運転中に停止する際、ブレーキを数回にわけて踏むことを教習で習った人もいるかもしれません。「ポンピングブレーキ」とも呼ばれますが、これはすでに「意味をなさない」「むしろ危険」という意見もあります。
運転中にブレーキを踏んで停まる動作として、ブレーキペダルを数回にわけて踏むことを教習で習ったという人がいるかもしれません。「ポンピングブレーキ」、あるいは「断続ブレーキ」などという名で記憶している人もいるようです。
ブレーキランプの点灯イメージ(画像:写真AC)。
しかし、この動作については「必要ない」といった意見もあります。東京都世田谷区の自動車教習所、フジドライビングスクールの田中さんも、むしろ危険であり、しないように教えているそうです。詳しく話を聞きました。
――そもそもポンピングブレーキにはどのような意味があるのでしょうか?
ABS(アンチロックブレーキシステム)がなかった時代、ブレーキを踏み込んでタイヤがロックし滑ってしまうことなどを防ぐため、数回にわけて踏むようにしていたものです。また、ブレーキランプの点滅で後続車に制動を知らせるといった効果もいわれます。
――なぜ現在は「危険」でもあるのでしょうか?
現在のクルマではABSが自動的にポンピングブレーキと同じ動作を行い、タイヤのすべりを防ぎます。後続車に知らせるということについても、かつて尾灯とブレーキランプ、ウインカーをひとつのランプで担っていた場合においては点滅させることに効果があったかもしれませんが、いまはブレーキランプも大きくなっていますし、渋滞時などでは全車がこの動作をしないと意味がないわけです。
むしろ、ブレーキペダルから足を離すのが癖になり、低速時にアクセルとブレーキの踏み間違いが起こりやすくなる原因となります。
ブレーキ、どうかけるのがベスト?――では、どのようにブレーキをかけるのがよいのでしょうか?
そっと、長くブレーキをかけることです。
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公安委員会が道路交通法の概念をわかりやすくまとめた「交通の方法に関する教則」には、「ブレーキの掛け方」という項目があります。そこでは、「最初はできるだけ軽く踏み込みましよう。それから必要な強さまで徐々に踏み込んでいきます」「ブレーキは数回に分けて使いましよう。この方法は、道路が滑りやすい状態のときには、とりわけ効果的です。また、数回に分けて使えば、ブレーキ灯が点滅し、後車への合図となつて追突事故防止に役立ちます」などとされています。
田中さんによると、教習の参考となるこの「教則」をはじめ、各種の運転教本などに記載された「断続的にブレーキをかける」といった内容が、人によって解釈が異なってくるとのこと。「道路交通法ができた昭和30年代には、ポンピングブレーキを行うことでブレーキ圧を高め、強く踏めるといったメリットもあったでしょう。しかしいまはほとんど意味をなしません」と話します。
一方で前出の「教則」では、緊急時以外で急ブレーキをかけてはいけないとしつつ、「アンチロックブレーキシステム(中略)を備えた自動車で急ブレーキを掛ける場合には、システムを作動させるために、一気に強く踏み込み、そのまま踏み込み続けることが必要です」とあり、昨今のクルマ事情も反映されています。
ちなみに、「教則」における「ブレーキの掛け方」ではさらに、「むやみにブレーキを使わず、なるべくアクセルの操作で徐々に速度を落としてから止まるようにしましよう」としてます。田中さんによると、「ブレーキをなるべく踏まないことが上手な運転だと勘違いしている人もいますが、これこそ危険です。

自転車用テールライト「Rayo」。ブレーキをかけるとスピードダウンを感知し点滅、ブレーキランプとして後方に注意を促す(画像:ヤベツジャパン)。