狭苦しい乗りもののなかで、できるだけ快適に過ごしたい……隣り合うふたつの席の指定券を購入してひとりで使えば、隣にほかの客が来ることがなくゆったりと過ごせそうに思えます。しかし、このようなきっぷの買い方は問題ないのでしょうか。

JRのルールでは「ひとり1席」

 鉄道に限らず乗りもので移動するときは、可能な限り広い場所で過ごしたいもの。利用者が少ないローカル線の普通列車で4人用ボックス席をひとりで占拠し、ゆったりとした気分で窓の外に広がる景色を堪能したり、駅弁を食べたりした経験のある方も多いのではないでしょうか。

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横1列に複数の席が並ぶ新幹線車両の車内。指定席のきっぷをひとりが複数枚購入しても利用できるのは1席だけだ(2018年3月、草町義和撮影)。

 これが利用者の多い新幹線や在来線特急だと、そうも行きません。とくに混雑する時期は隣の席もほかの客で埋まり、何となく狭苦しい気分になることもあります。

 そこで思いつくのが、隣り合うふたつの席を予約購入し、ひとりで利用すること。これなら隣の席にほかの客がやってくることなく、広々とした空間を確保することができそうです。

 しかし、JRの列車においては、ふたつ以上の席をひとりで利用することは、基本的にできません。

 JR東日本の旅客営業規則第147条第5項は「同一旅客は、同一区間に対して有効な2枚以上の同種の乗車券類を所持する場合は、当該乗車については、その1枚のみを使用することができる。同一旅客が、同一区間に対し有効な2枚以上の指定券を所持する場合についてまた同じ」と定めています。ほかのJR旅客5社の旅客営業規則も内容は同じです。

 たとえば、東京~博多間を走る「のぞみ1号」の新幹線指定席特急券2枚を購入。予約した席は16号車の1番D席と1番E席で、隣り合っているものとします。この2枚の指定席特急券を持って「のぞみ1号」に乗り込んだとしても、D席に座ればE席を指定した指定席特急券を使うことができず、E席に座ればD席の指定席特急券を使うことができません。

2人用や4人用の個室は?

 つまり、指定席のきっぷを2枚購入しても、ひとりで同時に使える指定席は1席だけ。残り1席は空いた状態になるため、ほかの客が車掌から指定席のきっぷを購入して座る可能性もあります。2枚購入は意味のない無駄な行為というわけです。

 そもそも、ひとりで指定席のきっぷを複数枚購入するということは、まだ乗れるはずなのに予約できない状態になるということ。予約できずに旅行自体をあきらめてしまう人もいるかもしれません。マナーの面でも問題がありますから、きっぷは必要な枚数だけ購入するようにしましょう。

 ただし、「1席」ではなく「1室」単位で販売される個室は例外的な扱いになります。たとえば、寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」に設けられている2人用B寝台個室(サンライズツイン)は、ひとりでも利用可能。サンライズツインを大人ひとりで利用する場合、ひとり分の乗車券と、ふたり分の特急券・B寝台券を購入すれば利用できます。

 グリーン車の個室も列車によって異なりますが、ほぼ同じ扱いです。東京と伊豆方面を結ぶ特急「スーパービュー踊り子」に設置されている4人用グリーン個室の場合、1室分のグリーン券と実際に乗車する人数分の特急券と乗車券を買えば、ひとりでも3人でも利用できます。

 ちなみに、中国など海外で運転されている寝台列車の多くは、1ベッド単位で販売していることが多いようです。2人用や4人用の個室寝台をひとりで利用すれば、ほかの客との相部屋になります。

【写真】海外では個室も隣のベッドにほかの客

「隣の席も買ってゆったりと」指定券の2枚購入はアリ? ダメ?

カザフスタンとウズベキスタンを結ぶ国際列車の4人用個室寝台。1ベッド単位で販売されているため、ほかの客と相部屋になることが多い(2010年5月、草町義和撮影)。

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