深夜の東海道新幹線品川駅に「鉄道クレーン」が出現。その線路を“改造”していきます。

その直下にリニア中央新幹線の品川駅を設けるためです。リニア中央新幹線工事の有数の難所「品川駅」で、「鉄道クレーン」が大きな役割を果たします。

東海道新幹線を止めることは「許されない」

 2017年11月24日(金)の終電後、日付が変わったころ、東海道新幹線の品川駅に見慣れぬ車両が出現しました。

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東海道新幹線の品川駅に出現した「鉄道クレーン」(2017年11月25日、恵 知仁撮影)。

 その名は「鉄道クレーン」。リニア中央新幹線の建設工事にともない、東海道新幹線の品川駅に現れました。

リニア中央新幹線の始発駅である品川駅のホームは、乗り換えの利便性などから、東海道新幹線品川駅の直下およそ40mの場所に建設されるからです。
 しかし、JR東海 中央新幹線建設部の林 保弘担当部長はこう話します。

「大動脈の東海道新幹線を、リニア工事で止めることは許されません」

「鉄道クレーン」出現! 東海道新幹線品川駅の線路を「改造」、目的はリニア中央新幹線

東海道新幹線品川駅の線路を、橋のようにしていく(画像:JR東海)。

 東海道新幹線を毎日、いつも通り走らせながらその下に駅を造るにあたって登場したのが、ドイツ・KIROW(キロフ)社製の「鉄道クレーン」です。10億円の投資で1両を導入したといい、長さ19m、幅3m、高さ4m、重さは約130t(カウンターウエイト装着時)。

 まず線路からレールやバラスト(石)、枕木をとりのぞいたのち、この「鉄道クレーン」で仮設の橋げた(工事桁)を設置。

その上にレールを敷きます。

 かんたんにいえば、地面に敷かれていた東海道新幹線品川駅の線路を「橋」にする形。こうすることで列車を運行しつつ、その地下を掘れるようにするわけです。

品川駅はリニア中央新幹線「有数の難所」 地中に構造物を建築

 もちろん、その「橋」を支えないで地下を掘ると「橋」ごと沈むため、支えとなる構造物を地中に造ってから掘削していきます。

「鉄道クレーン」出現! 東海道新幹線品川駅の線路を「改造」、目的はリニア中央新幹線

東海道新幹線品川駅地下の掘削工事概要。まず地中に構造物を造り、それを「橋」などの支えにして掘っていく(画像:JR東海)。

 東海道新幹線の終電から始発までという短時間に(実質4時間半程度)、列車の運行へ影響を与えず行わねばならない、リニア中央新幹線の品川駅工事。標高3000m級の山岳地帯を貫く南アルプストンネルや、同じく駅の地下へ列車を運行しながらホームを設ける名古屋駅と並ぶ、リニア中央新幹線建設における“有数の難所”です。

 その工事の状況がリニア中央新幹線の開業時期や、地上を走る東海道新幹線の運行に影響を与える可能性も考えられるなか、JR東海 中央新幹線建設部 大羽宏和次長は「安全、着実に進めていきます」と話します。

「鉄道クレーン」による東海道新幹線品川駅での工事桁設置は今後、約3年かけて行われる計画。その後、地下の掘削やホーム設置などが進められ、リニア中央新幹線は2027年、品川~名古屋間で開業し、同区間を最短およそ40分で結ぶ予定です(現在の「のぞみ」は約90分)。

 なお、東京都内で中央新幹線の工事が報道公開されたのは今回、2017年11月24日(金)から25日(土)にかけて行われた「鉄道クレーン」が初です。