東京から飛行機で約4時間の近さにある台湾は、日本と同じく鉄道が日常的な乗りもので、鉄道の旅を楽しむ人も少なくありません。さらに新幹線や駅弁など、日本と共通している点もたくさんあります。
日本から飛行機で台湾の台北に向かうと、台北近郊にある桃園空港、もしくは台北駅からほど近い松山空港のどちらかに到着します。いずれの空港も「MRT」と呼ばれる都市鉄道が接続しており、空港から台北の中心まで鉄道で移動できます。
JR九州の885系電車をベースとした台湾鉄路管理局のTEMU1000型電車「太魯閣号」(村上悠太撮影)。
その際にまず手に入れたいのが「悠遊カード(EasyCard)」です。現地の言葉で「ヨウヨウカー」と読むこのICカードは、日本の交通系ICカード「Suica」と同じように鉄道はもちろん、バスやコンビニ、ロープウェイなど台湾内の様々なシーンでキャッシュレス支払いができます。
さらに、MRTを含め、悠遊カードで決済すると割引になる交通機関もあるため、お得に旅ができます。悠遊カードは台北に限らず台湾全域で使用できるのもポイントです。チャージもMRTの駅にある券売機やチャージ専用の機械をはじめ、駅の窓口、街のコンビニなどいたる所でできます。
ちなみに、新幹線以外の台湾鉄路管理局(台鉄)が一定期間乗り放題になる「TR-PASS」も発売されていますが、台鉄は元々運賃が安価なため、仮に3日間有効の「TR-PASS」(1800新台湾ドル)を購入したとしても1日中かなりの距離を乗らないと元を取れないことから、一般的な観光であれば「悠遊カード」での乗車で十分です。
改札、新幹線…いろいろ似ている台湾の鉄道自動改札機も日本と同じ形状のものが使われていることも多く、利用方法も変わりません。ただし紙のきっぷの場合、出札時は回収されずに改札機から出てきます。

日本の新幹線700系電車をベースにした台湾高速鉄道の700T型電車(村上悠太撮影)。
台湾は九州とほぼ同じ大きさで、九州同様に西側に台湾を南北に走る「台湾新幹線」(台湾高速鉄道、高鉄)が走っています。ご存じの人も多いと思いますが、この台湾新幹線には日本の新幹線700系電車をベースにした700T型電車が走っており、外見はもちろん車内も700系にそっくりです。
台湾は新幹線と在来線とで事業者が異なります。在来線を運行しているのは「台鉄」の愛称で呼ばれている台湾鉄路管理局です。そのため、台北駅など一部の駅を除き、台鉄の駅と新幹線の駅が同じ駅名でも別々の駅で、かつ距離も離れている場合も多く、また逆に、新幹線の台中駅が接続する在来線は新烏日駅と場所が同じでも駅名が異なるケースもあるため注意が必要です。
台湾新幹線には外国人専用のフリーパスが発売されており、台北と反対側の終点、左営を1往復するだけで元が取れるのでこちらは「TR PASS」に比べて、比較的元が取りやすいのが特徴です。利用日の前日までにウェブサイトで購入し、当日バウチャー券とパスポートを持って駅窓口でフリーパスと引き換えて購入します。
海の美しい本線とロマンあるローカル線さて、台湾の駅名を見ていると、台北駅の近隣には松山駅や板橋駅、全域に目を向けると豊田や池上、東海、岡山、武田、追分など日本でも見たことがあるような名前が見つかります。台湾と日本は同じ漢字文化圏ですが、それゆえにこうした「同名駅」が32駅も存在しています。ただし発音は異なり、松山なら「ソンシャン」、板橋は「バンチャオ」ですが、同駅構内には日本と同名駅であることをアピールした施設や写真が飾られています。
ほかにも、台湾の鉄道で楽しみなのが駅弁の存在。ターミナルや中規模の駅であれば大抵販売されており、しかも日本の駅弁よりかなりリーズナブル。さらにうれしいのがどの駅弁も温かい状態で売られていることです。駅弁を頬張りつつ、台湾の車窓を楽しむといった旅もおすすめです。

集集線(村上悠太撮影)。
台鉄は台湾全域をぐるりと一周するように線路が敷かれており、そこから6本の支線が走っています。環状している路線の名称はいくつかに分かれていますが、特急列車や貨物列車などが頻繁に行き交う、いわば「本線」のような存在です。
こちらの路線のハイライトはなんといっても美しい海。特に台湾の東側と南側を走る宜蘭線、南廻線から眺める青い海はまさに絶景です。先ほどまでに紹介してきた様々なタイプの列車も行き交うので、台湾鉄道の旅を存分に楽しめるエリアでもあります。
一方で、ディーゼル列車がゆっくり走るローカル線も魅力満点。なかでも平渓線と集集線は特に人気の高い台湾の2大ローカル線です。
一方、台中からやや南に位置する集集線は、山と緑にあふれた路線で平渓線に比べてよりゆったりとした雰囲気が魅力の路線です。それぞれ1日ずつ回れば存分に魅力を味わえるます。性格の異なるふたつのローカル線を乗り比べするのもきっと楽しいはずです。
日本の583系に台北で再会!かつて台北には、台鉄の巨大な車両整備工場「台北機廠」がありました。現在は工場が移転し、機能が停止していますが、ここを整備、改築し、鉄道博物館を造る計画が進行しています。オープンはまだ先の予定ですが、いまでもこの旧工場の見学が可能です。
見学はウェブサイトからの事前申し込み制で、特定日のみ定員制で公開されています。現地には日本語のガイドブックもあり、より詳しく見学することも可能です。そしてこの施設にはなんとJR東日本から贈られた寝台電車の583系が展示されています。

日本との同名駅のスタンプ(村上悠太撮影)。
最後に日本ともうひとつ似ている点を紹介しましょう。実は台湾の駅には「駅スタンプ」が設置されていることがほとんどで、なかにはデザインが工夫されているものも少なくありません。駅窓口に保管されていることが多いため、見当たらなかったら「紀念章(ツィーネンツァン)」と言ってスタンプを貸してもらいましょう。
現在、日本と同名の駅では特別なスタンプも設置されており、日本の台湾観光協会による専用のスタンプ帳も用意されています。台湾を鉄道で巡る際はスタンプを集めるのもいいかもしれません。