太平洋戦争後の日本製戦車として2世代目といえる74式戦車は、制式化からもうすぐ半世紀を迎えようとしています。高度経済成長期の最中に開発量産された74式戦車の特徴について、改めて振り返ります。

日本製戦車では初モノづくしだった74式戦車

 74式戦車はその名のとおり、1974(昭和49)年に制式化された戦車です。陸上自衛隊が保有する戦車のなかでは最古参であり、新型の10式戦車や16式機動戦闘車に更新される形で退役が進んでいます。

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東富士演習場の一角に並んだ第1戦車大隊第2中隊の74式戦車(2020年7月、柘植優介撮影)。

 すでに陸上自衛隊で運用が始まってから40年以上経過している74式戦車ですが、同車は国産戦車で初めてというべき部分が多々あります。

 たとえば駆動系。それまでの日本の国産戦車ではエンジンとトランスミッション(変速機)は一体化できなかったため、車体前部にトランスミッション、車体後部にエンジンと、別々に配置していました。74式戦車では、両者が初めて一体になった(パワーパック化)ことで整備性が向上するとともに、車体前面に開口部を設ける必要がなくなったため、防御力が向上しました。

 また国産戦車として初めてCBRN(化学兵器、生物兵器、核兵器)防護装置を標準で備えました。なおこの防護装置に関連して、74式戦車は優れた密閉性を有しており、シュノーケルなどを装着することで河川などの潜水渡河も可能になっています。

 さらに、量産戦車としては世界でも早い段階で、油気圧懸架式サスペンションを採用しています。これは、どのような地形でも安定した射撃姿勢がとれる装置で、前後左右への姿勢変換を可能にしています。

74式戦車がなければ90式戦車や10式戦車も生まれなかった?

 また74式戦車は、日本戦車として初めてコンピューターを用いた弾道計算機を搭載しました。

量産当初はアナログコンピューターでしたが、のちにデジタルコンピューターになっています。

もうすぐ見られなくなる!? 74式戦車を振り返る 10式戦車に生きるシステムも多数有り

射撃訓練中の74式戦車。主砲左わきに装備する大型の箱状のものは赤外線と白色光の両方を照射可能な投光器(2020年7月、柘植優介撮影)。

 射撃目標との距離を瞬時に測るレーザーファインダー(測距儀)を日本戦車で初めて搭載したのも74式戦車です。

 このほかにも、砲塔の左右側面に装備した発煙弾発射機が全車標準装備になったのも74式戦車からです。

 これらは、のちの90式戦車や10式戦車では当たり前のように装備していますが、その端緒は74式戦車であり、同車で培った技術や運用ノウハウがフィードバックされて、さらなる高性能化につながり、90式戦車や10式戦車に反映されているのです。

 その意味で、74式戦車がなければ90式戦車や10式戦車の高性能も生まれなかったといえるでしょう。

 しかし、日本の防衛力整備の指針である「防衛計画の大綱」、通称「防衛大綱」では戦車の数をトータル300両と定めており、戦車を配置するのは北海道と九州に限定し、本州からは全廃する計画です。

 これに伴い、新型の16式機動戦闘車に更新される形で、74式戦車は現在、急速に数を減らしつつあります。もしかすると数年後には現役の74式戦車はいなくなっている可能性も高いので、74式戦車の動く姿を見るのならば今のうち、といえるのかもしれません。

【動画】独占取材! 戦車砲&12.7mm重機関銃射撃 黄リン発煙弾の発射も
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