信越本線・横川駅(群馬県安中市)の駅弁「峠の釜めし」に使われている陶器の釜は、料理用をはじめ、さまざまな用途に再利用されています。そもそもこの釜はどのような経緯で誕生し、どのような利用方法があるのか、製造元の「おぎのや」に聞きました。
信越本線・横川駅(群馬県安中市)の駅弁「峠の釜めし」は、1958(昭和33)年以来のロングセラー。2017年6月現在、各地で開催される駅弁大会のほか、東京駅や銀座の複合ビル「GINZA SIX」(東京都中央区)、上信越道・横川SA(群馬県安中市)などでも売られています。
おぎのやの「峠の釜めし」(画像:おぎのや)。
その器は栃木県益子町で作られる益子焼の釜です。「おぎのや」の屋号で釜めしを製造・販売する荻野屋(群馬県安中市)によると、食べ終わったあとの空き釜は「基本的にはお持ち帰りいただいています」といいます。
この空き釜、どのような利用方法があるのでしょうか。おぎのやのウェブサイトでは、空き釜を使った料理レシピを紹介しており、パエリア、チョコレアチーズケーキ、フルーツグラタン、釜あげうどんなど、和洋さまざまなメニューが見られます。これについて、荻野屋に話を聞きました。
――ウェブサイトでさまざまな料理が紹介されていますが、おすすめはなんでしょうか?
個人的には、まずは釜で炊いた白米を食べてもらいたいと思います。釜を使うとちょうど1合分をふっくらとおいしく、「おこげ」付きで炊くことができます。
――料理以外にも使われているのでしょうか?
よくあるのは植木鉢です。珍しいところでは、インターネット上で見た限りですが、各種部品を取り付けてスピーカーにしている人もいらっしゃいました。
――お店で出た空き釜はどうしているのでしょうか?
店内で食事をされたあとの空き釜については、殺菌消毒して再利用しています。全販売店で空き釜の回収も対応していますが、そうした外部から持ち込まれたものについては、益子に運んで粉砕し、アスファルトの材料にしたり土に戻したりしています。
――そもそも群馬のお店なのに、なぜ栃木の益子焼の釜なのでしょうか?
昭和30年代当時、益子から陶器の行商人が当社に訪れたことがきっかけです。行商人が扱っていたさまざまな商品のなかで、小さいため使い勝手が悪いことからどこにも売れなかったという釜が当社関係者の目に留まり、その場で買い占めたのが始まりと言われています。
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ちなみに、益子焼の釜は「峠の釜めし」発売当初から使われていますが、「実はこの釜は植木鉢として使用するために、底へ排水用の穴を空けやすい構造になっており、実用新案も取得しています。これにあたり底を少し薄くしたため、昔のものより軽くなっている」(荻野屋)といいます。実用新案は1996(平成8)年に取得したそうです。
荻野屋は、今後も空き釜を使ったレシピを募集、紹介していきたいとしています。
【写真】空き釜を使った料理いろいろ

左上から時計回りにパエリア、チョコレアチーズケーキ、釜あげうどん、フルーツグラタン(画像:おぎのや)。