急な坂道では、ドーナツ形の凹みがついたコンクリートの舗装が多くみられます。アスファルトではなくコンクリートである理由や、丸い凹みの作り方について施工業者に聞きました。
一般的な平地の道路の舗装はおなじみのアスファルトが多いですが、急な坂道や地下駐車場の傾斜した通路などではアスファルトではなくコンクリートを用いた舗装が多くみられます。また、急な坂道ではコンクリートの路面にドーナツ形の凹みがつけられている場所もあります。
ドーナツ形の凹みのついた、坂道のコンクリート舗装。写真はイメージ(佐藤 勝撮影)。
急坂で用いられるコンクリート製の舗装は「真空コンクリート舗装」という工法が使われているといいます。なぜ急な坂道ではこのような舗装が多いのでしょうか。道路の施工と舗装を手掛ける世紀東急工業(東京都港区)に聞きました。
――急な坂道でコンクリート舗装が多く用いられるのはどうしてでしょうか?
一般的なアスファルト舗装の施工では、材料を敷きならした後にローラという機械で材料を締め固めて仕上げるのですが、勾配が大きくなるとその締め固め作業が困難になるのです。そのため、勾配が急な坂道ではコンクリート舗装の採用が増えると考えられます。
――坂道のコンクリート舗装についている、円型の凹みは何のためのものでしょうか? また、円形であるのにも理由があるのでしょうか?
円形の凹みは歩行者や自動車、自転車などのため、すべり止めとして設置します。円形になっている理由ははっきりしませんが、昔から「O(オー)リング」と呼ばれるドーナツ形のゴム製リングを用いて施工しています。
コストはアスファルトより高い?――円形の凹みのついた舗装は、どのように施工しているのでしょうか?
まず所定の場所にコンクリートをならし、バイブレータと呼ばれる振動機を用いて締め固めを行い、左官職人が表面を平滑に仕上げます。
その後、専用のマットで表面を覆って真空状態にし、コンクリート中の水の一部を吸い取ると同時に、大気圧でコンクリートに圧力を加えて養生します。こうすることで養生時間を短縮するとともに、コンクリートの耐久性を増すことができます。養生後、表面仕上げを行って「Oリング」を取り除くと完成です。

坂道でのコンクリート舗装工事で、すべり止めの「Oリング」を配置している様子(画像:世紀東急工業)。
――坂道のコンクリート舗装は、アスファルト舗装と比べてコストや耐久性の違いはあるのでしょうか?
坂道に限りませんが、一般的にはコンクリート舗装の方がアスファルト舗装より高価といわれています。しかし、長期の耐久性はコンクリート舗装の方がアスファルト舗装よりも優れているといわれており、建設後のメンテナンスも含めたライフサイクルコストを考慮すると、一概にどちらが優位とはいえません。
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世紀東急工業によると、コンクリート舗装のすべり止めではドーナツ形の凹み以外にも、大きなはけでコンクリート表面に「ほうき目」と呼ばれる筋をつける方法や、専用の機械で「グルービング」と呼ばれる細い溝を一定間隔で設置する方法もあるといいます。「ほうき目」は坂道に限らず平地でも用いられますが、急な坂道で大きなすべり止め効果を持たせたい場所では「Oリング」や「グルービング」が採用されているそうです。
【写真】温度上昇を抑える舗装も 渋谷スクランブル交差点

特殊な塗料で路面温度上昇を抑える「遮熱性舗装」が施された、渋谷スクランブル交差点(画像:世紀東急工業)。