業界初「扉付き完全個室」の夜行高速バス「ドリームスリーパー東京大阪号」。東京~大阪間で「のぞみ」グリーン車に匹敵する2万円という料金とともに、大きな話題となったそのバス、実際に乗車して「最大の売り」が分かりました。
2017年1月18日(水)、両備ホールディングス(岡山市)と関東バス(東京都中野区)が新車「ドリームスリーパーII スーペリアクラス」を用い、東京~大阪間で、片道通常料金が新幹線「のぞみ」グリーン車並みの2万円という夜行高速バス「ドリームスリーパー東京大阪号」の運行を開始しました。
関東バスの「ドリームスリーパー東京大阪号」専用車両。同社の夜行高速用カラーに「DREAM SLEEPER」「Superior Class」のロゴが入る(画像:須田浩司)。最大の特長は、業界初の「扉付き完全個室」を採用したことです。これまでの個室型夜行バスは、個室と通路をカーテンで仕切るタイプが主流でしたが、「ドリームスリーパーII スーペリアクラス」では、各個室内にカメラを設置。運転席のモニターから確認できるようにすることで安全面をクリアし、「扉付き完全個室」を実現しました。これにより、個室内での静粛性およびプライベート感が向上。もちろん、着座時は運転席のモニターに映さないなど、プライバシー保護にも配慮しています。

寝るためのシートは、浮遊感を感じながら深眠できるという「ゼログラビティシート」を全席に採用。チルト、リクライニング、フットレストの調節すべてを電動で行えるほか、全自動スイッチでセログラビティ姿勢(フルリクライニング)にすることも可能です。また各座席には、ノートパソコンを置ける大型テーブルが設置されました。
この「ドリームスリーパーII スーペリアクラス」は、2012年8月29日に中国バスの広島・福山~町田・横浜線で運行を開始した「ドリームスリーパー」が進化した「2代目」ともいえる車両。その初代「ドリームスリーパー」で採用されたウエルカムアロマ、イオン発生器、トイレ&パウダールーム、充電用コンセント&USBポート、無料Wi-Fi、4チャンネルマルチステレオなどを引き続き採用したうえ、先述の「扉付き完全個室」や温水洗浄機能付きトイレなど2代目「ドリームスリーパー」にふさわしい、さらに豪華な車内設備を有しています。
「ドリームスリーパー東京大阪号」に乗車してみて「扉付き完全個室」の「ドリームスリーパー東京大阪号」は、東京、大阪両地を22時台に発車し、翌朝6時台に目的地へ到着するダイヤになっています。実際に乗車してみると、走行音以外ほとんど物音がしないことに驚きます。個室と通路を仕切る扉の遮音効果は相当なものです。

そして、この時間ともなると、通常の夜行高速バスであれば消灯時間で車内は真っ暗。通路カーテン付きバスでも、スマートフォンやゲームなどをするにはどうしても遠慮してしまいます。しかし「扉付き完全個室」の「ドリームスリーパー東京大阪号」であれば、仮に寝られないとしても、大きな物音を立てない限り、大型テーブルをセットしてパソコンで作業しようが、スマートフォンやゲームなどで暇をつぶそうが問題ありません。
周囲を気にせずに思い思いの時間を過ごせるのが、個室型夜行高速バス最大のメリットであり、「ドリームスリーパー東京大阪号」最大の売りなのではと改めて実感します。
「ドリームスリーパーII」、2017年4月に運行拡大へ一方で、初代「ドリームスリーパー」にも採用されていた「ゼログラビティシート」と比較すると、2代目はフルリクライニングの角度が若干浅いためか、睡眠時の姿勢が個人的に中途半端に思えたのが気になりました。個室前後の壁をえぐるか、シートの位置を若干前方にセットするなりして、リクライニングの角度をもう少し深くしたほうが良いのかもしれません。

マスコミにも大きく取りあげられ、一躍注目浴びた「ドリームスリーパー東京大阪号」ですが、現在のところ週末を中心に混み合っているようです。そして、両備グループの中国バス(福山市)では、2017年4月1日(土)に広島・福山~町田・横浜線「ドリームスリーパー」を東京(大崎、水道橋)発着に変更したうえで、新たに「ドリームスリーパーII」を導入します。とかく「安さ」に注目されがちな夜行高速バスに新たな価値を提供した「ドリームスリーパーII」、今後の動きに目が離せません。
【写真】業界初「扉付き完全個室」夜行高速バスの車内
