといった日常利用を強く意識しているのが大きな特徴です。状況に応じて10両編成を6両と4両に分割できる「柔軟性」、588名(リニューアル前。リニューアル後は578名)という「特急『ロマンスカー』で最も多い定員」を持ち、小田急線の通勤環境向上などに貢献しました。
ちなみに「6両」と「4両」の連結部分は、ホロで覆われた通路で行き来が可能。そのホロは「6両」と「4両」の連結・切り離しにあたって、自動でセットされます(先述の「自動ホロ」)。
また、「EXE」の由来は「Excellent Express(素敵で優秀な特急列車)」です。
「EXE」から「EXEα」、進化のポイントは? 「社会の変化」にも対応小田急電鉄によると、「EXE」就役から20年が経過し、高齢化の進展や訪日外国人旅行者の増加など社会が変化するなか、多様化する利用者のニーズに合致した車両サービスを提供するため今回、「EXE」から「EXEα」への全面リニューアルを実施するといいます。

デザイン設計は、前面展望席構造を持つ小田急「ロマンスカー」の代表的車両50000形「VSE」などを担当した、岡部憲明アーキテクチャーネットワークが担当。車体塗色がブロンズ系からシルバー系になるなど、内外装ともデザインには大きく手が加えられました。

車内は、天井が明るい仕上げ材に変更され、壁面は木質系の仕上げに。照明は間接・直接を組み合わせたもので、「落ち着いたビジネス空間と心地よい豊かさをもつ観光車両の空間を共に演出」したとのこと。訪日外国人旅行者としての対応として、大型収納スペースも用意されます。

座席はデザインが変更されたほか、テーブルと肘掛けが一新され、手かけやフックなども用意されました。またリニューアル前からWi-Fiサービスが導入されているほか、リニューアル車両の第2陣からは、窓側の座席にコンセントも設置される予定です。
「快適性・利便性の向上」という点では、和式トイレの廃止と温水洗浄機能付き洋式トイレへの変更、「ゆったりトイレ」の設置も挙げられます。「EXEα」のトイレは、2号車に共用トイレと男子トイレ、女子トイレ、5号車と8号車に「ゆったりトイレ」と男子トイレ、という形です。

「安心・安全」に関する改良としては、各車両出入口、客室内への防犯カメラ設置があります。映像は、乗務員室でリアルタイムに確認が可能です。ドアチャイム、ドアランプの新設、座席の点字案内、車椅子対応といったユニバーサルデザインも考慮されているほか、授乳時や体調不良時などに利用できる多目的室も設置されます。

また、小田急の通勤車両1000形で約4割の電力量削減を実証したフルSiC適用VVVF制御装置を採用し、省エネルギー化が図られているほか、低騒音である全密閉式の主電動機(モーター)、空調装置を用いることで「環境面への配慮」も行ったといいます。
「EXE」から「EXEα」へのリニューアルは30000形電車7編成すべてに順次行われる予定で、最初の編成に関するリニューアル費用は、最初の編成であるためデザイン費を含み、およそ13億円とのこと。施工会社は日本車両製造です。
小田急電鉄では2018年3月、東京・下北沢地区の複々線が完成する、かんたんにいえば線路が増えることから、特に朝の通勤時間帯における列車の増発、所要時間の短縮、混雑の緩和が実現する予定。
