航空自衛隊におけるF-4「ファントムII」戦闘機の運用が、あと1年ほどで終わりを迎えます。百里基地がその実働基地として比較的有名ですが、岐阜基地でも運用されており、しかもそこにしかない機体もあります。

百里だけじゃない 岐阜でも現役の「ファントムII」

 2020年3月9日(月)、茨城県にある百里基地で、航空自衛隊偵察航空隊における最後の飛行訓練が行われました。この部隊はF-4「ファントムII」戦闘機の偵察型であるRF-4EおよびRF-4EJ(通称「レコンファントム」)を運用する航空自衛隊唯一の部隊です。

 この部隊は3月末に廃止が予定されているため、4月以降、日本でF-4「ファントムII」を運用する実戦飛行隊は、同じく百里基地に所在する第301飛行隊が唯一になります。

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ドラッグシュートを引いて岐阜基地の滑走路に着陸した未改修型のF-4EJ「ファントムII」。このタイプは現在、岐阜基地でしか運用されていない(柘植優介撮影)。

 しかし、実は岐阜基地においてもF-4「ファントムII」が現役で飛んでいます。

 岐阜基地で運用しているのは「飛行開発実験団」という部隊です。ここは航空自衛隊のなかで、航空機や装備品の試験及び開発を担当するところで、さまざまなテストを実施するために、F-4「ファントムII」を含め航空自衛隊が装備する主要な機体を少数ずつ運用しています。

 なお、百里基地の第301飛行隊はスクランブルなどの実任務についているため、運用するすべての機体が性能向上型である「F-4EJ改」なのに対し、岐阜基地の飛行開発実験団はF-4EJ改とともに、その未改修型である航空自衛隊導入当初の「F-4EJ」も保有しています。

 未改修型のF-4EJ「ファントムII」は一見すると、大きな差異はありません。しかし、主翼の端や垂直尾翼の上端にレーダー警戒装置J/APR-6を装備するなどの違いがあります。

 飛行可能なオリジナルのF-4EJは2020年3月現在、岐阜基地にしかありません。

50年前の姿を今に残す岐阜のオリジナル「ファントム」

 航空自衛隊のF-4「ファントムII」戦闘機は2020年度末、すなわち2021年3月末に全機退役する予定のため、岐阜基地の機体も百里基地の機体と同様、あと1年ほどで飛行を終えます。

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F-4EJ(右、上写真右)とF-4EJ改(左、上写真左)、丸で囲んだ部分が外見での識別点。赤丸と青丸がレーダー警戒装置の有無、黄丸がアンテナ枚数の相違(柘植優介撮影)。

 なお2020年は、防衛省のスケジュールでは航空観閲式を実施する年です。「航空観閲式」は航空自衛隊が実施する、諸外国の観兵式に相当する行事で、2020年も例年どおり、百里基地を会場に行われる予定です。これにともない、百里基地航空祭は開催されません。

 一方、岐阜基地は2020年も例年どおり航空祭を実施する予定です。そのため、航空祭でF-4「ファントムII」の飛行する姿を間近で見るのであれば、2020年は岐阜基地が向いているといえるでしょう。

 もしかしたら、オリジナルのF-4EJと改良型のF-4EJ改のコラボレーションが見られるかもしれません。