N700系電車は東海道・山陽・九州新幹線の新幹線車両。500系より遅い700系をベースにしつつ、最高速度は500系と同じ300km/hにアップしました。
N700系電車は東海道・山陽新幹線の現在の「主役」。2005(平成17)年、700系電車の「次」(Next)を担う「新型」(New)車両として先行試作車が開発されました。いまは九州新幹線でも運転されています。
東海道・山陽新幹線に導入された16両編成のN700系(2011年10月、恵 知仁撮影)。
700系をベースにした車両といえますが、ノーズ(先頭車の先端から後方に向けて車体が大きくなっていく部分)は大きく変わり、「エアロ・ダブルウィング」という、鳥が両翼を大きく広げたような形になりました。営業運転での最高速度は、東海道新幹線では700系と同じ270km/hでしたが、山陽新幹線では700系より15km/h速い300km/hで、500系と同じになりました。
スピードアップすると騒音や振動が大きくなるため、500系は長いノーズを採用したり、車体を円筒形にしたりして騒音や振動を抑えましたが、その分客室が狭くなりました。N700系では「遺伝的アルゴリズム」という解析手法を用いるなどして車体の形状を研究。その結果、ノーズの短いエアロ・ダブルウィングを採用するなどして、客室を狭くすることなく騒音や振動を抑えることができ、最高速度を再び300km/hに引き上げることができました。
それだけではありません。
サービス面では時代の変化に対応。コンセントはグリーン車全席と普通車の窓側、最前列、最後列の各席に設置され、インターネット接続サービスの提供にも対応しました。また、セキュリティ対策として防犯カメラを設置。全車禁煙になり、一部の車両のみ喫煙ルームが設けられました。
見た目の違いは「A」の大きさN700系は東海道・山陽新幹線用の16両編成が2007(平成19)年にデビュー。当初は「のぞみ」を中心に使われ、のちに「ひかり」や「こだま」でも使われるように。2009(平成21)年に先行試作車を使って行われた高速試験では332km/hを記録しました。

山陽・九州新幹線を直通する8両編成のN700系(2019年5月、草町義和撮影)。
2011(平成23)年に九州新幹線が全線開業すると、山陽・九州新幹線用の8両編成がデビュー。
2013(平成25)年にはN700系の改良型「N700A」が東海道・山陽新幹線でデビュー。台車の振動を検知するシステムや、自動的に一定の速度で走り続ける装置を搭載し、東海道新幹線での最高速度は285km/hに向上しました。従来の東海道・山陽新幹線用N700系もN700Aに改造されましたが、改造車は台車振動検知システムを搭載していません。
外から見た限りでは、最初からN700Aとして製造された車両と、従来のN700系をN700Aに改造した車両の姿はほとんど同じ。ただ、側面のロゴマークはデザインが異なり、「最初からN700A」はアルファベットの「A」が大きく描かれているのに対し、「改造N700A」は小さな「A」を追加しています。
2019年4月1日時点の車両数は、東海道・山陽新幹線用が2544両、山陽・九州新幹線用が152両。東海道新幹線の列車はN700Aにほぼ統一されました。2020年にはN700Aの改良型となるN700Sが東海道・山陽新幹線に導入される予定。いまは確認試験車による走行試験が行われています。
ちなみに、N700系の先行試作車もN700Aに改造されましたが、営業運転を一度も行わないまま引退。2019年7月から先頭車を含む3両がリニア・鉄道館(名古屋市港区)で一般公開されています。