東京の地下鉄13路線にはラインカラーがあり、案内などにも使われています。乗り換え時などに目安となり便利ですが、色の由来は何でしょうか。
地下鉄の駅で乗り換えをするときに、周囲を見ると様々な情報があります。不慣れな人は、案内サインや構内図をじっくりと確認するかもしれませんが、慣れている人であれば、案内サインの示す「色」に導かれるままに進むだけで、何となく乗り換えができてしまうでしょう。
東京の地下鉄においては、銀座線はオレンジ色、丸ノ内線は赤色など、13路線にそれぞれの「ラインカラー」が設定されており、案内サインや路線図などすべての案内に使われています。
近年では、ラインカラーは案内の枠を越えて、路線のシンボルや会社のシンボルとしても使われるようになっており、たとえば東京メトロは近年、ラインカラーを前面に打ち出したグッズの製作や、プロモーションの展開を行っています。
そうしたなおなじみの、東京の地下鉄13路線のラインカラーは、そもそもどのような経緯で決まったのでしょうか。
東京の地下鉄路線図。全13路線にラインカラーがある(画像:PAKUTASO)。
「ラインカラー」は、開業当初からあったものではありません。営団地下鉄(現・東京メトロ)と都営地下鉄が、共通のラインカラーという考え方を導入したのは、いまから50年前、1970(昭和45)年のことです。
当時は銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、都営1号線(浅草線)の5路線に加え、1968(昭和43)年に都営6号線(三田線)、1969(昭和44)年に千代田線が開業したばかり。その後も続々と地下鉄の延伸、開業が予定されていました。
地下鉄ネットワークの拡大により、乗換駅が増え、駅の構造も複雑化していきます。そこで各路線にラインカラーを定め、これを案内サインや広報物などに広く利用することで、誰もが迷わずに地下鉄を利用できるようにしようと考えたのです。色の選定にあたって、基準とされたのが各路線の車体色でした。

東西線と一時期 千代田線で使われた5000系(2003年9月、草町義和撮影)。
●東京の地下鉄のラインカラー
・1号線(浅草線):ローズ
・2号線(日比谷線):シルバー
・3号線(銀座線):オレンジ
・4号線(丸ノ内線):レッド
・5号線(東西線):スカイ
・6号線(三田線):ブルー
・7号線(南北線):エメラルド
・8号線(有楽町線):ゴールド
・9号線(千代田線):グリーン
・10号線(新宿線):リーフ
・11号線(半蔵門線):パープル
・12号線(大江戸線):マゼンダ
・13号線(副都心線):ブラウン
なお、7号線、8号線、10号線、11号線は1970(昭和45)年当時、未開業であり、12号線と13号線は1985(昭和60)年、計画追加にともないラインカラーも追加指定されました。
営団地下鉄の場合は、銀座線はオレンジ色の電車、丸ノ内線は赤色の電車、日比谷線は無塗装・無装飾のシルバーの電車が走っていたこと、東西線の電車は青(ハイライトブルー)、千代田線の電車は緑(エメラルドグリーン)の帯をまとっていたことから、路線をイメージする色が、ある程度明確になっていたのですが、問題は都営地下鉄の扱いでした。
ラインカラーを基にサインシステムへ 発祥は大手町駅都営地下鉄は統一したラインカラーが決定する以前、浅草線には緑、三田線には赤を独自のラインカラーとして割り当てていたそうですが、当時の路線図を見ると、必ずしもこの色で表現されているわけではありません。車体は、浅草線が上半分はクリーム、下半分は赤で、三田線はステンレスの車体に赤い帯を巻いているなど、明確な基準や統一は図られていませんでした。

2018年に運転を開始した浅草線の5500形。ラインカラーの「ローズ」は新型車両にも受け継がれている(2018年6月、恵 知仁撮影)。
そこで、それぞれの運営母体である帝都高速度交通営団と東京都が協議した結果、赤は丸ノ内線が使うことになり、浅草線はローズ(ピンク)、三田線は青がラインカラーになります。逆に営団地下鉄では、東西線はスカイ(空色、水色)、千代田線は通常のグリーンが割り当てられ、エメラルドグリーンは将来建設予定の7号線(南北線)で使用することになりました。
その後、1973(昭和48)年に大手町駅でサインシステムの導入が試行され、翌年から営団地下鉄の全駅に展開されることになります。これ以降、リング型の路線シンボルが定着するようになりました。
こうして案内サインや路線図などに広く使われるようになったことで、ラインカラーは事業者の垣根を越えたオフィシャルなシンボルへと変わっていったのです。