赤信号であるものの、青の矢印信号が全方向点灯しているというケースがあります。青信号にしてもよさそうですが、なぜこのような表示がなされるのでしょうか。
車両用信号機に青、黄、赤の灯火だけでなく、青い矢印信号が付属していることがあります。
赤信号のまま、3方向の矢印信号が点灯しているケース(画像:anoyo/123RF)。
矢印信号でよく見られるのは、信号が青から黄、赤に変わったあと、右折の矢印信号が点灯して右折車だけを通行させるといったケースでしょう。しかし、なかには赤信号から青に変わると思いきや、赤のままで「←」「↑」「→」の矢印信号が同時に点灯するといったケースもあります。
そもそも右折以外の矢印信号は、どのような場所に設けられるのでしょうか。交通管理に関する技術の研究開発を行う公益法人、日本交通管理技術協会(東京都新宿区)に聞きました。
――右折以外の矢印信号は、どのような場所に設けられるのでしょうか?
たとえば複数の車線がある幹線道路の交差点などです。一例をお話しますと、まず直進の矢印が出て、(それに並行する)歩行者用信号も青になります。その後、左折や右折の矢印が出る際には、歩行者用が赤になり、これによって歩行者と車両の事故を防いでいるのです。方向別の交通量や歩行者の数などを考慮して、車線ごとの処理をしたい場合に、青信号を出さずに矢印信号を順次点灯していくケースがあります。
一方、このような幹線道路と交わる細い道路側などに、赤信号からいったん全方向の矢印信号が出て、それが消えたあとで青信号が表示されるといったケースもあります。
「全方向点灯」とはいえ、主眼は「右」!――そのような場所では、なぜ全方向の矢印を点灯させるのでしょうか?
これは、幹線道路へ右折するクルマが多い場所などで、それらを先に通すことに主眼が置かれています。
――でしたら、矢印ではなく時差式の青信号としてもよい気がするのですが……?
ドライバーは青信号になると対向車や歩行者が来ると思ってしまいがちですので、仮に対向側が赤のままだったとしても、流れを阻害する恐れがあります。その点、矢印信号は車両専用の信号ですから、対向車が来ないと思わせることができるのです。もし自車側だけでなく対向側も幹線道路へ右折するクルマが多い場合は、どちらも右の矢印のみが点灯されるケースがあります。
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日本交通管理技術協会によると、このような矢印信号は東京などの都市部では多いものの、地方ではそれほど多くないのではないか、といいます。灯火の数が多いため、コストも高いそうです。一方で、全国的に事故件数が減少していることから、このような安全設備への予算も削減される傾向にあると話します。
ちなみに、右の矢印信号は、以前は転回(Uターン)が禁止されていましたが、2012(平成24)年4月に道路交通法施行規則が改正され、これが可能になっています。ただし転回禁止の標識がある場所ではNGです。
【写真】いまやレア! 黄色の矢印信号

黄色の矢印信号は路面電車用。