~2025年上半期 全上場企業「監査法人異動」調査 ~
国内の証券取引所に株式上場する約3,800社のうち、2025年上半期に「監査法人異動」を開示したのは157社(前年比89.1%増)だった。このペースをたどると、2025年は年間最多を更新する可能性もある。
2024年同期は監査法人の吸収合併の反動などで過去最少を記録したが、2025年同期は一転して監査期間の満了や会計監査人の「辞任」等を中心に、大幅に件数が増加した。
監査法人の異動理由では、監査期間が長期間にわたる「監査期間」が最多の63社(構成比40.1%)だった。次いで、監査報酬の見直しなどの「監査報酬」が43社(同27.3%)、「会計監査人の辞任等」が32社(同20.3%)で続く。会計監査人の辞任では、上場会社等監査人登録制度への未登録、拒否による辞任、監査法人の人員不足などの理由が多かった。
監査法人の異動規模別では、最多は「中小→中小」が64社(構成比40.7%)。次いで、「大手→中小」が33社(同21.0%)、「大手→準大手」が21社(同13.3%)、「準大手→中小」が12社(同7.6%)、「大手→大手」の11社(同7.0%)と続く。
監査法人が異動した上場企業の業種別は、最多はサービス業の39社(構成比24.8%)。以下、製造業が37社(同23.5%)、運輸・情報通信業の32社(同20.3%)の順。
市場別では、「東証スタンダード」が72社(構成比45.8%)で最も多かった。次いで、「東証グロース」が51社(同32.4%)、「東証プライム」が32社(同20.3%)と続く。
2024年11月1日、公認会計士・監査審査会は、アスカ監査法人(東京都港区)に対して行政処分などの処置をとるよう金融庁に勧告。金融庁は2025年1月17日、契約の新規の締結に関する業務の停止6か月と業務改善命令の行政処分を行った。
2023年4月から始まった上場会社等監査人登録制度の未登録や拒否、監査法人への業務改善命令などで、監査契約の見直しを迫られる上場企業も出ている。
公認会計士・監査審査会が2025年7月に発表した「令和7年版モニタリングレポート」によると、2025年3月末の監査法人数は296法人で、監査法人数は増加が続いている。
大手監査法人から準大手・中小監査事務所に会計監査人を変更する動きもあり、中小監査法人でも監査の担い手としての重要性が高まっている。
※ 本調査は、2025年上半期に「監査法人」「会計監査人」「公認会計士」の異動に関する適時開示を行った企業を集計した。
※ 大手監査法人はEY新日本有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCJapan有限責任監査法人の4法人、準大手監査法人を仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限監査法人、東陽監査法人の4法人、その他を中小監査法人とした。
※ 業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。上場の市場は、東証プライム、スタンダード、グロース、名証プレミア、メイン、ネクスト、札証、アンビシャス、福証、Q-Boardを対象にした。2018~2021年は旧市場で分類した。
異動理由別 「監査期間」が最多の63社
異動理由別では、最多は監査期間が長期にわたるなどの「監査期間」の63社(構成比40.1%)だった。次いで、「監査報酬」が43社(同27.3%)、「会計監査人の辞任等」が32社(同20.3%)と続く。
「会計監査人の辞任等」は集計開始以降最多だった2019年を抜き、最多を更新した。上場会社等監査人登録制度への未登録、拒否による辞任や、監査法人の人員不足などの理由が目立った。
異動理由は「監査報酬」と「監査期間」で106社(構成比67.5%)と約7割にのぼる。また、その他には、1月17日に公表されたアスカ監査法人の行政処分による異動、上場会社等登録制度への未登録や拒否などで企業側が自主的に監査法人を変更するケースも増えている。
「監査法人の合併」は2024年上半期はゼロだったが、2025年同期は2件発生した。
