クルマのフロントガラスやミラー類に施工するガラスコート剤には大きくわけて、「撥水」と「親水」の2タイプがあります。それぞれメリット・デメリットがありますが、近年は新しく「滑水」タイプも登場。
車のフロントガラスやミラー類のコーティング剤には、大きくわけて「撥水」と「親水」の2タイプがあります。
雨で視界が悪くなったフロントガラスのイメージ(画像:Chidchanok Rittichaisamran/123RF)。
それぞれ、どのような違いがあるのでしょうか。カー用品メーカーのカーメイト(東京都豊島区)に聞きました。
――それぞれどう違うのでしょうか?
撥水剤は雨粒を水玉にし、ガラスとの接点を減らすことにより転がりやすくします。ガラスコート剤市場においてもこのタイプがメインでしょう。一方、親水剤は雨粒を水膜にすることにより、ガラスへ均一な膜を貼らせます。
――どう選べばよいのでしょうか?
撥水コートをしたガラスでは、水玉が風圧を受けるときれいに飛んでいきますので、おもに風の影響を受けやすいフロントガラスにおすすめです。一方で親水剤は、水膜越しに対象物を見ることになりますので、多少は像が歪むものの、雨が付着している状態よりは見やすくなるというものです。風の影響を受けにくいサイドミラーやサイドガラス、リアガラスなどに向いています。
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風圧を受けると雨が飛んでいく撥水剤、水がべたっと広がり膜をつくる親水剤ですが、裏を返せば、撥水剤は風がなければ雨が飛ばず、親水剤は風の影響を受けると像が歪みやすくなるというデメリットもあるようです。
カーメイトのガラスコート剤としては、親水タイプのほか、「滑水」タイプの売れ行きが好調だといいます。「滑水」タイプとは、どのようなものなのでしょうか。
「基本的なメカニズムは撥水剤と同じですが、水玉状になった雨とガラスとの接点に『滑り』の効果を足したものが滑水剤です。これにより、風圧を受けなければ雨が飛ばない撥水剤に対し、低速走行時や、極論を言えば停車時でも、雨粒の自重で雨が滑って落ちていきます。もちろん高速時には撥水剤と同じ飛びをします」(カーメイト)
カーメイトによると、滑水剤はスプレー後にワイパーが必要なこともあり、フロントガラスへの使用がおすすめとのこと。ただし、滑水剤は現在のところ「3か月」「1年」といった耐久性のある商品があまりないそうです。「雨の降っている日にだけスプレーするような方には滑水剤が、耐久性重視でしたら撥水剤がよいでしょう」と話します。

撥水コーティング(左)と滑水コーティングの比較。滑水コーティングは停車時でも水滴が流れていく(画像:カーメイト)。
ちなみに、カーメイトはサイドミラー用として、「超撥水」タイプもすすめています。これは、水滴とガラスとの接点を減らす(接触角150度以上)ことで、「雨が全く付着しない」ものだそうです。ただし被膜がもろく、触ると落ちてしまうこと、また仕上がりが少し白っぽくなることから、サイドミラーやサイドガラスの狭い範囲で使用するのがよいといいます。

「超親水」コーティングをしたリアガラスの視界イメージ。水膜越しだがクリアな視界が得られる(画像:カーメイト)。