毎年漁業者や釣り人の頭を悩ませる赤潮。山口県の徳山湾で今年初の赤潮警報が発令されました。

毎年発生してしまう赤潮ですが、人間や魚介類にどのような影響があるのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:photoAC)

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山口県で今年初の赤潮警報

山口県によると、徳山湾でプランクトンの異常増殖が見られたとして、6月1日に今年初の赤潮警報を発令。この警報は6月9日に解除されたものの、引き続きモニタリングをしていくとのことです。

「赤潮警報」とは各都道府県の水産漁業担当局が、水産物に被害を与える赤潮の発生状況を漁業協同組合や漁業者等に対して発表するもの。赤潮の発生後は「情報」「注意報」「警報」の3段階で状況報告がされますが、徳山湾では最も重大な「警報」が発令されたことになります。現時点では徳山湾で水産物への被害は報告されていないとのことです。

赤潮とは?

「赤潮」とは聞いたことがあるものの、その意味を説明できる人は少ないのではないでしょうか。

赤潮の定義

赤潮は「海水中で微小な生物(主に植物プランクトン)が異常に増殖して、そのために海水の色が変わる現象」と定義されています。(引用:東京海洋大学『これから「赤潮」の話をしよう』)

「水が赤く染まった」だけでは赤潮発生の判断基準があいまいなため、各自治体によって独自の発生判断基準が定められています。

山口県が今年初の『赤潮警報』を発令 赤潮の原因&影響&対策とは?
各地で発生する赤潮(提供:photoAC)

赤潮が発生する理由

それではなぜ微生物が異常繁殖し、赤潮が発生するのでしょうか。

要因の1つとして、窒素やリンの増加による海水の富栄養化が挙げられます。窒素、リンなどの無機物は「栄養塩」と呼ばれ、植物プランクトンが光合成を行う際に必要なものです。エサが豊富に与えられ、植物プランクトンが大量発生することで赤潮が発生するわけです。

本来であれば、植物性プランクトンは魚のエサとなるもの。しかし異常発生することで魚だけでなく海域全体の生態系に深刻なダメージを与えることになるのです。

生物への影響

では、赤潮の生物への影響を見ていきましょう。赤潮は主に魚介類へ深刻なダメージを与えますが、実は人間の健康にも被害をもたらす可能性があります。

酸欠による生物の大量死

ほとんどの魚はフィルター状になっているエラから酸素を取り入れて呼吸を行っています。この魚のエラに異常発生したプランクトンが詰まることで酸欠になってしまうのです。

さらに赤潮が怖いのは連鎖的に生物の大量死を招いてしまう点。死んだ魚を分解するためにさらに周囲の酸素濃度がさがり、別の魚も死に至らしめます。その魚をエサにしている他の生物などにも影響が出てしまうので、海域そのものに深刻な影響を与える事になります。

毒の蓄積

藻類の中には生物に直接的に悪影響を与える「毒」を含んだ種類も存在しています。それらが異常発生し海洋生物に蓄積され、毒を含んだ状態で人間が食べてしまう可能性も。

養殖産のカキやホタテなどに蓄積される例が報告されていますが、自治体の管理により異常時には出荷が止められる場合もあるようです。

赤潮対策の例

日本各地で発生する赤潮。発生を抑えるための対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

法的対策

まず一つ目が法的対策です。

日本で赤潮が急激に増加したのは1960年代の高度経済成長期。赤潮発生の原因となる栄養塩が大量排出されたのが原因です。

そこで1970年に水質汚濁防止法が制定され、有害物質の排水基準が規制されました。

制定後も基準は強化され、赤潮の発生件数が3分の1にまで減少しているそうです。(引用:『農林水産省』)

藻場・アマモ場の保護

また、藻場やアマモ場も活用されています。

藻やアマモがあるエリアには「殺藻細菌」と呼ばれる微生物が多く分布していることがわかっています。その名の通り、殺藻細菌には赤潮の原因となるプランクトンを減らす効果があるとのこと。

したがって、藻場やアマモ場を守り、増やしていくことが赤潮対策に有効とされています。薬物等でプランクトンを死滅させる方法と比べて環境に優しく、より継続的な効果も期待できるそうです。(引用:海洋政策研究所『沿岸域における赤潮の発生と予防対策』)

山口県が今年初の『赤潮警報』を発令 赤潮の原因&影響&対策とは?
アマモ場(提供:photoAC)

周囲を海に囲まれた日本では赤潮問題は避けて通ることができません。しかし、改善に向けた取り組みが確実に進められているようです。

<田口/TSURINEWS編集部>

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