今回は、ホビーカヤックに乗る筆者が、人気魚種のキスを気軽に狙う、名付けて「カヤックキスゲーム」をご紹介します。青物やシーバスなどの大型魚を追いかけているカヤックアングラーのなかには、わざわざカヤックを準備して海に出るなら、もっと大きな魚を狙いたいなと思う方も多いかもしれません。

しかし、これが一度やってみると、思わず熱中してしまうおもしろさ。小気味良いキスのアタリに一喜一憂しているうちに、ドップリとハマること間違いなしです。魅力いっぱいのキス釣りを、カヤックに乗って楽しんでみましょう!

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・福永正博)

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「シロギス(キス)」の特徴

まずは、キスの特徴から解説していきます。キスと名の付く魚には何種類かありますが、カヤックキスゲームでいうキスの正式名称は「シロギス」、砂浜の女王とも呼ばれる人気の魚です。

ファミリーでのチョイ投げ釣りから遊漁船、さらには投げ釣りのトーナメントがおこなわれるほど、様々な釣り人に愛されている釣種ですね。

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
シロギスは釣りの人気ターゲット(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

キスが釣れる時期は?

キス釣りといえば、夏の釣りというイメージが強いですが、厳密にいえば一年中釣れる魚。とはいえ、一般的に釣りやすいとされるのは4月から11月頃までで、そのなかでもとくに簡単に釣りやすいベストシーズンは、5月~7月頃といえるでしょう。

8月頃の水温上昇による少々釣りづらいタイミングを経て、秋の落ちギスシーズンで良型が期待できる時期が到来。そして、真冬になると専門的に狙って釣るのが難しい時期になります。

キスの生態

基本的にキスが生息するのは砂地です。大小の群れで行動し、海底にいる多毛類(ゴカイ)などのエサを捕食して暮らしています。良い群れに当たれば、同じポイントで連発することも珍しくありません。

よく釣れるサイズは10~20cmほどですが、成長すると30cmを超えます。30cm以上のキスは「尺ギス」と呼ばれ、釣り人の目標となるサイズです。

カヤックキスゲームのメリット

カヤックキスゲームとは、文字通りカヤックに乗ってキスを狙う釣りですが、カヤックフィッシングならではのメリットがあります。

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
足漕ぎカヤックは釣りに最適(提供:HOBIE JAPAN)

遠投しなくてよい

一般的にキス釣りといえば、砂浜からの投げ釣りのイメージが強いでしょう。そして、おかっぱりでキスを狙った経験がある方なら、「もっと遠くに投げられれば、もっと釣れるのでは」と、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

しかし、カヤックであれば、少し沖に出るだけで遠投する必要はなくなります。もちろん、真下に仕掛けを落とすのではなくキャストはしますが、手持ちのタックルで無理せず投げられる範囲でじゅうぶん釣りが成立します。

ポイント移動が自由にできる

昨今の人気釣り場は、広大なサーフといえども釣り人でにぎわい、釣り座確保にも一苦労するほど。最初に入ったポイントで釣れず、移動したくなったのに場所が空いておらず断念した、という経験がある方も多いのではないでしょうか?

その点、カヤックは自由に移動して、好きなポイントを探ることができ、釣果を伸ばしやすいといえます。

カヤックキスゲームに適したカヤック

カヤックキスゲームは、基本的にそれほど沖に漕ぎ出す釣りではありません。おかっぱり+α程度の距離で成立するため、スピードや機動力を重視したモデルよりも、幅が広めで安定感のあるカヤックの方が相性が良いといえます。

また、自重が軽いカヤックであれば、砂浜を引っぱっての出艇が苦にならず、釣りを始める前から疲れてしまうことを避けられます。

さらに、足漕ぎカヤックであれば両手がフリーになるため、釣りを楽しむうえで様々なメリットがありますよ。おすすめのカヤックについては、後ほど詳しくご紹介します。

カヤックキスゲームのポイント選びのコツとは?

カヤックキスゲームを楽しめるのはどのようなポイントなのか、安全面と釣果面から見てみましょう。

安全に出艇・着岸できる場所を選ぶ

カヤックキスゲームのフィールドは、なるべく波が「おだやかな」サーフを選びましょう。

その理由は、出艇・着岸時の安全確保のため。サーフエリアは、もともと波が高くなりがちですが、とくに出艇・着岸地点となる波打ち際は、地形変化で急に波が立ち上がることが多いところです。カヤックがバランスをくずしたり、ひっくり返ったりしないために、波打ち際のおだやかさを重視します。

わかりやすい見分け方の一つとして、サーフィンをしている人がいるような海岸は波が高くなりやすいので避けた方が無難ですね。

波・風の影響を受けにくい湾内の砂浜や、沖に消波ブロックを設置してある砂浜などが出艇しやすくおすすめです。

また、天気予報サイトなどの波高予想は、沖合での波高であることがほとんどで、波打ち際の波はさらに高くなりやすい点も頭に入れておきましょう。せっかく釣り場に来たものの、波が高くて出艇できないとなると、精神的にかなりのダメージをくらってしまいます。

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
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穏やかなサーフから出艇(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

釣果情報で選ぶ

キスはたくさんの釣り人が狙う人気魚種です。必然的にSNSなどの釣果情報も集まりやすい傾向に。カヤックキスゲームは、おかっぱりとさほど変わらないエリアでの釣りなので、大いに参考になります。

こまめに釣果情報をチェックしておくことで、初場所であっても勝算を上げることができます。

カヤックキスゲームのタックルセッティング

続いて、おすすめのタックルセッティングをご紹介します。

ライトタックルがおすすめ

カヤックキスゲームは、サーフからの投げ釣りのように重たいオモリを使って遠投しなくてよいため、ライトタックルで対応可能。むしろ、アタリがわかりやすく魚の引きも楽しめるので、ライトタックルの使用をおすすめします。

アジ・メバル用のライトゲームロッドであれば、小さなアタリや海底の変化がわかる感度があり、キスの引きも味わえます。もちろん、わざわざ新たにロッドを買う必要はありません。UL~Lクラスのルアーロッドや、船竿などを持っていればそれで大丈夫です。

ロッドの長さ

普段のカヤックフィッシングでは、取りまわしを重視して6~6.6フィートのショートロッドを多用しますが、キス釣りの場合はルアー釣りよりも少々仕掛けが長いので、7フィート前後あった方が使いやすいでしょう。

リールとライン

リールとラインも、ロッドに準じてライトな仕様を組みましょう。2000番のリールにPEライン0.6号くらいがバランスが良くおすすめです。

天秤仕掛けと胴付き仕掛け

キス釣りの仕掛けには、天秤仕掛けと胴付き仕掛けがあります。一般的には、天秤仕掛けがメジャーですが、船釣りでは胴付き仕掛けも人気です。

天秤仕掛けは、食い込みが良く向こうアワセでかかりやすいのが特徴。それに対して胴付き仕掛けは、アタリがダイレクトにわかりやすく、積極的にかけていく釣り向きで、根掛かりが少ないメリットもあります。

どちらにしても、水深に応じて底が取れる重さをそろえておく必要があり、3~10号ほどを準備しておきましょう。

筆者が愛用しているのは、天秤仕掛けのなかでも「海底で立つ」タイプ。海底より少し上を、エサやルアーがふわふわと漂ってくれるため、キスの食いが良いと感じています。

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
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立つタイプの天秤(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

「仕掛け」とはいっても、ラインを結ぶのは1~2か所のみで、ルアー並みの手軽さ。もちろん、キャストしてもライン絡みが少ないという天秤ならではのメリットも備えています。

カヤックでのキスの釣り方とは?

カヤックからキスを釣るとはいえ、なにか特別なテクニックが必要というわけではありません。おかっぱりでのチョイ投げ釣りと同じく、軽くキャストした後にズル引きとストップをくり返す動作でOK。引きずられたオモリが起こす砂煙がキスの興味を誘い、ストップした時に食わせるイメージですね。

この方法で、その場にキスがいれば反応してくるはずです。

では、キスがいない場合は?そこでカヤックに乗っているメリットが発揮されます。

カヤックを流しながら釣る

キスの反応がないのであれば、同じポイントで粘って群れが回遊してくるのを待つよりも、積極的に移動してキスを探してみましょう。

キスの居場所を探っていくときは、カヤックが流されるままにして、ボトムをズルズルと引いてくるのが有効です。その際は、風上側(向かい風)にキャストし、自然とラインが引っ張られるようにするのがコツです。

風が弱く、カヤックがあまり流されない場合は四方八方にキャストして広く探っていきます。

アンカーの使用も効果的

上述のように、アタリが無い場合はカヤックを流しながらキスを探していきますが、いざ運良く有望なエリアが見つかれば、できるだけその場にとどまりたいものです。その際に活躍するのがアンカーです。

アンカーを使用するメリット

アンカーを使用すると、カヤックが流されることがなくなり、見つけたキスの群れや、良いポイントの近くに定位できます。また、エサを付けている時や、釣れた魚を取り込んで処理する間に流されることがなくなるため、落ち着いて釣りを楽しむことができます。

アンカーを使用するデメリット

アンカーの使用には多くのメリットがある一方、やはりデメリットもあります。
もっとも大きなデメリットは、緊急時の避難がしづらくなること。漁船などが近づいてきて避難しようとしても、ロープを巻き取ってアンカーを回収する時間がかかるため、とっさにその場から移動して避難することは難しくなります。

また、頻繁に移動をする際は、アンカーの回収が面倒に感じたり、魚が釣れた時にロープに引っかかったりする点もデメリットです。

アンカーを使用する際は、安全性と回収の手間を考慮し、水深約10m以下のポイントに限るのに加え、他の船舶の往来状況にもじゅうぶん気をつけて運用してください。

筆者の場合は、なるべく漁船などが入ってこないエリアを選び、キスの反応が得られるまではカヤックを流し、良いポイントに入ったらアンカーを投入。

キスのアタリが無くなるまで、しばらくはその場から動かずのんびりと釣りを楽しむパターンが多いです。

おすすめのカヤックを紹介

今回は、筆者が愛用しているホビーカヤックの中から、カヤックキスゲームに向いたモデルを2艇ご紹介します。

ホビー ミラージュ・パスポート10.5

ホビーカヤックのラインナップ中、軽量でコンパクトなエントリーモデルであるミラージュ・パスポート10.5。車載がしやすく、砂浜を引いて歩く際にも疲れにくいため、気軽に楽しむカヤックキスゲームに向いているモデルです。

シンプルな装備にすることで価格をおさえたカヤックですが、船体の幅は上位モデルと変わらない86cmというスペックで、安定感に不安をおぼえることはないでしょう。

筆者自身が何年も愛用していたモデルで、自信をもっておすすめできるカヤックです。

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
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Mirage Passport 10.5(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

ホビー ミラージュ・アイトレック9ウルトラライト

ミラージュ・アイトレック9ウルトラライトは、インフレータブル(空気を入れて膨らませる)タイプ。バックパックに収まるほどコンパクトになるため、車のトランクに収納して運搬でき、ルーフキャリアすら必要ありません。

特筆すべきはその軽さで、船体重量は9kgほど。ミラージュドライブやシートなどを装備しても17kg弱なので、駐車場から出艇場所までに階段などがあっても、担いで乗り越えることが可能です。リジットタイプの一般的なカヤックではあきらめていた、アクセス困難な場所からもエントリーができるので夢が広がりますね。

また、幅が102cmもあり、安定性はすべてのカヤックのなかでもトップクラス。横座りして、足を海に着けて釣りをしても大丈夫です。

夏の晴れた空の下、サーフの沖でぷかぷかと浮かんでキスを狙う釣りが、これほど似合うモデルはないでしょう。

ホビーならではのミラージュドライブの機動力も備えながら、SUPのように立って乗ることもでき、非常に様々な楽しみ方ができるモデルといえます。

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
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Mirage iTrek 9 Ultralight(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

カヤックキスゲームは楽しい

キスは、群れと出会えれば比較的簡単に釣れる魚で、絶好調の日に当たれば100尾を超える釣果を叩きだす釣り人も。

そこまではいかずとも、数釣りを楽しむも良し、尺ギスを狙うも良しで、キス釣りには様々な楽しみ方があります。

そして、キスの天ぷらや刺身は絶品で、みんなが喜ぶおみやげになることでしょう。日頃、釣りにばかり行って肩身がせまい釣り人も、たくさんのキスを持って帰れば文句は言われないはず……多分。

今回は、「カヤックキスゲーム」と題してカヤックからのキス釣りをご紹介しました。みなさんも、ぜひキスをカヤックフィッシングのターゲットのひとつに加えてみてください。きっと楽しい一日が待っていますよ!

癒し系カヤックフィッシング【カヤックでのキス釣り】 エサとルアー使い分け術とは?
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カヤックでキス釣りを楽しもう(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

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<福永正博/TSURINEWSライター>

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