駐車する際にドアミラーをたたむ人とたたまない人がいます。多くのクルマでは、運転席のスイッチひとつでたためますが、そもそもこの電動格納式ドアミラーはなぜ作られたのでしょうか。
駐車する際にドアミラーをたたむ、という人が少なくありません。スイッチひとつでたためることもあり、インターネット上では「たたむのがマナー」という意見も見られます。
駐車場では、ドアミラーをたたんでいるクルマとそうでないクルマが見られる。写真はイメージ(2017年12月、中島洋平撮影)。
しかしながら、ドアミラー車でも、電動でたためる機構がない車種もあります。そもそもかつては、ボンネット付きの車両においては、ボンネットに据え付けられたフェンダーミラーの設置が法令で定められており、これが改正されドアミラーが解禁されたのは1983(昭和58)年のことです。
フェンダーミラーではいざ知らず、駐車場でドアミラーをたたむ習慣は、少なくともこのとき以降に広まったものと推測されます。一方、電動格納式ドアミラーは1984(昭和59)年、日産「ローレル」C32型に世界で初めて採用されたものです。これは当初から、駐車場でたたむことを目的としたものだったのでしょうか、開発した市光工業(神奈川県伊勢原市)に聞きました。
――電動格納式ドアミラーはどのような経緯で開発したのでしょうか?
駐車場や道路が狭いという日本固有の道路事情や自動車環境が背景にあります。電動による鏡面の角度調整機能はフェンダーミラーの時代からありましたが、フェンダーミラーからドアミラーへと移行してきたことで、ミラーが車体の外側へ露出する量が増えたことから、格納も自動でできる機構を作れないかと日産さんから打診を受け、共同で開発しました。
――現在は駐車場でミラーをたたむ人が多いですが、これは意図していたのでしょうか?
はい。
――いまでは電動格納式ドアミラーは多くの車両に備わっていますが、どのように普及していったのでしょうか?
日本車での採用を受け、メルセデス・ベンツやBMWなど欧州のメーカーが、まず日本向けの仕様として電動格納機構を装備し、欧州の高級車を中心に設定されるようになったことで世界へと広がりました。現在、電動格納式ドアミラーの普及率は日本では96%に達し、欧州でも高くなっています。加えて、日本や欧州では法令において、電動か手動かを問わずドアミラーをたためることとされています。
一方、北米や中国では、欧州ほど普及してはいませんが、やはり高級車を中心に電動格納式ドアミラーが設定されています。
――電動格納式ドアミラーの普及率が高い欧州でも、駐車時にミラーをたたむ習慣はあるのでしょうか?
もちろん場所にもよりますが、日本ほど駐車場が狭くはないので、駐車時にミラーをたたんでいるクルマも日本ほどは多くない印象です。
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ちなみに、さまざまな運転講習などを行っているJAF(日本自動車連盟)にも話を聞いたところ、「車庫入れなど運転のコツを講習してはいますが、ドアミラーをたたむことなど、『停めたあと』の行動などについては、基本的に指導する立場にはありません」とのことでした。
【画像】世界初の電動格納式ドアミラー搭載車

世界で初めて電動格納式ドアミラーが搭載された、1984年発売の日産「ローレル」C32型(画像:日産)。