新たな観光列車「ザ ロイヤルエクスプレス」が登場。東急と伊豆急が投入する関東初の「水戸岡デザイン」列車、どんな特徴を持っているのでしょうか。
新たな観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ ロイヤルエクスプレス)」が2017年7月21日(金)、運転を開始します。走行区間は横浜駅と、伊豆半島の先端に近い伊豆急下田駅(静岡県下田市)のあいだ。走るのはJR東海道本線とJR伊東線、伊豆急行線ですが、東急電鉄と、そのグループである伊豆急行が送り出す列車です。
「ロイヤルブルー」を身にまとう伊豆観光列車「ザ ロイヤルエクスプレス」(2017年7月15日、恵 知仁撮影)。
日本各地に観光列車が走る現在、この「ザ ロイヤルエクスプレス」はどんな特徴を持っているのでしょうか。
「クルーズ」と「片道」、2種類ある乗車プラン「ザ ロイヤルエクスプレス」は、列車への乗車(車内での食事付き)と伊豆の旅館やホテル、観光がセットになった1泊2日の「クルーズプラン」と、列車への片道乗車と車内での食事がセットになった「食事付き乗車プラン」という、2種類の旅行プランを用意。すべてお任せで旅することも、旅の一部に「ザ ロイヤルエクスプレス」を組み込むこともできます。

伊豆急行線には元東急電鉄の電車が走る(写真奥)。

乗務するサービスクルー。

コンセプトは「煌めく伊豆。美しさを感じる旅。」。
2017年7月31日(月)必着(郵送の場合)で募集されている2017年9月出発分について、旅行代金(大人1人あたり)は「クルーズプラン」が13万5000円から、「食事付き乗車プラン」が2万5000円からです。
「プラチナ」「ゴールド」の2種類 サンダル「ご遠慮ください」「ザ ロイヤルエクスプレス」の客席は「ゴールドクラス」と、より上級の「プラチナクラス」という2タイプの構成。「食事付き乗車プラン」の旅行代金(大人1人あたり)は「プラチナ」だと3万5000円ですが、「ゴールド」は2万5000円(子ども2万円)と比較的安価に設定されています。
「プラチナ」と「ゴールド」では食事の内容などが異なるほか、「プラチナ」は、男性は襟付きシャツ、女性は襟付きシャツまたはワンピースなどの着用が推奨されています。サンダルでの乗車は、「プラチナ」「ゴールド」とも「ご遠慮ください」です。
なお「クルーズプラン」利用の場合、乗車は「プラチナクラス」になります。
親子、1両丸々キッチンも 「ザ ロイヤルエクスプレス」車内は?「ザ ロイヤルエクスプレス」は8両編成で、定員は約100名。国内の観光列車としては最大級のキャパシティがあるというほか、8両と多い両数ながら、各車両がそれぞれ別の形の個性を持っているのが大きな特徴です。
小さな子どもへ配慮 親子の旅を応援「ザ ロイヤルエクスプレス」の1号車は「親子で旅を楽しむ」がテーマの「ゴールドクラス」車両で、大人と子ども(小学生未満)が並んで座れる「ファミリーシート」を設置。小さな子どもでも車窓がよく見えるよう、床が高くされています。

1段高くなっている1号車の床。

運転士気分を楽しめる1号車。

周囲に青いカメが泳ぐ「木のプール」。
この1号車は展望車構造で、運転士気分で迫ってくる風景を楽しめるのもポイント。木の玉がつまったプールや絵本の図書館も備えられ、列車の旅を親子で楽しめるようになっています。
なお、「ファミリーシート」を利用する場合の「食事付き乗車プラン」旅行代金は4万円です(大人と小学生未満の子どもの合計)。
1両ぜんぶがキッチン!4号車はほぼ1両すべてがキッチンという珍しい車両で、ここからから伊豆の海の幸、山の幸を届けるとのこと。

4号車「キッチンカー」のカウンター。

4号車にはキッチンが2か所並ぶ。

キッチン内部を見せられる構造になっている。
料理は、「エスプーマ」を使った料理を日本で広めた先駆者として知られている「山田チカラ」(東京・南麻布)の山田チカラさん、「食」に関する商品開発のコーディネートなども手がけている「方寸」(大分市)の河野美千代さんによる監修です。
「これ、本当に列車のなか?」 そんな気持ちになる設備とサービス「ザ ロイヤルエクスプレス」には、列車のなかにいることを忘れてしまいそうな設備、サービスもあります。
走る電車のなかで生演奏、そして舌鼓!車内での音楽演出も「ザ ロイヤルエクスプレス」の特徴。5号車と6号車にはピアノが設置されており、生演奏を聴きながら食事できます。

5号車に設置されているピアノ。

車内ではバイオリン演奏も。写真で弾くのは大迫淳英さん。

6号車の「にぎり寿司コーナー」(手前のカウンター)。
この「ザ ロイヤルエクスプレス」のテーマ曲も、バイオリニストで「旅と音楽」をテーマに活動している音旅演出家の大迫淳英さんによって制作されました。
ピアノがある5号車と6号車では、「プラチナクラス」利用者が食事を楽しむことが可能。天井のステンドグラスが印象的な6号車には、「にぎり寿司コーナー」も用意されています。
結婚式も可能! マルチな3号車3号車は「マルチカー」で、必要に応じて椅子やパーティションなどを設置。展覧会や会議、会食、商談、ミニコンサート、そして結婚式など、さまざまな活用ができるといいます。

必要に応じて椅子やテーブルを設置できる3号車「マルチカー」。

ひとつだけ黒い「R」はスピーカーを兼ねている。

テーブルは床と接続できる安全構造。
今後、この車両を活用して「ザ ロイヤルエクスプレス」の楽しさをさらに広げる試みも行われるかもしれません。ちなみにこの車両では、電気鋳造の技術を使ったパネルを世界で初めて天井に配しているそうです。
同じ展望車構造である1号車と8号車、でも中身は正反対先述のとおり、「ザ ロイヤルエクスプレス」は8両編成と観光列車としては両数が多いながら、各車両がそれぞれ別の形の個性を持っているのも大きな特徴です。
国内最大級の観光列車、それでいて各車両に個性「ゴールドクラス」利用者は1号車と2号車に乗車します。


ウォールナットが用いられ落ち着いた雰囲気の2号車。

車内の壁面には絵が各所に飾られている。
そのうち1号車は、「木のプール」などもある「親子で旅を楽しむ」車両。これに対し、2号車はウォールナットが用いられたシックな空間になっています。
関東初の「水戸岡デザイン」「ザ ロイヤルエクスプレス」をデザインしたのは、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治さん(ドーンデザイン研究所)。これまでさまざまな観光列車を水戸岡さんは手がけていますが、それが関東地方に登場するのは今回が初です。水戸岡さんは、これまでの30年間、JR九州などでつちかったものを伊豆へ持ち込むとどうなるか、また、そうしてつちかったもの使い、日本中をデザインで元気にしたいと話します。

展望車構造になっている1号車。

1号車のライブラリーには「ななつ星in九州」の書籍も。

1人掛けの席が並ぶ「プラチナクラス」の8号車。
「ザ ロイヤルエクスプレス」の8号車には、「プラチナクラス」利用者が使えるライブラリー、“書斎”になるデスクなどが備えれており、そこには水戸岡さんに関わる書籍も。1号車と同じ展望車構造の車両ですが、こちらは対照的な“大人”の空間になっています。
車内に光る伝統の技「プラチナクラス」の7号車は、床が寄せ木細工をイメージしたデザインで、椅子は組子細工。「ザ ロイヤルエクスプレス」のインテリアデザインは、普遍性を持った機能美を追求するとともに、地域のアイデンティティーを洗練された形で表現し、先端技術から生まれる素材や工法に、伝統的な素材や職人の技を組み合わせたそうです。

床に寄せ木細工のデザインが施されている7号車。

同じ7号車でも伊豆急下田側はまた、床のデザインが異なる。

天井にある「R」の向きがそれぞれ異なっている7号車。
「ザ ロイヤルエクスプレス」車内では7号車に限らず、こうした寄せ木のデザインなどが各所にちりばめられています。
窓に広がる水平線 風光明媚な走行区間「ザ ロイヤルエクスプレス」が走る横浜~伊豆急下田間では、車窓に相模灘(湾)が登場。伊豆大島などの島々も彩りを添える、風光明媚な区間です。

5号車には「黄金のトイレ」がある。

車内には沿線の品を飾るスペースも。

デッキには「ドーンデザイン研究所」が手がけたことを示すものが。
なお「ザ ロイヤルエクスプレス」は1号車と2号車が「ゴールドクラス」、3号車が「マルチカー」、4号車が「キッチンカー」、5号車から8号車が「プラチナクラス」です。
「寝台機能」はないものの、「起爆剤」に「全国で豪華な列車が複数走っていますが、『ザ ロイヤルエクスプレス』は寝台機能こそないものの、随所にナンバーワンがあるオンリーワンの列車になりました。これが伊豆観光の、そして伊豆全体が発展していく起爆剤になればと思います」(伊豆急行 小林秀樹社長)
「ザ ロイヤルエクスプレス」は2017年7月21日(金)の11時50分頃、横浜駅を発車。その旅を始めます。