東京都心の上空を通る飛行ルート、いわゆる「羽田新ルート」が開始されたものの、依然多くの議論が起っている状態です。そのようななか国交省が「固定化回避」の検討会を開くと発表、これにはどういった狙いがあるのでしょうか。
羽田空港で2020年3月から、東京都心を通る離着陸経路、いわゆる「新ルート」が正式運用が開始されました。同空港の国際線の大幅増便にともなって、より効率的な空港運用を目指したものですが、一方で新宿区や渋谷区、品川区などを低空で飛行することから、の6月12日(金)には新ルート直下の住民などが集団訴訟を起こすといったように、騒音問題などで運用開始も国内で依然、議論が起きている状況です。
また、騒音影響の低減を図るための理由などから、新ルートでは好天時に着陸するときの降下角度を、一般的な3度から、約3.5度に引き上げるなどの対応をしてますが、一部メディアではこの安全性についても懸念する声が見られます。
羽田空港のJALとANA機、奥に見えるのは国際線の対応する第3ターミナル(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。
そのようななか国土交通省が6月16日(火)、羽田新ルートの固定化を回避するための方策について、最近の航空管制や航空機器の技術革新を踏まえ、技術的観点から検討を行うため、有識者を集めた検討会を6月30日(火)に行うと発表しました。
どのような理由でこういった会を開くのでしょうか。また、新ルートは廃止となるのでしょうか。国土交通省航空局交通管制部に聞きました。
――今回、なぜこういった会を開くことになったのでしょうか?
最も大きな理由は、周辺住民から飛行機の騒音などについてのお声をいただいたうえ、品川区など周辺自治体の要請をうけ、「現代の最新技術を使って何ができるか検討していこう」といったものです。
具体的にどういった技術を紹介するかは今後決めることですが、設定された新ルートをすぐに変える、廃止するといったものではなく、「より良い選択肢や方法はないのか」を専門家の皆さんを交えて、長期的に検討していくことが目的です。
新ルート 航空会社の反応は?コロナの影響は?――新ルートを使って離着陸を行う航空会社側の反応などはどうでしょうか?
一部の外資系航空会社では、本運用開始前の飛行時点で、着陸進入時の降下角度の問題から運用を見合わせていると報じられていましたが、これはどちらかというと航空会社の社内規定上の問題でした。2020年6月現在は、日本、海外の航空会社に関係なく安定的に離着陸ができている状況だと認識しています。

左が「羽田新ルート」、右が従来のルート(画像:国土交通省)。
――羽田新ルートの本格運用を開始してから、固定化を開始する検討会を行うのは、実際に運用を始めてなにか「想定外」のことがあったのでしょうか?
羽田新ルートは長い時間をかけて準備していますので、そのなかでもちろん考えられる課題はほぼ潰してあるといえるため、「想定外」のことがあったわけではありません。先述のとおり今より良い方法を探すため、心配なところを理解、解決していきましょうといった事が、検討会を行う趣旨です。
――新型コロナで羽田空港を発着する便が減っていることとの関連性はあるのでしょうか?
よくそういったお問い合わせをいただくのですが、実はそう言った意味合いのものではないのです。羽田空港の場合コロナ禍が過ぎ去った時、必ず以前のような活況が戻ってくると思います。どちらかというと検討会を行う意味合いは、活況が戻ったときに備えて、といったものです。
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なお、羽田空港は2020年6月現在、新型コロナウィルスの影響をうけ、平時の運航規模より大幅に本数を減らして運用されています。とはいえ、同空港で高い需要を占める国内線は7月からJAL(日本航空)、ANA(全日空)ともに当初の計画の5割程度まで回復すると発表済みです。羽田新ルートでは、年間約3.9万回、2019年とくらべると約1.7倍の発着数にまで対応できるものとしています。