街なかのドブに大群をなす奇妙な巨大シジミ。ひと工夫で美味しく食べられるかもしれません。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
街中のドブに巨大シジミが!
味噌汁の友としてあまりにも有名な有用水産物・シジミ。近年は漁獲量も減少傾向で高級食材になりつつありますが、実は身近なところにも「シジミ」と呼ばれるものが生息しているのをご存知でしょうか。
その「シジミ」は普通のシジミよりも大きくなり、殻の幅は4cmを超えることもよくあります。それ以外の見た目は全く一緒で、一般人はおろか専門家でも外見だけで区別をするのは不可能と言われています。

しかし、今最もふつうに流通しているシジミは河口や汽水湖に生息しているのに対し、この奇妙なシジミは街なかの排水溝のような、いわゆるドブにもごく普通に生息しています。側溝の清掃で泥をさらっていると突然巨大なシジミがザクザク出てきてびっくりした、という話もよく聞かれます。
美味しそうだけど味がしない!
この巨大シジミは実は「タイワンシジミ」という外来種、もしくはその遺伝子が入った雑種個体です。原産国は台湾や中国南部で、輸入のシジミに混ざって日本に入ってきたと言われています。
タイワンシジミやその雑種は見た目こそ非常に美味しそうですが、食べてみると驚くことに味がしません。シジミらしい貝の風味や食感こそあるのですが、シジミの最大の魅力であると言える出汁が全然出ないのです。

加えてこのタイワンシジミは恐ろしいことに「在来のシジミと交配し、その子孫も同じ形質を持つ」という特徴を持っています。つまりこのシジミが入り込むと、その水域のシジミはすべて無味になってしまう可能性があるのです。
この恐ろしい特徴から、タイワンシジミは現在「生態系被害防止外来種」として取り扱いの注意が呼びかけられています。
美味しく食べるには「台湾の調理法」
しかし、味がなかったとしてもシジミはシジミ、美味しく食べられないのか?と思う人もいるかもしれません。
タイワンシジミはドブに生息しているため、どうしても泥臭さが強いのは否めません。一方で非常に生命力が強く、カルキ抜きをしていない水道水でも平気で生きています。そのため泥抜きをしっかりと行うことができました。
またこのシジミは一般的なシジミ(ヤマトシジミ)よりも加熱したときに身がプリッとしています。これを活かすべくまずは酒蒸しにし、身だけを集めて醤油、みりん、味の素、にんにく、生姜で作ったタレに漬け込みます。台湾名物「シジミの醤油漬け」です。

味がないシジミですが、タレの旨味が染み込めば流石に味もつきます。そうなると生来の身の大きさが活きてきて、食べごたえのある美味しいおつまみになりました。
皆さんも、もし身近な側溝でこのシジミを見かけたら、よかったら試してみていただきたいのですが、前記の通り扱いに注意が必要な外来種なので、絶対にもともといたのとは別の場所に移殖、放流などなさらないようご注意ください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>