青い海を悠々と泳ぐウミガメ。その姿は優雅で神秘的ですが、実は私たちが知らない驚きの秘密を持っています。

ウミガメの赤ちゃんは、どうやって男の子と女の子に分かれるのか。一般的な動物とは違う、ウミガメならではの不思議な性別の決まり方と、変化する地球環境の中で直面している課題について探ってみましょう。

『サカナト』で読む

(アイキャッチ画像提供:海人)

「温度が高いとメスしか生まれない?」 地球温暖化で生存が脅か...の画像はこちら >>

神秘に包まれたウミガメの世界

みなさんは、ウミガメを見たことがありますか?大きな甲羅を背負い、ゆっくりと海を泳ぐウミガメ。

沖縄では「カメさん」と呼ばれ、豊漁や安全を願う漁師たちの守り神、ハワイでは「ホヌ」として神聖な存在とされ、多くの伝説の主人公になっています。

ウミガメは地球上で最も長生きする動物のひとつで、なんと100年近く生きている個体がいる可能性もあるそうです。

ウミガメの性別の謎

ウミガメはオスとメスを見分けるのがとても難しいです。大人になったオスのウミガメはメスに比べて尾が長くて太く、前足の爪が湾曲しています。これはメスに上手に乗るための工夫なのです。

でも、子どものウミガメは外見からはまったく区別できません。科学者たちも、特殊な検査をしないと性別がわからないほどなのです。

「温度が高いとメスしか生まれない?」 地球温暖化で生存が脅かされる【ウミガメの不思議な生態】
「温度が高いとメスしか生まれない?」 地球温暖化で生存が脅かされる【ウミガメの不思議な生態】
ウミガメ(提供:PhotoAC)

性別を決めるのは卵の温度

ウミガメの最も不思議なところは、その性別の決まり方。なんと、私たち人間やほとんどの哺乳類とは違って、遺伝子ではなく「温度」で性別が決まるのです。

ウミガメのお母さんは砂浜に穴を掘って卵を産みますが、その卵が温かい環境で育つとメスに、涼しい環境で育つとオスになりやすいという傾向がみられます。

その境は29℃。これを「温度依存性決定」と呼びます。

まるで魔法のようですね。

「温度が高いとメスしか生まれない?」 地球温暖化で生存が脅かされる【ウミガメの不思議な生態】
「温度が高いとメスしか生まれない?」 地球温暖化で生存が脅かされる【ウミガメの不思議な生態】
子ガメ(提供:PhotoAC)

同じ巣の中でも、上の方の卵は太陽の熱で温かくなりメスに、下の方の卵は涼しくてオスになるということもあるのです。

ウミガメと温暖化

しかし今、このバランスが危機にさらされています。地球温暖化によって砂浜の温度が上昇し、メスばかりが生まれやすい状況が起きているのです。

オーストラリアのグレートバリアリーフ近くの砂浜では、生まれるウミガメの99%以上がメスになっているという研究結果もあるそうです。このままではオスがほとんどいなくなり、ウミガメが絶滅してしまう可能性があります。

私たちにできることは何でしょう?

省エネやゴミの削減で温暖化を防いだり、ウミガメの保護活動を応援したりすることができます。砂浜を訪れる時は、卵を産むウミガメを驚かせないように。小さな行動が、海の守り神を救うことにつながるかもしれません。

不思議な性別決定のメカニズムを持つウミガメ。これからも海で優雅に泳ぎ続けられるように、一緒に守っていきましょう!

<海人/サカナトライター>

編集部おすすめ