およそ950万人が住む東京23区には、多くの人でにぎわっている駅が多数ありますが、一方で利用客が少ない駅も存在します。今回はそんな閑散駅を5つ紹介。

世界有数のターミナル駅の隣りや、激変を遂げた駅などが登場します。

周りは住宅、周りは川…様々な閑散駅

 東京23区にはおよそ950万人もの人々が住んでいます。そのなかにある駅は、新宿駅を筆頭にいずれの駅前も人と人が行き交う雑踏を思い浮かべるかもしれません。しかしなかには、利用客が少ない駅も少なからずあります。

 東京都が公開している「東京都統計年鑑」から最新の2016年度のデータに基づき、23区内で乗車人員が少ない「閑散駅」トップ10のなかから5駅を訪れてみました。なお、都電荒川線や東急世田谷線といった軌道路線(路面電車)は省いています。

【第9位】亀戸水神駅:1日平均乗車人員1973人(東武亀戸線)

東京23区の「閑散駅」5選 利用者が少ないのにはワケがある?...の画像はこちら >>

亀戸水神駅。改札口から反対側のホームへは構内踏切を渡る(2019年3月、河嶌太郎撮影)。

 まず紹介するのは、江東区亀戸にある東武亀戸線の亀戸水神駅です。マンションが建ち並ぶ住宅街にある駅です。にもかかわらず、この駅の1日平均乗車人員は1973人しかいません。なぜでしょうか。

 そう思い、JR総武線に接続する隣の亀戸駅に歩いて向かうと、なんと8分ほどで着いてしまいました。ここに“マンション街の秘境駅”たる理由があるように思います。都心方面に向かう場合、150円払って電車を待って1駅間だけ乗るのと、総武線の亀戸駅にそのまま歩くのもそこまで変わらないというわけですね。一方、反対方向は多くが東武スカイツリーライン(伊勢崎線)に接続する曳舟行きで、北千住方面へ向かう際は便利かもしれませんが、使う機会は限られそうです。

【第8位】足立小台駅:1日平均乗車人員1907人(日暮里・舎人ライナー)

 続いては、足立区小台にある日暮里・舎人ライナーの足立小台駅です。荒川と隅田川に挟まれた細い陸地にある駅で、駅付近には家電量販店やホームセンター、スーパー、マンションなどがありますが、そもそも陸地の幅が260mほどしかないため、土地が少ない状況。1日あたりの乗車人員は1907人です。

新宿や羽田空港から近い所にも閑散駅が【第5位】南新宿駅:1日平均乗車人員1649人(小田急小田原線)

東京23区の「閑散駅」5選 利用者が少ないのにはワケがある? 1位の駅はいま激変!

南新宿駅(2019年3月、河嶌太郎撮影)。

 1日平均173万人が乗車する世界最大のターミナル駅、新宿。そこからわずか700mほど離れた場所に、都心の“秘境駅”こと小田急線の南新宿駅があります。駅の改札はひとつだけで、駅前のメインストリートも幅2m半ほどしかない一方通行の道。駅周辺の目ぼしい施設はコンビニエンスストアが1軒あるのみで、ほかは空き地を利用したコインパーキングが目立ちます。

遠くには高層ビルも見えますが、そこから歩いてくる人の数はわずか。「ここは本当に新宿からひと駅の場所なのか」という感覚に陥ります。

 ラッシュ時でも、1時間に片方で各駅停車だけが7本ほどしか停まりません。

【第2位】整備場駅:1日平均乗車人員1011人(東京モノレール羽田空港線)

 都心から一気に、神奈川県境近くの大田区羽田空港一丁目にある東京モノレールの整備場駅へとやって来ました。駅を出てまず目に入るのが平屋の廃墟です。整備場区域に入ろうとする車両の監視小屋と思われますが、いまは使われておらず、ガラスが割れ、錆びています。

 ほかにも駅周辺には航空会社の建物が建ち並んでいるものの、老朽化している印象も否めません。というのも、その中枢は3駅隣の新整備場駅に移っているからです。かつてはこの整備場駅の隣の羽田駅(移転し現在は天空橋駅)に空港の旅客ターミナルが直結していましたが、1993(平成5)年、ターミナルが沖合に移り、整備拠点もあわせて移った経緯があります。

 整備場駅の1日平均乗車人員は1011人で、23区閑散駅ランキングでは2位。新整備場駅の1日平均乗車人員は1775人で、6位です。

2016年度の利用最少駅はその後、激変!【第1位】市場前駅:1日平均乗車人員781人(ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線)

東京23区の「閑散駅」5選 利用者が少ないのにはワケがある? 1位の駅はいま激変!

市場前駅(2019年3月、河嶌太郎撮影)。

東京23区の「閑散駅」5選 利用者が少ないのにはワケがある? 1位の駅はいま激変!

2018年9月に開場した豊洲市場(2019年3月、河嶌太郎撮影)。
東京23区の「閑散駅」5選 利用者が少ないのにはワケがある? 1位の駅はいま激変!

市場前駅改札付近。外国人の利用者も多い(2019年3月、河嶌太郎撮影)。

 さて、東京23区閑散駅ランキングの1位に輝いたのが、江東区豊洲にある、ゆりかもめの市場前駅です。1日平均乗車人員も、2位の整備場駅より200人以上少ない781人。整備場駅ですら“廃墟感”があったので、いったいどんなところなのかと胸を高鳴らせながらゆりかもめに乗り換えます。しかし、いざ市場前駅に着くと、大勢の人が降りていくではありませんか。

 理由はほかでもない、2018年9月に開場した豊洲市場によるものです。駅名の「市場前」というのもこれを見込んで2006(平成18)年に付けられたものですが、開業13年目にしてついに実態が伴った格好です。改札は人がひっきりなしに行き交っています。外国人も少なくありません。手旗を持った添乗員の姿もあり、新しい一大観光地に様変わりしていることがうかがえます。

 2016年度の統計では、この市場前駅が23区閑散駅の1位になりましたが、2018年度の統計以降、閑散駅ランキングに異変が起こることは間違いないでしょう。整備場前駅が1位に繰り上がりそうです。

 なお、ゆりかもめの駅には閑散駅が多く、トップ10には3位に日の出駅(1121人)、4位に船の科学館駅(現・東京国際クルーズターミナル駅、1622人)、7位に有明テニスの森(1816人)、10位に新豊洲駅(2060人)がランクインしています。

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