観光客で電車やバスが混雑し、「地域住民がなかなか乗れない」という問題を抱える鎌倉と京都。大規模な増発などの抜本的な改革は難しいものの、「住民のため」の混雑対策が行われています。
神奈川県鎌倉市が2019年のゴールデンウイークに、江ノ島電鉄線の沿線住民に向けた「移動円滑化」のための社会実験を行います。
観光客の増加にともない、江ノ電では混雑が顕在化しています。今回の実験は、市から発行される「江ノ電沿線住民等証明書」を持った人を、鎌倉駅の外まで乗車待ちの列ができた場合に、駅構内へ優先的に入場させるというもの。5月3日(金)から5日(日)のあいだ、10時から16時まで実施されます。これについて、鎌倉市交通政策課に詳しく話を聞きました。
江ノ電の鎌倉駅(画像:Law Alan/123RF)
――なぜ実験を行うのでしょうか?
江ノ電が年間で最も混むのがゴールデンウイークで、この時期は鎌倉駅で乗車を待つ人の列が駅の外まで伸びることがあります。そこで、今回のような実験を2017年、2018年のGWに行い、待ち時間が20分ほど短縮されたこともあります。
――住民を優先的に乗車させるということなのでしょうか?
いえ、「優先乗車」ではなく、あくまで鎌倉駅への「優先入場」です。証明書をお持ちの方は、駅構外の列に並ぶことなく構内へ入場いただけますが、構内の列の最後尾についていただく形となります。
――証明書の発行枚数はどのくらいでしょうか?
2018年は1471枚、2019年は、発行最終日のきょう(4月26日)時点でおよそ1500枚です(鎌倉駅や市役所で運転免許証などを提示のうえ発行される)。なお、2018年以前に発行した証明書を2019年の実験で使うことはできません。
――どのような声がありますでしょうか?
アンケート結果では、「今後も実施してほしい」という意見が9割以上、実験について「とても有意義」「有意義」という意見が約8割でした。
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なお、実験が行われる3日間は、江ノ電の1日乗車券「のりおりくん」や「鎌倉・江の島アフタヌーンパス」の販売も中止されます。鎌倉市交通政策課によると、単線の江ノ電では、日中12分間隔の現状から増発が困難で、抜本的な混雑緩和は見いだせていないとのこと。今後の施策について、江ノ電とさらに協議していくそうです。
京都市バスでは乗り場を分離 「逆方向バス」への誘導も京都市でも、観光客の増加にともない市営バスの混雑が顕在化しています。その対策として、これまで一部の系統で、円滑な乗降を図るため「後ろ乗り・前降り」を「前乗り・後ろ降り」に変更したり、市営地下鉄の利用を図るべく、バス・地下鉄における1日乗車券類の価格を見直したりしてきました。
さらに2019年3月の土休日には、金閣寺(鹿苑寺)に近い金閣寺道バス停で、通常のバス停とは別に観光客向けの乗り場を設ける取り組みを実施。ゴールデンウイークも、4月27日(土)から29日(月)と、5月3日(金)から5日(日)の6日間にわたり行うといいます。
「観光客のご利用が多い京都駅方面行き観光系統(急行バス)の乗り場を別に設け、金閣寺から出てこられたお客様を、係員がそこへ誘導します。通常のバス停を住民の方向けとして、すみ分けを図る目的です。ひとつのバス停ではどうしても乗車待ちの列がのびてしまい、1台では乗り切れないなど、30分くらいお待ちいただくことがありました」(京都市交通局自動車部)
京都駅方面行きのバスは混雑する一方、反対方向のバスは金閣寺道で多くの人が降りるため空いていることから、それに乗って北大路バスターミナルまで行き、地下鉄烏丸線(北大路駅)に乗り換えてもらうための取り組みも行っているそうです。
「GWの6日間は、金閣寺道でバスを待つ方に乗車証明書をお配りします。

京都市営バス205号系統。金閣寺道バス停に停車する系統のひとつ(画像:Sanga Park/123RF)
このように、バス利用者へ地下鉄の乗車証明書を配る取り組みは、祇園や八坂神社などの観光地に近い東山通のバス停でも実施。京都駅と反対方向のバスに乗り、地下鉄東西線に乗り換えて京都駅へ向かえるようにしているそうです(東山駅から京都駅まで無料)。
京都市交通局ではこのほか、GWには観光系統のバスなどを増発するそうですが、運転手不足や車両不足などから、恒常的な増発は難しいとのこと。ただ、バスは観光の足であり、市民の足であることから、今後も乗車待ち時間の緩和などに取り組んでいくそうです。
【画像】47年ぶりの変更 京都市バスの乗降方式

京都市営バスは1972年から「後ろ乗り・前降り」だったが、2019年3月より、100号系統などが「前乗り・後ろ降り」に変更された(画像:京都市交通局)。